"FXってそんなに儲かるの?"と最近自分の回りの一見お金儲けには興味がなさそうな草食男子にすら訊かれている。それはドル円が100円台に乗り、またぞろ円安トレンドになっているからだけではなく、「ヒルズ族若手経営者FXで1億6千万円脱税」というニュースが流れたからのようなのだ。

脱税をしたことが悪いことだというよりも、"へえ~っ、FXってそんなに儲かるんだ、私もやってみようかな"と思う人は多いようで、実際あの有名な4億円脱税主婦のセミナー(私も一度行ってみた)には「儲けられるノウハウ」を学ぼうと大勢の人が来ていた。本来は良いと言えないニュースであっても、世間に喧伝されることによってFXの認知度は高まるので、結果的に新たなFX参加者を引き入れるきっかけになるのかもしれない、としたら微妙な気持ちだ。

自分の失敗から学ぶのが一番

私たちが成功者に興味を持つのは、その人が経てきた失敗や過ちを自分は経験しなくても済むかもしれないし、それ以上に肝心の「儲けのシークレット」を開示してもらえる期待があるからだ。そう上手く行くとは限らないが、少なくとも初めは実際の成功者を真似ることはやってみてもよいと思う。しかし成功者とは全く別個の人間であり、性格、精神力、投資経験、生活パターン、資金量、などに差異があって、私達にも同様にFXの女神様が微笑んでくれるとは限らない。それに投資の世界にだって運という科学的に説明できないものが存在する。

それよりも人間は自らがおかした失敗から学ぶ方が大きい。事実その成功者だって自分の失敗から学んで成功へたどり着いたわけなのだから。かの有名な大投資家のジム・ロジャーズ氏も言っている、「初めの頃の損から多くを学んだ」と。負けることも将来への糧にする気持ちがないとFXで勝つことはできないと思う。

トレードにおいては、偶然成功(運とかツキとかあるので)することはあっても偶然失敗することはない。失敗のトレードにはなぜそうなってしまったのかという原因が存在するはずだ。だから敗因を分析すれば次のトレードに役立たせることが出来るはずだ。と同時に成功パターンも分析すること、こうやったら上手く行ったという勝ちパターンはそのまま踏襲すればよい。

デモで失敗したら止めることも考える

こうしたニュースからFXに関心を持っても、じゃあ何から始めればいいのか、ということに突き当たる。誰でもいきなり路上で車の運転はできない。普通は、ブレーキやアクセルの使い方を習わないと運転はできないのと同じこと。それに事故に遭ってしまう確率もかなり高くなる。FXは車の運転と全く同様、本番に行く前にデモ・トレードを取引の練習をすることはマストアイテム。取引システムの使い方(会社によって差異がある)や、注文方法や資金管理の方法、そしてもちろん為替相場にも慣れなくてはいけない。意外に初歩的なミス、例えば売りと買いを間違えたり、売買数量を間違えたりする人が多いようなので、本番でつまらない初歩的ミスによる致命的ミスを負わないためにもデモはとても大切だ。デモは1-2回ではだめ。納得行くまでやろう。

ただ、どうせデモだからといっていい加減な取引をしたら意味がない。そんなことをしたら本番でもそのクセが出てしまう可能性が高い。本当にお金を賭けているんだ、と思ってやってほしい。私の場合、デモではロスカットがバンバン出来たのに、最初の頃のリアル・トレードでは全くロスカットができなかった。そしてトレードの結果は必ず確認しよう。先ほど言ったように、負けパターンや勝ちパターンを確認し、トレードの記録をトレードノート(下図:参照)につけておくことをお勧めしたい。

トレードノートのつけ方

トレードノートは簡単でよい。でないと続けることができないからだ。ポイントは、なんで買おうとしたのかまたは売ろうとしたのか、売買の根拠を明確に示すこと。数字は確実に損益を示してくれるので、もし失敗した場合にはどうしてこうなったかを反省して今後の本番で活かせるよう反省材料にすべきだ。もちろん、デモで儲けたからといって本番で儲けられるかどうか分からないが、逆にデモで大きく損を出したら、自分はFXをするべきかどうかよく考えて見た方がよい。向かない人だって世の中には存在する。

続けることが勝つ秘訣

そして、リアル・トレードに行く場合、ぜひぜひ小さな金額そして値動きの小さな通貨ペアからスタートしていただきたい。まだ自分は若葉マークだということを意識しよう。ぼちぼち感覚で数千円の利益をこまめに着実にとっていくのが良いと思う。取引単位は1万単位と言わず、千単位でも良い。例えば、ドル円を100円で1,000通貨買って、仮に99円になったとしても、1,000円の損失で済む。もちろん100円が101円になっても、1,000円の儲けでランチ分くらいにしかならないが、少しの利益であっても利益は利益だ。

確実に取れるようになって自信がついたら、ポジションを大きくすれば良いので、まずは自分なりのトレードスタイルや売買ルールをつかむことが大事。いきなり大きな金額でトレードして大きな損失を出すと、普通の人間はなかなか立ち直れない。損失の大きさによっては、一回切りで退場しかねないケースだって発生する。そうなったら成功するも何もあったもんじゃない。

FXで勝つ秘訣、それは勝つまで続けること。続けるためには大きな損失は出さないようにすることがポイントとなるのだ。

執筆者紹介 : 香澄ケイト氏

主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。