「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第152回のテーマは「たまに父子の会話に介入します」です。

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私は、父親と息子のコミュニケーションについて悩むことがよくあります。

我が家では「察してちゃん禁止」というルールがあります。なのですが、私はかなり“察する”ほうです。そもそも、察するとはなにか。それは予測推測です。そのためにはまず、相手のことをよく観察し、相手の言った些細なことをよく覚えるというのが前提です。そして、予測するための情報が多ければ多いほど、予測&推測=察することができます。

私たち夫婦は、「記憶のタイプ」に得意、不得意があり、私はエピソード記憶が強く、パートナーは意味記憶が強いタイプです。私は相手から言われたことや、見て経験したことをよく覚えていますが、本で読んだことなどは全く覚えられません。例えば、私は古墳が大好きなのですが「今まで行った古墳の正確な名称や築造時期」とかは曖昧です。ざっくりとした年代とかはわかりますが、正確な数字や名称は常に調べないとわかりません。

一方パートナーは意味記憶が強く、昔から勉強が得意なタイプ。しかし、会話やなんとなく見たものなどを忘れることがとても多いのです。「これを覚えないといけない」と意識したもの以外はだいたい忘れています。つまりエピソード記憶が弱いタイプ。

この記憶タイプの差は、同居し始めのころによく喧嘩の原因になりました。私が口で伝えたことを、相手が全く覚えていないことがよくあったからです。これに関してはお互いの記憶タイプが違うことを理解して、「予定はグーグルカレンダーを使って共有する」など、問題が起こらないようなルール設定をしました。

しかし息子とパートナーの会話は、私から見るとよく齟齬が生じています。なぜなら、察するための記憶は圧倒的にエピソード記憶によるところが多いからです。しかも息子は、エピソード記憶も意味記憶も強いタイプ。「この前言ったから知ってるよね」と、自分が覚えてるから相手も覚えているだろうという感覚で話をしがちです。

エピソード記憶が強い同士の母と子が話すと、「共有されている前提」のことが多いのでスムーズに進みます。しかし、パートナーはこれが苦手。それだけでなく、6歳児の会話は前提がすっ飛ばされていたり、本人が気持ちなどをきちんと説明することが難しかったりするので、父と子の会話はスムーズに進まないことがあるのです。

我が家では「なんでわかんないの? なんで覚えてないの? 」とイラっとするエピソード記憶派(母と子)と、「なんでわかるように言わないの? 覚えてる前提なの傲慢でしょ」というエピソード記憶苦手派(父)のザラっとした戦いになりがちです。

パートナーはこのような、息子が「1」を言って、母親が「5」くらい理解するコミュニケーションをあまりよしとしません。本人が苦手というのもありますが、「そういうコミュニケーションばかりだと、きちんと説明する言語感覚が養われない」という方針があるからです。

それ自体は私もそう思うので、基本的には父子の会話が「回り道しているなあ」と思っても、黙っていることもよくあります。ですが、息子からのネガティブな交渉などになると、うまくいかないことが多い……。息子がめげちゃうんですよね。

我が家は「デジタルデバイスチケットルール」(第150話参照)を導入しましたが、厳しいルール運用はしていません。息子がストレスを感じてるなと思ったらちょっとサービスするとか、わりと甘い運用をしています。

ただ、これは夫婦でコンセンサスを取らないといけない。私がOKしたものをパートナーに共有していないと、「子どもがルールを破った」ということになりかねないからです。なので家族全員が家にいるときは、ルールの変更などはお父さんもお母さんも同意する必要があります。

基本的に息子は、ルールを甘くしてほしいなどの「めんどくさいこと」は私に相談します。なので私が勝手にOKして、パートナーに「そうなったよ」と報告するケースもあります。ですが以前、父子関係があまりよくなかったときに、息子もパートナーも「喧嘩してもお母さんが解決してくれる」という感じになってしまい……私が「2人で喧嘩するなら仲直りも自分たちでやって! 」と突き放したことがありました。なので、お母さんを通しての交渉だけじゃなくて、息子からお父さんに交渉するということもしてほしい。

うまくいかないことがあっても、それも父子にとって修行だから……と、心に余裕があるときは見ていられます。ですが、「お父さんが怒って、息子が泣いて終わる」という結末にしかなりそうもないときとか、急いでいるときとかは介入してサポートしてしまいます。

息子はお父さんに何を伝えるべきか、お父さんは息子の訴えをどう受け止めるべきか。介入し過ぎもよくないけど、放ったらかし過ぎてもよくない。私が全部決めてもよくないけど、着地点が見えてるのに助け舟を出さないのも意地悪……。そしてなにより、こじれたら結局ケアはせざるを得ない。

家族のコミュニケーションって、丁寧にしようと思えば思うほど大変だなといつも悩みます。そして、こんなにマネージメントしてるのに無報酬! と納得がいかないので、最近はサポートなりケアなりしたあと「100万円ホシイ」とよく言っています(どこからも出てきませんが……)。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。