「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第27回のテーマは「スマホのメッセージではケンカしない」です。

  • 話し合いは面と向かって

この、「メッセンジャーで話し合いはしない」というルールはかなり最初のころからありました。同居、結婚前からあったかも。

というのも、私とパートナーだと「言葉の受け取り方」が全然違うんですよね。面と向かって話してても受け取るニュアンスが違ったりするのに、文字だけだと口調とか表情とかの情報がないから、相手が本当に伝えたいニュアンスではなく、自分の作ったイメージで受け取ってしまうことがさらにあります。

ただのスケジュール確認や、用件確認などのやりとりでさえも誤解が生じるのに、これが問題の話し合いだったりケンカになったりするともう大変。絶対、「メッセンジャーで話し合ってよかったね」みたいなことにはなりません。

面と向かっていても、私は大体「説明が足りてない」傾向があり、パートナーは「ネガティブに受け取る」傾向があります。これが、文字だけだとさらに加速します。なので私は、「あれ? この前説明したじゃん(会話で)」という前提から話を始めて「いや、知らない、何の話?」と言われて揉めたりしますし、パートナーはマンガで描いたように、こちらがポジティブな意味で書いたメッセージをネガティブに受け取ったりするのです。

大体いつもこうなって揉めるというコースがわかってくると、お互い「こういうときはこう書かないとダメ」とか「この話は面と向かって言わないとダメ」とか、コツがつかめてきます。でもスマホのメッセンジャーって、何かしてるついでとか、集中してやりとりできる状態ばかりじゃないですよね。それでいつもは気をつけてるのに、電車から降りる瞬間だったりとか、保育園のお迎えに行く寸前だったりとかそういうときに、「言葉足らず」「配慮足らず」なメッセージを送ってしまい、揉めごとに。

言葉足らずなのが問題だったのね! と、「じゃあ事細かに、誤解できないようなメッセージを送ってやるわ!」と長文にして送ると、もうそれだけで相手にプレッシャーを与えてしまうんですよね。どんなに丁寧に書いても、それが「怒ってる」とか「丁寧な口調が逆に怖い」としか受け取られなかったり……。

会話だったら勝手に耳に入ってくるけど、メッセージは読まないとダメなので、イヤイヤ読むとさらにバイアスがかかったりします。一生懸命丁寧に伝えたハズなのに、全然理解されてなくて、直接話したらすぐ解決したなんてこともよくありました。

夫婦とはいえ、いつも一緒にいるわけじゃありません。だから「LINE」などのメッセンジャーアプリはとても便利です。夫婦の話し合いはいつもメッセンジャーで、というタイプの夫婦もいるかもしれませんが、うちは経験上全然向いてないということがわかりました。なので、面と向かって話し合う時間は作らないといけないんですよね。

でも子どもがいたりすると、夫婦の都合以外のタスクが多く、それに流されているうちに「ああ……もういいか」とか「また今度にしよう」と話し合いのモチベーションが下がってしまい、わざわざ時間を作るのがめんどくさくなっていきます。そして話し合いはうやむやになり、漠然とした相手への不満だけが残る、という「夫婦仲が冷えるサイクル」に入ってしまいます。

うちはお互いがフリーランスで、お勤めの人よりは時間に対する裁量権があるので「これは仕事よりも重大案件だ!」と自分で決めれば、話し合いの時間を作ることができます。

我が家は仕事部屋が家の中に個別にあり、子どもが保育園に行ってる時間が基本的に勤務時間です。そのため、「話し合いしたい!」と相手の部屋に乗り込むことも可能で、よそのご家庭よりはかなり話し合いがしやすい環境ではあります(もちろん、どちらかが忙しくて隣の部屋にいても話し合いの時間が取れないときはあるのですが)。

しかし、それ以上に過去の離婚の経験から「夫婦仲が冷えるサイクルに入りたくない!」という強いモチベーションがあるのも大きいと思います。「言っても無駄だから」とか「どうせいつもよくない結果になるし」とか、相手に対して諦めの気持ちを持つと、家庭はどんどん楽しくない場所になってしまいます。

私たちは、何があってもお互いが納得できるように話し合いをするのが大事だと、夫婦が同じくらい思えているので、「話し合い」の優先順位が高いのだと思います。というか、話し合いの逃避は断絶への片道切符です。メッセンジャーでやりとりしてすれ違ったとして、それを実際に膝を突き合わせずにそのままにしておいたら、どんどん相手が信頼できなくなります。「話し合いは面と向かって」は我が家のとても大事なルールなのです。

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バツイチ同士の事実婚夫婦にめでたく子ども誕生! ここから「家事と育児をどうフェアにシェアしていくか」を描いたコミックエッセイです。家事分担の具体的な方法から、揉め事あるある、男の高下駄問題、育児はどうしても母親に負担がいってしまうのか、夫のキレにどう対処する? などなど、夫婦関係をぶつかりつつもアップデートしてきた様子を赤裸々に描きます。

著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。