2021年分のふるさと納税から、税控除を受けるための確定申告手続きが簡素化されたのをご存じでしょうか。ふるさと納税は、返礼品がもらえるうえ、税金も控除されるメリットがありますが、確定申告が面倒で敬遠する人も少なくありません。そこで、2021年分のふるさと納税にかかる確定申告がどのように変更されたか説明します。ふるさと納税のメリット・デメリットも合わせて紹介しますので、はじめてふるさと納税をする人も参考にしてください。

  • 2021年ふるさと納税の注意点を解説

●ふるさと納税のメリット・デメリット

日本全国の地方自治体の中から自分が選んだ自治体に寄附をする「ふるさと納税」。あらためて、ふるさと納税のメリットとデメリットを踏まえておきましょう。

ふるさと納税のメリットとは?

ふるさと納税には次のようなメリットがあります。

・寄附先の自治体から特産物などの返礼品をもらえる
・寄附金のほとんど(2,000円を除いた金額)を所得税・住民税から控除できる
・寄附金の使い道を知ったうえで寄附できる
・被災地の復旧、復興に協力できる
・必ずしも故郷でなくとも好きな自治体に寄附できる
・自由な金額で寄附ができる

このうち、多くの人が期待するのが返礼品と所得税・住民税の控除でしょう。

たとえば、特産肉やカニ・エビ・魚などの海鮮物、お米・新鮮野菜・果物などの農作物、ハム・ソーセージなどの加工食品、地酒・地ビールなどのアルコール類、ほかにも工芸作品や旅館・ホテルの宿泊券やレジャー券など多種多様。寄附先選びも楽しくなりますね。

また、原則として寄附額から2,000円を差し引いた全額が所得税・住民税から控除できるのも魅力です。そもそも、日本の税制には自治体に寄附をした場合、確定申告を行うことで寄附金額の一部が所得税および住民税から控除される「寄附金控除」という仕組みがあります。ふるさと納税では「特例控除額」というのが設けられており、通常の寄附金控除よりも控除額が大きく設定されているのはメリットと言えるでしょう。

ふるさと納税のデメリットとは?

制度内容をきちんと理解しないまま、ふるさと納税をした場合には、デメリットを被る可能性もあります。

「2,000円を差し引いた全額が所得税・住民税から控除できる」と述べましたが、実は控除できる額には上限があり、その上限額は年収・家族構成・住宅ローン控除や生命保険料控除など他の所得控除の有無や金額などによって決まります。あらかじめ控除上限額をシミュレーションすることはできますが、あくまで年間所得額が決まるのは1年の最終日です。極端な例を挙げれば12月31日に子どもが生まれて家族の人数が変われば上限額も変わります。そのため上限額ギリギリの金額でふるさと納税をしようと考えていても、その通りにならない可能性もあるのです。

また、同年内にふるさと納税を行う自治体の数が5団体以内の場合には、確定申告よりも簡単なワンストップ特例制度を利用することができますが、6団体以上になると、確定申告をしなければ税額控除を受けることができません。この、書類を揃えて、税金の計算をして……といった確定申告手続きを面倒に感じる人も少なくありません。

しかし、2021年分のふるさと納税、つまり2022年に行う確定申告からふるさと納税(寄附金控除)の申告手続きが簡素化されます。どのように簡素化されるのか、次から詳しく見ていきましょう。

●2021年のふるさと納税からの変更点

これまでふるさと納税(寄附金控除)の適用を受けるためには、確定申告書に特定寄附金の受領者が発行する寄附ごとの「寄付金受領証明書」の添付が必要とされていました。わかりやすく言えば、A市、B市、C郡に1万円ずつ寄附をした場合、A市、B市、C郡のそれぞれから「寄付金受領証明書」を発行してもらい、確定申告書にそれぞれの内容を1つずつ記載(入力)、年間合計額を集計、添付することが必要でした。

しかし、2021年にふるさと納税(寄附)した分からは、「寄付金受領証明書」が不要となり、特定事業者(ふるさと納税ポータルサイト運営者)が発行する「寄付金控除に関する証明書」を1枚添付すればいいようになりました。「寄付金控除に関する証明書」には年間寄附額(合計額)が記載されていますので、確定申告書にもその合計額を転記するだけでよく、楽になります。

ちなみに特定事業者というのは、地方公共団体と寄付金の仲介に関する契約を締結している事業者のことで、ふるさと納税のポータルサイトの運営者のことです。ただし、国税庁長官が指定した事業者に限られます。2021年9月15日時点で、次の13の事業者が指定されています。

  • 参照:国税庁「国税庁長官が指定した特定事業者(令和3年9月15日現在)」

簡素化の対象となる人は?

簡素化の対象となる人は、上で紹介した特定事業者のサイトからふるさと納税をする人、かつ、ふるさと納税の税控除のために確定申告する人です。前述したように、同年内の寄附先が5団体以下であるなど条件を満たせばワンストップ特例制度を利用できますが、ワンストップ特例申請をする人はそもそも確定申告をしないため、今回の簡素化の影響を受けません。

●確定申告の簡素化でより使いやすくなったふるさと納税

返礼品がもらえるうえに、所得税と住民税が控除されるなど、ふるさと納税には嬉しいメリットがあります。2021年からはふるさと納税のための確定申告が簡素化されて使いやすくなりました。今回紹介したメリット・デメリットを踏まえ、ふるさと納税を活用してみてはいかがでしょうか。