FP(ファイナンシャル・プランナー)にどんな相談ができるのか、過去の実例を紹介します。今回の相談は「贅沢も無駄遣いもしていません。それでも貯蓄が増えないのは、家計のどこが問題なのでしょうか?」。

■今回の相談
「贅沢も無駄遣いもしていません。それでも貯蓄が増えないのは、家計のどこが問題なのでしょうか?」

  • 貯蓄が増えない理由は?

相談者プロフィール
R・Kさん
静岡県在住/女性/30歳/パート/賃貸住宅/家族は夫(30歳、会社員)、長女(4歳、保育園)
■収入
給与・夫(手取り)22万5,000円、給与・妻(手取り)6万5,000円、児童手当1万円、ボーナス(年間手取り)55万円 月額合計30万円
■月間支出
家賃8万3,000円、食費4万5,000円、教育費2万7,000円、車両費(駐車場代、ガソリン代、保険料など)1万8,000円、通信費(携帯・スマホ代、プロバイダー料金、有料テレビ代など)1万9,000円、家族の小遣い3万5,000円、交際費・娯楽費2万円、保険料2万2,000円、雑費2万5,000円 合計29万4,000円
■貯蓄/運用
普通預金15万円、定期預金120万円(ボーナス年間20万円積立) 合計135万円
■保険料の内訳
【夫】定期(死亡2,000万円、保険期間10年)=保険料3,280円、共済(病気死亡400万円、入院4500円)=保険料2,000円、がん(終身、入院1万円)=保険料2,810円
【妻】共済(病気死亡400万円、入院4,500円、がん特約)=保険料3,000円
【長女】学資保険(18歳満期、満期金200万円)=1万1,000円

貯蓄が増えないのが悩み

相談者: 「貯蓄が増えないことに悩んでいます。毎月、ほぼ収支がトントンで、赤字になる月も少なくありません。昨年から私もパートを始めたのですが、娘の保育園費用などがあり、結局、家計は改善されていません。

ただ、さほど贅沢しているとも、無駄遣いをしていると思えないのです。食費もとくに高いものは買っていませんし、外食も月1回程度です。クルマが2台あったため、昨年、1台を手放し、夫は通勤をクルマから自転車に変えたくらいです。

35歳くらいまでには住宅も購入したいし、娘の教育費もこのままでは不安です。家計をどう改善すればいいでしょうか?」

貯まらない理由は「使っているから」

FP: 「ボーナスから年間20万円は貯蓄されるということですが、残りはどのような支出内容でしょうか?」

相談者: 「クルマの税金と保険の年払い、車検費用。あとは生活費の赤字補てんといったところでしょうか。それと年に1回、近場ですが旅行はしているのでその費用ですね」

FP: 「クルマを1台手放したということで、その車両費コストは大きく減ったのでは」

相談者: 「半減したと思います。夫の職場が自転車で30分の距離なので、思い切って半年前に切り替えました。雨の日は、私が行けるときはクルマで送るか、無理なときは文句を言いながらもカッパ着て自転車で行っていますね。ともあれ、運動しているせいで、夫がどんどんスマートになってきまして。そこだけはうらやましいです(笑)。今は体脂肪率10%くらいですから」

FP: 「それはアスリート並みですね(笑)。それと、交際費・娯楽費の2万円ですが、主にどのようなものに支出しているのでしょうか?」

相談者: 「その月によって違いますが、先月は母親の誕生日プレゼントを買って、あと娘の友達の誕生会、私のパート先の職場仲間の送別会と何かとイベントがありました」

FP: 「雑費の2万5,000円の中身はどうでしょうか?」

相談者: 「生活雑貨やドラッグストアでの買い物、コンビニでちょっと買ったりするものもこれに入れている気がします」

FP: 「なるほど。なぜ貯まらないかということですが、答えは簡単です。収入分だけ支出もしているからです。貯蓄目標を立て、支出内容を見直し、そのためには月いくらに生活費を抑えるべきか。その予算どおりに家計管理していくという、いわば家計の基本を実践することが大切です」

家計を見直し、具体的な貯蓄目標を立てる

FP: 「収入も平均的で、さほど贅沢はしていない。もちろん、大きなローンも抱えていない。それなのになぜか貯まらない。そういった悩みがある場合、往々にして「本人が意識していない支出」が要因となっています。ひとつひとつは大きな支出でなくても、それが集まればまとまった額になるということです。

R・Kさんの例を見てみましょう。目立って大きな支出は確かにありません。しかし、総じてどの費目も少しずつ高めで、逆に工夫して抑えていると思えるような費目が見当たりません。

たとえば、交際・娯楽費。貯蓄できない状態ならば、自分の親の誕生日や母の日などは「今、貯めたいので」と伝え、カードだけにする。上手くメリハリをつければ全体的に抑えられるはすです。

雑費にしても、年間にしたら30万円にもなります。何を買ったか覚えていない、いわゆる「使途不明金」が含まれているかどうかのチェックは必要でしょう。中身がわかることで、さほど必要ではない支出が見えてくるからです。

家計の見直しと同時に、貯蓄目的と目標額を設定します。節約を強いる貯蓄は決して楽しいものではありません。したがって、夫婦や家族で今後のライフプランを話し合い、「何のために」「いつまでに」「いくら」貯めるのかを考える。具体的な目標モチベーションが大切です。

仮に、5年後の住宅購入のために頭金500万円貯めるとしましょう。そのためには年間100万円貯めなくてはなりません。ボーナスで 年間40万円貯めても、毎月5万円が必要です。 しかし、それがきびしいなら、しばらくは月2万円でも3万円でもいい。お子さんが小学校に入学すれば教育費はグッと下がりますから、その後は月5万円も可能になるはず。結果、5年後に500万円に届かなくても、それに近い額が貯められればいいと考えてください。家計を見直し、無駄を省き、その中で貯蓄も継続的に続ける。そういう習慣ができたことに大きな意味があるのです」

節約の意識があまりなかった

相談者: 「貯蓄に頑張れる気がしてきました。

贅沢とはまったく無縁の生活をしていたと思っていました。でも、指摘されたとおり、節約の意識もあまりなかったと思います。コンビニで何の抵抗もなく、スナック類やデザートを買っていましたし……。

実はマイホームは半ばあきらめていましたのですが、具体的に貯蓄目標を立ててみると実現できそう気がしてきました。今後は、夫にだけ節約をさせるのではなく私自身、努力や工夫して、貯蓄できるよう頑張らないといけませんね」

著者プロフィール: 日本FP協会

ファイナンシャル・プランニングの普及とその担い手であるFPの養成・認証を通じて、社会教育の推進を図る日本最大級のNPO法人(特定非営利活動法人)。くらしとお金に関する無料セミナーや相談会の開催、各世代・ライフステージに合わせた冊子の提供等、生活者一人ひとりのより豊かで実り多い明日に貢献することを目指している。
■日本FP協会

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