働くママ・パパにとって、とってもありがたい"保育士"の存在。できれば良い関係を築きたいと思いながらも、その関係性に不安を感じることもありますよね。この連載では、保育園の日常をつぶやいたツイッターが話題の男性保育士「てぃ先生」に、保育士としての"本音"を伺っていきます。

4回目は保育園における勉強面の不安についてインタビューしました。

勉強面は、フォローした方がいい?(画像はイメージ)

最低限の読み書きはできた方がいい

――保育園は幼稚園と違って、国が定める「教育施設」ではありませんよね。勉強面は大丈夫なのかなという不安があります

これまでのインタビューでも保育園見学のポイントをお伝えしてきましたが、こういう不安こそ見学のときにぶつけたらいいと思います。ホームページやパンフレットに載っているのはあくまでも全体的な情報です。見学中に「2歳のときは何をするんですか?」「3歳のときはどのような活動をするのでしょうか?」と具体的に細かく聞いてみるといいかもしれません。

――読み書きを教えない保育園も少なくないと思いますが、そのまま小学校に上がってしまっても大丈夫なのでしょうか?

それぞれのご家庭の考えによると思いますが、僕は入学前に教えた方がいいと思いますね。小学校に上がると、まず名前を書きますよね。教科書にもノートにも、配られるプリントにも。それまでに習っていなければ当然書けないし、教科書を開いても書いてあることが読めない。

もちろん、小学校でもひらがなを教えてくれます。しかし最近は幼稚園でも保育園でも最低限、ひらがな程度は教えるように整備されつつある印象です。だからこそ、教えた方がいいと思いますし、今は保育園だから教えなくていいということにはならないと僕は思っています。

――今後は保育園でも教えるように変わっていくのでしょうか?

変わっていくと思いますよ。僕は小学校の先生とも話をする機会があるのですが、「1年生のときの学習の差を縮めていくのは難しい」と話す先生もいます。小学校で初めてひらがなの読み方を覚えた子と、年長の頃から1人ですらすらと本を読める子、当たり前ですが、スタートは違います。

僕は子育てに関して、お父さんお母さんにむやみにプレッシャーをかけてはいけないという考えを持っています。しかし、そうした最低限の勉強面に関しては、多少お尻を叩いた方がいいと思っています。

文字に興味を持たせる工夫を

――保育園で教えてもらえない場合、家庭でどのように教えたらいいでしょうか?

お風呂にひらがな表を貼っておくといったような簡単なことからでいいのですが、まずは本人が興味を持てるようにしたいですね。親が買ってきた教材で一方的に教えようとすればするほど、嫌になってしまいがちです。子どもは身近な大人がやっていることが気になるもの。親が興味を持って文字で遊んでいる状況を作り、その輪の中に入れてあげるようなアプローチをするといいと思います。

あとは読み聞かせですね。多くの保育園では、絵本や紙芝居を数時間おきに繰り返し読んで聞かせていますが、これには子どもを楽しませるだけでなく、文章を聞かせてイメージさせるという狙いがあります。

読み聞かせで絵本が大好きになったら、自然と文字への興味もわくのではないでしょうか。ですので、家庭でも絵本を読んであげる時間は必要かなと思います。

――勉強面ではやはり親のフォローが必要だと感じますが、それも含めて、先生にお子さんがいたら、保育園に預けたいと思われますか?

難しい質問ですね……。もし今後、自分で保育園を作れるのなら、自分の保育園に入れたいと思います。今の状況では、どの保育園を選ぶかによって当たり外れがとても大きいと感じます。

「ケガなく」「トラブルのない」保育園はいい保育園なのか

――では、どういう保育園なら預けたいと思われますか?

子どもを「預かる」のではなく、子どもの「成長を促す」保育園選びをしたいですね。あとは、最低限のお勉強を取り入れているとか、いろんなものに触れられる保育園。本当は、1日こんな遊びをして、1週間でこんな経験をして、1カ月でこんな成長があったという風に、通って来る子をさらに良くして返すのが保育園だし、そういう保育園がもっと増えないと、と思います。

今は「預かっているだけ」の保育園が多いのではないでしょうか。お子さんを"お預かり"して、1日の最後にケガなく"そのままお返しする"。本来ならば、保育士はケガをさせない保育をするのではなく、ケガをしないためにはどうしたらいいのか考えられる子どもを育てないといけないと思っています。

――確かに、ちょっとした擦り傷でも先生にすごく謝られてしまうことがあります。気にする親がいるからこそ、先生も過剰反応されてしまうのかなとも思いますが……

例えば、保護者からのクレームを恐れて、園児同士のトラブルが起きないようにしてしまったという保育園の話を聞いたこともありますね。トラブルがあった場合でも、当事者を別々のグループにすることで保育者が解決を図ってしまうなど、親としては安心かもしれませんが、そういうことじゃないですよね。

本当はトラブルを経験した方がいいと僕は思います。小学校に上がってからトラブルが起きたときには、自分たちで解決しなければなりません。それを学ぶ機会がせっかくあるのに、残念ながら今は「トラブルが起きない」「ケガをしない」保育が最優先になってしまっている印象です。それでは、トラブルを自分で解決する力がつきません。

今は特に首都圏で保育園が足りない状況なので、黙っていてもお客さんが来るかもしれません。でも今後は、幼稚園、保育園、こども園が一体となった競争にさらされていく可能性が高い。「預かっている」だけの保育園は、自然と淘汰されていくのではないでしょうか。

てぃ先生

都内の保育園に勤める保育士。子どもの面白くてかわいい言動などをつぶやくツイッター(@_HappyBoy)が話題となり、フォロワー数は43万人(2017年9月20日現在)を超える。「顧問保育士」の肩書きを持ち、講演や研修の講師、保育園のプロデュースなど保育の幅広い分野で活躍している。著書に『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』『ハンバーガグー!』(KKベストセラーズ)がある。漫画『てぃ先生』(KADOKAWA/メディアファクトリー)のアニメもアプリ上にて配信中。