1914年に軽井沢で温泉旅館を開業し、2022年で108年の歴史を数える星野リゾート。「旅を楽しくする」をテーマに、「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO(おも)」「BEB(ベブ)」のサブブランドを展開し、2022年11月以降は新たに7施設をオープン予定です。今回はそんな新しいワクワクを生み出し続ける星野リゾートに注目! 今こそチェックしたい話題の施設を深掘りしていきます。

  • 「星野リゾート 界 由布院」

第13回目は、2022年8月、大分の人気観光地・由布院にオープンした「界 由布院」。界ブランドでちょうど20施設目となるこちらは、隈研吾さんが設計・デザインを担当。日本の原風景を思わせる"棚田が主役"と言うから、驚きです!

壮大な田園ビューを楽しみながら、やわらかな由布院の温泉に浸かって、ゆるっと癒やしのひとときを……。そこに待っていたのは、美しい風景にときめく隠れ家でした。

北海道の大パノラマに癒やされる「界 ポロト」だけの感動体験

■由布院駅から10分の別世界へ

  • 竹垣を通って、エントランスへ

観光客でにぎわう「JR由布院駅」から車で約10分。住宅街を抜けて車を走らせると、駅を降り立ったときの喧騒とは一変! 静けさが漂う、隠れ家のような温泉旅館に到着します。

「界 由布院」は、「棚田暦(たなだごよみ)で憩う宿」がコンセプトのお宿。「界 別府」に続き、隈研吾さんが設計・デザインを担当しました。

竹垣が続くエントランスは、日常から非日常へ切り替わる場所。竹のさわさわ……と響く音が、特別な時間の始まりを告げるようです。

  • 温かなもてなしを予感させてくれる「界」の文字

入り口に来ると、「界」の文字が目に飛び込みます。ピンク色の部分は、大分県の国東半島でしかとれない植物「七島藺(しちとうい)」でくるくる編み込まれたもの。「七島藺」とは、強度に優れた和の素材。畳表や、最近では工芸品として利用されています。

「界 由布院」では、この「七島藺」にも注目してみてください。いたるところで、細かいインテリアとしてあしらわれています。

  • シックでモダンなフロントロビー

胸をときめかせながら館内へ。ロビーは、農家の空間構成「たたき」をイメージした独創的な空間になっています。

「えっ、どこがたたきなの?!」と思われるかもしれませんが、右手のフロントカウンターに注目してみてください。ヒントはご飯を炊くところ……と言ったら分かります?

  • 目を楽しませてくれる、かまど風のフロントカウンター

そう! フロントカウンターは、昔懐かしい「かまど」がイメージ。しかも、かまどの蓋まで用意されていて、パカッと開けられるんです。斬新なアイデア、さすがの一言ですよね。

  • 24時間利用できるトラベルライブラリー。コーヒーやハーブティーなどを飲み放題で楽しめる

奥に進むと、ゲストが自由に使えるトラベルライブラリーが出現。ここは板間のイメージになっていて、床材も竹皮フローリングに変わります。

棚には、大分の歴史や文化にまつわる書籍が。「棚田」にフォーカスした本も置かれているので、ぜひ手にとってみて。読んでいると、旅の楽しみがぐっと広がりますよ。

■棚田にふれる里山時間

  • 椅子に座ってくつろぐゲストの姿も、風景の一部になる

トラベルライブラリーの奥には、座敷をイメージした棚田テラスが!

ここは、棚田を見下ろすように作られた長い縁側空間。24時間開放されているので、のんびり過ごすのにもってこいです。

  • 棚田が階段状に並ぶ風景は圧巻

おいしい空気に鳥や虫たちの声。山のパワーに包まれる時間は、ささくれだった心を丸くしてくれます。静かに、ゆっくり。風情ある里山時間を楽しみましょう。

ちなみに、もともとこの界隈は棚田が多く、50年ほど前は建物がある場所も棚田だったのだとか。しかし、高齢化などにより耕作放棄地に……。一度は荒れてしまった棚田ですが、「界 由布院」の開業によって美しい棚田の姿を取り戻すことができたのです。

春は景色を映す水鏡に、夏はみずみずしい緑の絨毯に。そして収穫期を迎える秋には、田んぼが黄金色に輝きます。訪れる季節や時間ごとに変わる情景は、何度見ても飽きることがありません。

■棚田の中に建つ離れの客室

  • 客室のルームキーも、「七島藺」で作られたもの

さて、いよいよ客室へ。「界 由布院」のお部屋は、全部で45室。離れは5棟ありますが、そのうち2棟の「蛍かごの間(棚田離れ)」は、棚田ビューをひとり占めできる贅沢な造り!

  • 足元から天井いっぱい大きなガラス窓の「ピクチャーウィンドウ」

「蛍かごの間(棚田離れ)」は、中に入った瞬間、杉のいい香りがふんわりと漂います。 廊下には"木材のまち"として知られる大分県日田市の日田杉(ヒタスギ)を使っていて、芳醇な杉の香りをはっきりと感じることができます。

さらに廊下には、美しい風景を切り取る「ピクチャーウィンドウ」が。まるで大きな絵画のようでステキ……!!

  • 空を移す水鏡のような特別室の露天風呂

室内は竹づくし。大分県産の細めの篠竹を使ったソファに、竹製のブラインド。さらに、ベッドボードにも竹が使われています。

  • 露天風呂を楽しめる、離れの客室専用の湯小屋

里山の雰囲気を感じながら、ゆったり温泉を……。そんな贅沢を叶えられるのも、離れの客室だからこそ。奥のスペースには専用の湯小屋あり、好きなときに好きなだけ、由布院温泉をひとり占めできます。

湯上がりは、縁側に置かれた七島藺の円座に腰掛けて、ほっとひと息が至福。

  • ホタルの光のようにチカチカ輝く照明にうっとり

何より印象的だったのが、ベッド上の照明。らせん状が美しいこの照明は、蛍を入れて愛でたり、虫の音を楽しむための「蛍かご」がモチーフになっています。

夜にこの照明だけつけると、七島藺の隙間からやわらかな光がもれてファンタジックな雰囲気に。しかも、点滅する蛍の光のようにチラチラッ……と幻想的な光を放つんです!

温かみがあって。ほわっと優しい光に包まれるようで。ぼんやり光を眺めているだけで、ただひたすらに癒やされます。

  • 「蛍かごの間(露天風呂付き和室)」1F

離れの客室もステキですが、温泉好きの人におすすめしたいのが「蛍かごの間(露天風呂付き和室)」。湯小屋のすぐ目の前は、くぬぎ林。1Fだと視界をさえぎるものが一切なく、より森を近くに感じられます。