FXの大相場の数々を目撃してきたマネックス証券、マネックス・ユニバーシティ FX学長の吉田恒氏がお届けする「そうだったのか! FX大相場の真実」。今回は「レバレッジ」を解説します。

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FXのレバレッジは、上限が2010年に50倍、そして2011年には25倍といった具合に段階的に引き下げられました。では、それ以前はどうだったかというと、100倍以上のレバレッジで取引するケースもあったのです。

レバレッジ100倍超もあったリーマン・ショック前

ではレバレッジ100倍で取引するというのはどのような感じでしょうか。

例えば、1米ドル=120円レバレッジ100倍で取引する場合、仮に60万円(5,000米ドルに相当)を証拠金として預託すると、5,000米ドル×100=50万米ドルの取引が可能になります。要するに、証拠金は取引額の1%であり、裏返すと証拠金の100倍の取引ができるというわけです。

この場合、1米ドル=120円で50万米ドルを買い、仮に121円まで1円上昇したとすると、50万米ドル×1円=50万円の利益が出る計算になります(注 : 手数料、金利収入などは除く)。60万円の証拠金を預託し、購入した米ドルが1円上昇しただけで、証拠金が倍近くになるのならビックリですよね。

ただ、本人は60万円の証拠金を預託したわけですが、実際にはその100倍、つまり6000万円もの取引をしていることになります。それを考えると1円上がっただけで50万円の利益になるのもおかしくはないわけです。

逆にいえば、6,000万円もの取引をしているわけですから、予想と反対の動きになった場合の損失もとても大きくなります。単純計算なら、1米ドル=120円で買った米ドルが、1%、つまり1.2円下落すると、証拠金の60万円がなくなることになるのです。

以上、「初心者でもわかるFXレバレッジの簡単解説」でした。それはともかく、高いレバレッジでの取引継続の前提条件の一つは、値動きが少ない、つまり小動きということでした。値動きが大きくなると、レバレッジを高くして取引した場合、少し予想と反対に動いただけで、すぐに証拠金が全て吹っ飛びかねません。

そんな大前提の値動き、つまりボラティリティー(変動率)が大きく変化したきっかけがリーマン・ショックだったわけです。米ドル/円のボラティリティーの急騰という大前提の変化から、レバレッジの上限を設定する、さらに段階的に上限を引き下げるといった流れとなっていきました。

  • 【図表】米ドル/円の週足チャートの推移(2005~2009年)(出所:マネックストレーダーFX)

    【図表】米ドル/円の週足チャートの推移(2005~2009年)(出所:マネックストレーダーFX)

相場のリスクとリターンの大前提はボラティリティー(ボラ)です。ボラが低い(小動き)と、基本的にリスクは低いですが、同時にリターンもあまり期待できません。ボラが低い中で高いリターンを追求するために、レバレッジを使ってリスクを高くするという考え方になります。

ところが、大前提のボラが上昇すると、リターンへの期待も高まるとともに、リスクも基本的には高くなります。そこでリスクテークの規制を強化した一つがレバレッジ規制ということだったわけです。

ただこの話は、これだけで終わりではなかったのです。FXで扱う通貨のボラは一律ではありません。そうなると、高いボラの通貨と低いボラの通貨のレバレッジ・ルールが同じで良いのかといった、もう一つの議論があったのです。