「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第160回のテーマは「子どもへの態度の違いは親としての主義の違い? 」です。

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第152回「父子のコミュニケーションについて」でも書きましたが、我が家では息子から何か頼まれる、言われるのは圧倒的に母親です。困りごとやお願いごとがあると、母親に言ってきます。父親にはなかなか言いません。

我が家の分担では「ごはんと旅行」は完全にお父さんの役割なのですが、「あれが食べたい」「どこどこに行きたい」というリクエストも母親にしてきます。そのたびに「お父さんに言って! 」と息子に言っています。

お父さん~! もっと信頼されてほしい……。パートナー的には「もっと自分に言えばいいのに、お母さんばっかり」みたいなことを言うのですが、お父さんは「子どもの言うことを何でも聞く必要はない」という方針です。

私も、別に何でもかんでも聞く必要はないとは思います。ですが、例えばこのマンガのように、6歳児が朝起きて「お母さん」と声をかけてきたら、「起きてあげないとな」と私は思うのです。

しかし、パートナーは「親も眠いなら放っておいてもいいのでは」と言います。もっと年齢の低い子が一人で別の部屋で過ごすのは、家の中とはいえ危険でしょう。ちゃんとした判断が下せるとは限らず、誤飲など家の中での事故が起こる可能性は高い。

でも5歳くらいになってくると、子どもによりますが、別の部屋で一人で過ごせる子も出てくると思います。何歳だったら「一人で過ごして」と言うべきなのか。確かにうちの息子は放っておいても大丈夫なタイプではあります。

しかし私は、まだ家の中でも一人で過ごすのは心細いだろうと思うので、子どもに起こされたら起きます。ですが、「自立を促す」という観点から見れば、いちいち面倒を見るのは過保護だと思ってもおかしくはありません。そう考えるとパートナーに対して「子どもが朝起きたんだから、親も一緒に起きるべき」と言うのは、「自分の考えが正しい、それに合わせろ」という態度になりかねないなと思いました。

私達は「自分が正しい。お前が間違っている」というスタンスは、夫婦の断絶の第一歩だと言うことをよく知っています。我々夫婦はお互い離婚経験があるので「正しさ」は人によって違うし、自分の正しさを押し付けることが信頼関係を脅かしかねないことを経験しているのです。

なので、私は「本当に自分は正しいのか」ということを、なるべくよく考えるよう気をつけています。そして、「子どもが起きても、ある程度成長しているのだから、親が眠かったら放っておいてもいい」というのも、考え方としてはアリなのかもしれない。と思いました。

と言いつつも、もちろん過度な叱責や暴力は、「主義」や「考え方」ではないと思っています。昔は許されていたとしても、それは「虐待」です。その行為で子どもが傷つき、後々まで影響することがわかっているし、それは「考え方の違い」では済まされないと思います。なので、パートナーが息子に対して過度な叱責をしたときはとことこん話し合いをして、どこまでが許容範囲なのかを共有しています。

ただ、どこまで子どもの要求や甘えに応えるかというのは、価値観や方針の違いがあり、話し合いをしてお互いの意見を認め合うところではあるでしょう。第153回「父と母の枠割の違い」で書いたように、私は息子の要求に応えがちなので、ネガティブな甘えも多くあります。本人が「できない」と思っていることをやらせると、息子は私に対してとても感情的になり、ちゃんとコミュニケーションを取るのが大変です。そんなときはパートナーが子どもと話し合いながらやると、できることがよくあります。そういう場面を見ると、やっぱり自分の方針だけが正しいわけじゃないんだろうな……と思うのです。

とはいえ、何かと私のほうに子どものタスクが増えることを、「私がそういう方針だから」だけで済まされるのはモヤモヤします。私も眠いのに子どもに起こされて、パートナーから「うるさいからあっち行って」と言われたら「なんじゃそりゃー」ってなりますよね。

後から聞いたところ、「さるころも起こされたとは思わず、仲良く話してると思ったので隣の部屋へ行ってと言った」とのことでした。それにしても言い方……「あっち行って」じゃなくて「もうちょっと寝かせて」と言えば、事も荒立たないのでは? と言ったところ同意してくれたので、次回からそう言ってくれとお願いしておきました。

パートナーは私に合わせて以前よりもだいぶ「子どもの要求に応える」ようになってきているし、私は「甘やかし過ぎてはいけない」と自分でできることは自分でやらせるように意識しています。夫婦でお互いの考えを尊重すれば、いい影響もあるんじゃないかなと思っています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。