まいど、"相場の福の神"こと藤本誠之です。この連載では、上場企業の経営者との面談から気づいた、藤本がすごいと思った、ユニークなビジネスモデルの企業をご紹介します。第16回は、「画期的な新製品で戦う、日本のものづくり企業」です。
今回ご紹介するポエック(9264 東証ジャスダック)は、広島県福山市に本社がある企業です。ポンプ・送風機など産業インフラ機器の専門商社から始まり、今では環境関連機器を自社開発し、販売まで行うメーカー機能も有しています。
商社・サービス・メーカーとして
同社は商社として創業し、ポンプ、送風機、ブロア、コンプレッサ、空調機器から消防機器、水槽、ボイラ、焼却炉、ろ過装置まで豊富な販売実績があります。中国地方では、この分野の専門商社としてはトップシェアです。このビジネスの利幅は薄いですが、安定的な成長が期待できます。
サービスとしては、給排水設備機器のメンテナンス・修理、据え付け、技術サポートなど社会インフラを安全・確実に維持するためのバックヤード事業を行っています。販売した機器の増加ともに成長するストック型ビジネスで着実な成長ができます。
メーカーとしては、災害時に特に威力を発揮する電源不要の消火装置「ナイアス」や画期的な方式で高効率の熱交換を実現した「バーテルス」、見える防潮堤「シーウォール」などの機器を開発・製造・販売しています。この事業は、自社開発製品なので、利幅は厚く爆発的な成長が期待できそうなビジネスです。
次世代消火装置「ナイアス」
従来の消火装置は、電動ポンプで送水をするので、火災発生時に、電力・水道の供給が止まると消火できません。また高額で、メンテナンスの手間もかかる非常用電源設備等が必要でした。
ポエックが自社開発し、主要特許を押さえた次世代消火装置「ナイアス」は、窒素ガスの圧力により、タンク内の水を安定供給する世界初の消火装置です。窒素ガスの圧力で送水するので、電気や水道がストップしても確実にスプリンクラーを作動させることができます。
単純な構造なので、故障の心配が少なく、設置工事は置くだけで、ランニングコストもほとんどかかりません。平成26年10月に交付された消防法施行令の一部を改正する政令等により、一定規模の有床診療所等に対してスプリンクラーの設置に補助金を支給する制度が創設され、以降全国各地でスプリンクラー設備の設置が進んでいます。
補助金対象施設にターゲットを絞り、「ナイアス」の導入提案営業を実施しており、数多くの施設で導入されています。また、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所での採用が決まっているそうです。
見える防潮堤「シーウォール」
東日本大震災の津波で大きな被害が出たことから、東北を中心に全国的に津波を防ぐ防潮堤を造られています。しかし、大きな問題が生じています。それは住民の反対運動です。今まで、海がきれいに見えていたのに、コンクリートの大きな壁である防潮堤が造られると、全く海が見えなくなります。精神的に大きな圧迫され、観光の面からも大きな妨げとなってしまうのです。
この問題を解決するのが、高い強度を持った防潮壁用の枠付きアクリル製透明窓「シーウォール」です。ガラスを上回る高い透明度を持つアクリルによって、防潮壁の向こうの景色をクリアに見せ、景観をつなぎます。そして非常時には海の様子や逃げ遅れた人の有無を伝えるのです。
F15戦闘機のキャノピーや大型水族館の水槽にも使われるアクリルは、高い透明性と耐衝撃性を併せ持っています。優れた耐候性・耐久性・防汚性を持っています。
既に、岩手県釜石港や、神戸市の兵庫運河などで導入実績があり、東北地区を中心に今後大きな成長が期待できそうです。また、防潮堤としての用途だけでなく、高速道路やリニア新幹線などの防音壁としても有望なようです。
福の神の「ここがすごい」
商社・サービスというキャッシュカウの安定ビジネスを持ちながら、革新的な環境・防災機器を開発する自社開発製品で大きな成長を目論んでいる。特に、災害時対応型の次世代消火装置「ナイアス」は、利益率も高く期待の新製品。東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原子力発電所における安全対策に採用が決定となるなど、製品の信頼性は折り紙付き。
また、見える防潮堤も、東日本大震災以降、津波対策のため、全国で防潮堤が作られているが、海が見えなくなったとの住民の反対運動も起こっており、その解決策として今後大きな期待ができる。
この利益率の高い自社製品の環境・防災機器によって、急速な成長が期待できそうだ。
ポエック(9264) 東証ジャスダック
■株式データ
株価 3,800円
単元株数 100株
予想PER(連) 60.7倍
実績PBR(連) 5.89倍
予想配当利回り 0.85%
時価総額 約67億円
* 株価データは2018年2月9日終値ベース
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藤本誠之
「相場の福の神」と呼ばれる財産ネット株式会社の企業調査部長。 年間200社を超える上場企業経営者とのミーティングを行い、個人投資家に真の成長企業を紹介している。「まいど!」のあいさつ、独特の明るい語り口で人気。日興證券、マネックス証券、カブドットコム証券、SBI証券などを経て、現在は、財産ネット株式会社の企業調査部長。ラジオNIKKEIで4本の看板番組を持ち、その他テレビ出演、新聞・雑誌への寄稿も多数。 日本証券アナリスト協会検定会員、ITストラテジストAll About株式ガイド。 著書:『難しいことは嫌いでズボラでも 株で儲け続けるたった1つの方法』(SBクリエイティブ)など合計15冊