住宅ローンを借り入れる際、返せる金額の算段はしているはずです。余裕をもって考えられる人もいれば、頭金が少なめとか、収入について先々心配な部分があるなど、何かしら不安要素を感じている人もいるでしょう。不安要素があれば当然ですが、余裕があったとしても少しでも負担は軽くしたいはずです。何事も起きなければいつかは完済できるかもしれませんが、連載も今回で9回目ですので、住宅ローン返済のリスクに備えるポイントをまとめておきます。

ポイント1:物件選びが最も大切!

数十年にもわたるローン返済だからこそ、物件選びが最も大切です。そもそも住まいは、生命と財産を守るためのものです。財産だけでなく命も失いかねない災害を回避し、資産が目減りしない市場性の高い建物を選択する必要があります。

自然災害

自然災害には、地震、火災、津波、河川や下水道の氾濫、崖崩れなどがあります。マンションでも1~2階は浸水の危険があります。自然災害は容易に避けられるものではありませんが、崖崩れなどの被害を受ける可能性がないか、水害が起きやすい地域ではないかといった危険性を見通すことも、リスクを減らす大切なポイントとなります。

人災

欠陥杭や耐震不足など、様々なトラブルがニュースとなっています。これらは作り手側のモラルの問題であり、一般の人には避けようがない面もあります。しかし、まったく手の打ちようがないかと言えばそうでもありません。

例えば、市場よりも極端に安いケースは要注意です。建築物は多くの産業と人員がかかわり、それらの積み重ねで価格が決まりますので、極端に安くはなりようがないのです。その点では、信頼できるディベロッパーや建設会社の物件を選ぶことも、リスクを少なくする方法の一つと言えます。また、周辺よりも価格が安い物件は、自然災害の被害を受けやすい土地である可能性もあります。どんなに安くてもそういった物件は選ばないほうが良いでしょう。

市場性

戦後から高度成長期まで、首都圏の人口が拡大し、郊外に次々と団地が建設されました。例えば多摩ニュータウンは、都心まで出るのに時間がかかる上に、その最寄り駅までバスが必要となるエリアまで広がっています。現在住民は高齢化し、以前トラブル診断で伺った団地は、各棟相当数の空室がありました。しかも一帯の地形は起伏が多く、かなりの勾配の坂道が続くなど、高齢者には厳しい環境となっています。買い手もなく、少子化の今では借りる人も少ないのが現状です。

マンションだけではありません。23区内の戸建て住宅でも空き家となる時代です。「駅近」、「中心部からの通勤時間が短い」、「買い手・借り手がある間取りや規模」、「周辺の利便性」、「大規模物件」など、いつでも有利に売ったり貸したりできる物件であることが、住宅ローンの借り入れリスクを少なくしてくれます。

ポイント2:ローンの組み方を配慮しよう

返済年数は長めがおすすめ

とりあえず毎月の返済額を低めに抑えておくと、何かの理由で一時的に返済が困難になったときにも対処しやすくなります。もちろん定年までには完済しなければなりませんので、なるべく繰り上げ返済を行ってください。

定年までに完済

子供が独立し、教育費の負担もない、定年後も再就職するという予定でも、定年までに住宅ローンは完済しておくことが望ましいです。定年後、収入は大幅に少なくなるのが一般的ですし、病気にもなりやすくなります。体力の衰えを感じ始めるかもしれません。定年後に住宅ローンを残すことはリスクが高いと言えます。

ポイント3:思い立ったらまず節約を

住まいを取得しようと思い立ったら、少しでも頭金を増やすために徹底的な節約を始めましょう。住まいを手に入れるという夢に向かうので、モチベーションも高まりやすく、頭金を増やすチャンスなのです。とにかく徹底的に行うことが重要で、できれば購入後も節約を続けるのがベストです。そうして捻出した分は、頭金として使わない場合でも、生活費や家具の購入などに使ってしまわずに、万一のときの返済資金確保のために貯蓄してください。

下記は、節約するための仕分けポイントです。とにかく「バッサリ切り捨てるもの」を仕分けするのがポイントです。

  • 節約のための仕分けポイント

ポイント4:万一の場合の対策を考えておく

順風満帆にマイホーム生活をスタートしても、やはり人生には思わぬことが起きるのが常です。その場合にどう対処するかをあらかじめ考えておきましょう。収入が減ってしまった、病気で働けない、リストラにあったなど、考えられるケースに対処できるかどうかなどを考えて、必要に応じて対策を立てておくことが大切です。それらの準備は、たとえ何も起きなかったとしても今後の人生に役立ちます。

売ったり買ったりできるかどうかの確認

中古物件の価値が低下しやすい地域であるかどうか、賃貸物件とする場合どのくらいの収益が見込めるか、自分たちの住まいはどうするか、などを事前に確認しておきます。

収入を増やす手立てを準備しておく

資格の取得やスキルのアップなどに取り組みましょう。専業主婦でも、万一の場合に有利に働ける力は蓄えておいた方が良いです。

保険のチェック

団体信用生命保険で賄えない範囲の確認と、その対策を考えておきましょう。

ポイント5:インフォームドコンセントとセカンドオピニオンの活用

大病を患った際、インフォームドコンセントとセカンドオピニオンを活用することはもはや常識と言えます。人生最大の出費であり、人生全体を左右するマイホームの取得に際しても同様です。また、物件の市場性や建物のリスク判断、周辺環境の変化予測などについても考えておく方が良いでしょう。

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ポイント6:返済開始後の管理こそが大切

先々までのことを考えてローンを組み立てたとしても、数十年間にわたるローン返済期間の先まで見通すことは難しいと思います。だからこそ、何があっても切り抜けられるように、借り入れ後の管理が大切なのです。問題が大きくなってからでは大変ですが、早めに問題を察知すれば対処もしやすくなります。生涯収支表(ライフプランシート)の良い点は、先々の問題を早めに察知できる点だと言えます。

次回は最終回ですが、返済開始後の管理などについて考えてみましょう。

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。