廃業するFX会社が増えてきた。今年度だけを見ても、5月29日付けで大阪為替倶楽部が、6月26日付けでプロテックスオフィスが、さらに7月31日付けで外為アルフィックス、8月31日付けでFXキングが廃業した。そして10月5日付けでベルフォードCMが、廃業する予定だ。

廃業しても、基本的に顧客の資産は守られる。基本的にFX会社は、顧客資産を自社の資産とは分けたうえで、信託保全方式によって分別管理を行っているからだ。その意味においては、顧客資産がFX会社の廃業とともに消えてしまうというケースは起こらないような形になっている。

ただし、問題は預けた証拠金ベースで保全されるのではないということだ。この点は勘違いしないよう、しっかりと覚えておこう。つまり、廃業時点で評価損を被ったポジションを持っている場合は、その評価損分が預けた証拠金の中から差し引かれたうえで、強制決済になる。

10月5日付けで廃業することを決定したベルフォードCMのプレスリリース(8月28日付)によると、経営環境の急激な悪化によって、将来の安定的な経営の維持が困難という判断で、廃業を決めたという。

これ自体は、別に何ら問題はない。たとえ廃業したとしても、顧客資産がきちっと信託保全されていれば、預けた証拠金の返還を巡ってトラブルが発生することもないはずだ。

しかし、問題は、「平成21年9月25日(金)日本時間午後5:00上記時間においてお客様のポジションが残っている場合、平成21年9月29日(火)午後3:00から午後5:00の間に弊社において随時決済いたします。なお、この場合、ポジションを決済する時間と価格につきましては、外国為替の実勢価格に基づく弊社の裁量とさせていただきますが、為替変動等のリスクにつきましては、弊社はその責を負いかねますので、ご理解のほどお願い申し上げます」という一文。

廃業する以上、仕方のないことなのかも知れないが、上記の点について、投資家にとっては大きなリスク要因になるということを、十分に理解しておいた方が良いだろう。何しろ、期日までに未決済のポジションを持っている場合は、FX会社が相場の動向などに関係なく、勝手にポジションを決済してしまうというのだから。

この場合、投資家がポジションを持った時の為替レートがいくらだったのかなどということは、一切考慮されない。大きな含み損を抱えている投資家が抱きがちな、「いつか自分がポジションを持った際の為替レートまで戻るだろう」、などという甘い期待は、この時点で完全に打ち砕かれる。仮に、1ドル=100円でドルを買い、92円まで円高が進んだ状態で、この措置が実行されれば、8円分の含み損が一気に表面化する。この含み損については、預け入れた証拠金から支弁されるので、含み損がかなり大きな状態だと、預けた証拠金の大半が戻ってこないということにもなりかねないのだ。仮に、預け入れた証拠金が100万円で、80万円の含み損を抱えた状態で9月29日午後3時を迎えたら、このポジション決済によって、戻ってくるお金は20万円程度になってしまうというケースも、現実に起こりうるのである。

こうした事態を回避する手段はない。せいぜい、「今の為替レートで決済してしまった方が有利なはず」と思い込んで、強制決済される前に自分でポジションを処分するくらいのものだろう。

ここ数年、FX投資家のなかには、短期のトレーディングを繰り返すスキャルピングという投資法が人気を集めていたが、それでもやはり投資家の大部分は、外貨を買って、長期保有し、日々発生するスワップポイントを獲得していくという投資法がメインだ。スキャルピングやデイトレードであれば、日をまたいだポジション保持は基本的にないので、含み損を抱えたままの状態で強制決済というケースにはならないが、長期ポジションを持っている投資家ほど、含み損を抱えた状態で強制決済されるという事態に追い込まれる恐れがある。

今後、さらに廃業に追い込まれるFX会社が増えていくと思われるだけに、廃業にともなうポジション清算の影響については、きちっと頭に入れておいた方が良いだろう。

執筆者紹介 : 鈴木雅光氏(JOYnt代表)

主な略歴 : 1989年4月 大学卒業後、岡三証券株式会社入社。支店営業を担当。 1991年4月 同社を退社し、公社債新聞社入社。投資信託、株式、転換社債、起債関係の取材に従事。 1992年6月 同社を退社し、金融データシステム入社。投資信託のデータベースを活用した雑誌への寄稿、単行本執筆、テレビ解説を中心に活動。2004年9月 同社を退社し、JOYntを設立。雑誌への寄稿や単行本執筆のほか、各種プロデュース業を展開。