「家事も育児も家計も全部ワリカン!」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第48回のテーマは「息子に過大な夢を見る夫婦」です。

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うちの息子はちょっと発達が早いところがあります。かなり早いうちから字が読めるようになりました。そして、字が読めると世界を理解するのが早くなります。

私は自分がそういう子どもじゃなかったので、「むむむ!? なんでこんなに発達が早いの!?」とビックリしてしまったのですが、実はお父さん(我がパートナー)も幼少期「字が読める子ども」だったらしく「全然特別なことじゃないよ、誤差の範疇だよ~」と言っています。お父さんも3歳から1人で本を読んでいたそうです。

「字が読める」と幼児のわりにいろんなことができるようになるのですが、そのひとつが「カラオケ」でした。歌は曲を知ってても歌詞を覚えてないと歌えないですが、字が読めればカラオケで歌えるんですね……。息子とカラオケに行って気が付きました。3歳の時にたまたま連れて行ったカラオケ以来、どっぷりはまってしまい、カラオケ大好きボーイです。

カラオケは昼間の時間帯だとかなりお安いところもあって、幼児を連れて行くにはわりと楽です。走ってどっか行っちゃったり、騒いで誰かに迷惑をかけたりすることもありません。そんなこともあって、我が家は頻繁にカラオケに行っています。

それだけ行ってれば幼児もカラオケが上手になります。1時間、息子が1人で歌うこともあります。息子はなぜか星野源さんが大好きなので、8割くらい星野源さんの歌を歌います。普通こういうのって、親が好きで子どもが影響を受けるような気がしますが、我が家の場合、YouTubeで見た星野源さんに息子がドはまりして「そんなに好きなら……」と音源を買ってあげて、親もさんざん聞くことになり、「星野源さんは素晴らしいね」と影響されました。

星野源さんを聞くことも歌を歌うことも、本人が「やりたい」と、どんどんはまっていったことなので……このマンガにあるような夢をお父さんが抱いたわけです。まあ、確かに「三つ子の魂百まで」といいますから、3歳から星野源さんをカラオケで歌いまくっていて、しかも、もうかれこれ1年半も続いています。

「好きこそものの上手なれ」というので、これは将来ミュージシャンに……!? と、親が「取らぬ狸の皮算用」をしてしまうのもご容赦いただきたいものなのですが……。いや、まあ、電車大好きな幼児達も大体みんな小学校に上がるくらいには卒鉄(鉄道趣味からの卒業)してしまうので、親の勝手なドリームなのもわかってはいるんですが……!

で、一方の私はというと、息子が将来、星野源さんになってくれたら、それはもうこの上なく嬉しいですけども、そんなことよりも進学のほうが心配です。発達が早いので、ついつい「このままいくと、それなりによい成績で、よい学校に進学できるのでは……」と、またあらぬ期待を抱いてしまうのです。でもですね……それって大体……お金がかかるんです……。

都心に暮らしているので、周りの私立への進学率は高いです。しかし我が家の経済状況では私立に行くのは難しく……。できる限り公立に行ってもらうのが現実的です。

公立へ進学しても、それなりの学校に進むことは可能なので、あまり心配してないのですが、最近、大学のアメリカ留学についての記事を読んで、ものすごくお金がかかることを知り……「もしも息子がアメリカ留学したかったらどうしよう……」と落ち込みました。記事によると学費、渡航費、生活費、さまざまな諸経費を含めると、数千万円……。今から夫婦で貯金したり、手元にある価値のあるものを売っぱらったりしても、どうにかなるような金額じゃなかったのです。

子どもの夢を叶えられる親でいたいとは思いつつ、無い袖は振れないし、無理なモノは無理……。ニュースでは「老後は年金だけじゃ足りないですよ」と政治家が発言したりしていて……え~~~。子どもの夢を叶えつつ、老後の資金も貯めないといけないの? 無理~無理無理~。みたいな気持ちになりました。

そういう時はお父さんが「息子が星野源にならないかな~~」って言ってるのを見ると「ちょっと無責任じゃない!?」とか思ってしまうのですが、よくよく考えると、そっちのほうが楽しいかもしれないと思い直しました。

私は自責的な性格なので、ついつい「親としてどこまでしてあげられるのか」「たいしてサポートできないかも」と悲観してネガティブになってしまいます。でも、勝手に背負い込まずに、「息子は息子の才能と努力で生きていくさ~」というくらいの気持ちも大事だよなあと思います。

ちなみに3歳から本を読んでたお父さんは、自分が大臣にも教授にも社長にもなってないので、「小さいころにちょっと人より発達が早くても、そんなものよ」とも言います。息子が自分の好きなことに自分の力で取り組める人になってくれたらいいな~というのが現実的な希望です。

ニュースを見て未来のことを考えると、少し暗い気持ちになりがちな昨今です。本当は学歴とかよりも、どんな世の中でもサバイブできるようなたくましさのほうが大事かもしれない……。そして、そういうのを教えるのは明日の収入の確約などない、フリーランス夫婦のほうが向いてるかもしれない……と、なるべくポジティブに子育てに取り組むことにしています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。