「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第196回のテーマは「公衆電話の練習」です。

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息子も小学2年生になりました。そろそろ親がいない前提の行動を練習しないとなと思っています。

まず、キッズ携帯の導入です。習い事やお友達の家など、小学生ともなれば一人で行動し始める子もいます。我が家もGPS付きのキッズ携帯を買うことにしました。

いろいろ悩んだのですが、腕時計型のキッズ携帯にしました。電話として使える設定にはしていませんが、SIMカードが入っていて、親のスマホの専用アプリと通信することができます。登録者以外とは通話できない端末ですが、今のうちはこれくらいでいいかなと思っています。腕時計としても使えて、本人も気に入っています。これをしていればお出かけのときに親とはぐれても安心なので、今のところはお守りとしての役割が大きいです。今は習い事や近所のお友達のうちに行くときなどにも使っています。

さて、キッズ携帯はそれでいいとして、その腕時計を着けていくのを忘れたりなくしたりした場合、親に連絡できる手段を覚えておいたほうがいいよね……と夫婦で話し合いました。なので、災害やトラブルにも備えて公衆電話の使い方を練習することにしました。

公衆電話……。携帯電話を使うようになってすでに四半世紀が過ぎ、自分自身も全く使っていません。街中からもどんどん減っていく公衆電話。しかし、災害時にとても強い連絡手段です。電話線から電力を取っているので、停電していても電話線さえ繋がっていれば電話が繋がります(停電時、テレホンカードは使用不可)。なので災害対策として公衆電話がなくなることはないんですよね。市街地にはおおむね500メートル四方に1台、それ以外の場所にはおおむね1キロ四方にはあるということです。つまり、どこかで誰かに連絡するときに公衆電話を使うというのは現実的な選択なのです。

そんなわけで、減っていると言えど街中の公衆電話は探すと見つかります。家族で出かけたときに、息子に公衆電話を使わせてみました。受話器を取ってコイン、またはカードを入れてボタンを押します。簡単なようでいて、これがなかなかできない……! なぜ? と思ったら、息子は「物理的なスイッチ」のボタンを押し慣れていないということがわかりました。

スマホやタブレットの「触ればいい」というタッチパネルに慣れていて、ボタンをしっかり奥まで押すということができてなかったんです。

親としては「そんな落とし穴が?! 」と思いました。まだ背が低いからボタンが押しにくいというのもあるとは思うのですが、押しても押してもなかなか電話をかけることができませんでした。

自分はどうやって公衆電話の使い方を覚えたんだっけ……と思い出したのですが、そもそも家の電話がアナログだったんですよね。我が家は古式ゆかしいダイヤル式の黒電話がありました。それがいつしかFAXと一体型のプッシュ型の電話になり、時が経ったらそれすらもう使ってない! じいじやばあばに電話するときも、スマホでに登録した電話番号をタッチするだけだし、どこかのお店に電話するときも、スマホで検索して電話番号をタッチするだけでした。それが当たり前の社会に生まれたら「プッシュボタンを10桁押す」のが大変になってしまうのは、しょうがないんですね。なので、慣れるまで練習しないといけないな……と思いました。

パートナーの娘が現在20歳で、今は大学の寮で生活をしています。もちろん、寮に固定電話はなし。インターネットもホームルーターを契約。ホームルーターは家に置いておくWi-Fiの機械で、電波形式のものです。「インターネットを快適に使いたい」という相談に乗っているときに、そもそも今どきの若者って「インターネットは電波」だと思っているのか……!? と気がつきました。「有線」という概念が薄いのです。

実家にいたときから、ネットはWi-Fiまたはスマホで使っている世代なんですよね。私やパートナーはインターネット初期からのユーザーなので、つい必死に「インターネットも、電話線と一緒に電線で通ってるんだよ」という説明をしてしまいました。でも説明しなかったらわからないですよね。

ホームルーターは通信量に制限があるので、固定回線に変えたいという話の相談だったのですが、寮には他にインターネットの固定回線を契約してる人もいないらしいです。いざ、工事をしたいと思ったら「できるかどうかわからない」と言われてしまったそうで……。寮は期間限定の滞在なので、固定の工事を避ける人が多いのかもしれませんが、固定電話どころか、固定回線のインターネットも使っていないとは、と時代の変化を感じました。

自分の親の世代と、自分達の社会の変化に比べると、自分達と子どもの世代との差はあまりないな、などと思っていたのですが、通信については変化がたくさんありました。ここがジェネレーションギャップを一番感じるところかもしれません。公衆電話の使い方も、息子の日常の延長にはないんだな~と実感したので、今後も意識して練習させたり教えたりしていかないとなと思いました。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。