「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第43回のテーマは「老後のこととか考えてる?!」です。

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前回と同じように「事実婚」について、「老後」や「介護」のことを聞かれることがあります。病気や入院に関してはある程度経験があるし、調べているのですが、これに関して言うと「まだ経験してないのでわかりません」というのが正直なところです。

しかし、みなさん「老後」ってどうですか? 安泰ですか?

そもそも、うちはフリーランス夫婦です。私なんか一度も会社に勤めたことがなく、お給料をもらったことすらありません。ずーっとフリーランスで「ギャラ」をもらっています。

ちなみに、親が商売をしており、いろいろと教えてくれたので確定申告はフリーランス1年目の20歳から行っていて、税金も国民健康保険も、国民年金も全てきっちり納めている、きっちり目の個人事業主です。とはいえ、厚生年金はないし、何か老後の対策をしているかといえば、特に何もしていない……。できれば死ぬまで働きたいという希望があるくらいです。

そもそも、我が家はまだ子どもが4歳で、進学はこれからです。老後の心配をするより先に子どもの進学のほうが心配です。一応、自分達の方向性としては、おそらく子どもに大学進学させるくらいのことは可能だという予想をたてています。

息子が生まれたのはパートナーが47歳のとき。成人するときには67歳です。普通のお勤めの人なら定年退職してる年齢。我が家では「老後の心配」してる余裕はまだありません。

まあ、それでも見切り発車するのは、我々が定年退職のないフリーランスだから……というのはあると思います。退職はないので、なんとか死ぬまで仕事をしようと思えば、それができる可能性はあります。もちろん、退職もなにも、仕事そのものがなくなる可能性はありますが、それは企業に勤めていても「いつどうなるかわからない」という点では同じかなと思っています。

私は元々「先のことが不安」なタイプでした。だから、早く結婚して未来を確定してしまいたかった。そしてとても焦って「早く結婚しなきゃ」と30歳で結婚をしました。でも、たった3年半で離婚。実は「不安に備えて準備」しているようで、法律のことも、社会のことも、自分が本当はどんな生活をしたかったのかさえ、わかってなかったのです。

結婚後も私はまだ来てない未来について数々の不安を持っていました。それに対して元夫が何も備えてないし、危機感を持っていないことで、さらに不安になり、自分だけじゃなくて元夫の人生の全てにも対処して、責任を持とうと考えていました。でも「まだ来てない未来」に備えようと思っても、未来は無限の選択肢と可能性があるし、こちらが予想してないことも起こります。なので、全ての不安に対処することなんて不可能です。

それなのに、どうしてそんなに「抱え込んでしまったのか」というと、それは「私が結婚したいって言ったから」です。私が言い出して始まった結婚だから、結婚生活の全ての責任を私が持たなければならないと思ってしまいました。そんな力もないくせに。そして、あっという間に限界がきて「それは私には無理だった」と悟り、結局、離婚になりました。

現パートナーは、全然未来が怖くない人です。「どうして平気なの?」と聞いたら「問題が起こったら、対処するだけだから」と言われました。確かに、無限に起こりうる「そうなったら困る未来」に対処する必要はないのです。実際に起こった問題に1つ1つ対処すればいいのだということに、パートナーと話していて気が付きました。

彼は「今までもなんとかなってきたし、これからもそうする」と言います。私は未来に自分が独居老人になって孤独死することをよく考えてしまいます。そして自分自身は将来子どもの負担になるくらいなら早く死んじゃいたいなあ〜と思ってしまうタイプです。

「そういう心配はないの?」と聞くと「そうはならないでしょ」とパートナーは言います。「お金もなくて、病気になったら、ケースワーカーに電話するでしょ」と。彼はそのときに探せば方法はある、という考えなのです。「そしてあなたもそうでしょ」と。ごもっともですとしか言いようがない……と思いました。

確かに、私も問題が起これば全力で対処するタイプ……。今までだって、離婚も、事実婚に関しても、出産についても、自分で調べて自分や家族が困らないように対処してきました。だから、きっと未来もそうするのです。というか、それができなかったら、ひたすら困るのは自分なのでやるしかないわけです。 パートナーは「なんとかなるよ」と言います。でもそれは「オレがなんとかするよ」ではありません。私はこれによって「なんとかするのは私なの?!」という目にも遭ってるのですが、それでもこの考えってすごく正しいなあと思ってます。

「自分がなんとかしなければ」という考えは、時に視野狭窄になるし、うまく人に助けを求められなかったりして追い詰められてしまいます。私はそうでした。でも、自分にできないことは人に助けを求めればいいのです。だから「なんとかなるよ」と思ってることは、生きる上でとても大事だなと思うようになりました。

なので、私も「無限の未来の不安」も「勝手に抱え込む責任」もなるべく背負わないようにして「問題が起きたら全力で対処する」という現パートナーの考え方にあやかることにしました。いつだって、道はあると考えるようにして「不安」よりも「希望」を持つようにしています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。