「お金を貯めたいのになかなか思うようにいかない」「生活費を使い過ぎてしまい、いざという時に困る」ということはありませんか。その場合、家計の見直しと同時に、預金口座の使い分けを検討した方がいいかもしれません。口座を役割ごとに分けておくと、お金が自然と貯まる仕組みを作ることができ、生活費の使い過ぎも防止できます。今回は、銀行口座の使い分けについて解説していきます。

お金の管理に必要な口座の種類とは

給料が振り込まれたら、そのお金をひとつの口座で管理している人は多いのではないでしょうか。生活費、貯金、そして冠婚葬祭の費用など不定期に発生する費用を一緒くたにしてしまうと、計画通りにお金を貯めることは難しくなります。

特に、「お金はあるだけ使ってしまう」タイプの人は、給料日前には口座残高がギリギリになり、貯金どころか大きめの出費があった時にはお金が足りないという事態にもなりかねません。「給料が少ないから貯金は無理」と思っている人もいますが、実は、口座を分けて用途別に管理すれば、生活費をやりくりした上でしっかり貯めることができるのです。

そのためには、口座は「生活費口座」「貯金口座」「予備費口座」の3つに分けるようにしましょう。給料が振り込まれたら、貯金するお金と予備費は別の口座に分けてしまえば、お金を使い過ぎて貯金ができない、必要な時に足りないという事態を防ぐことができます。とても単純で簡単な方法ですが、実際にやってみると、自然にお金が貯まり、思わぬ出費がかさんだ時に慌てることもなくなりますよ。

生活費口座、貯金口座、予備費口座それぞれの役割

<生活費口座>
生活費口座は、その名の通り生活費を管理する口座です。水道光熱費など公共料金の引き落としや、食費や日用品など日々の買い物に使うお金はこの口座を利用します。生活費はクレジットカードで支払っているという場合も、この口座に引き落としを統一できると管理が楽になります。基本的には、給与口座をそのまま生活費口座として使います。

生活費口座とその他の口座を分けると、生活費としていくら使ってよいのかが明確になりますし、「貯金分やいざという時のお金を余らせるように生活費をやりくりする」必要がなくなります。いつも貯金ができないという人の多くは、生活費としてお金を使いながら貯める分を残そうとしますが、そうしたやり方を断ち切ることが重要です。あとは生活費の中でやりくりすれば、お金を使い切ったとしても貯金や予備費をしっかり残すことができるのです。

<貯金口座>
貯金する分のお金は、「生活費の余りを貯めていく」方法では思うように増えません。そこで、生活費として使ってしまう前に、貯金用の口座にあらかじめお金を移してしまうことが大切です。

給料が振り込まれたら、天引きで貯金口座にお金を移動させる仕組みを利用しましょう。これなら、毎月自動的に貯金ができます。貯金分のお金は始めからないものとして生活費の範囲でやりくりすれば、貯めるお金を残さなければいけないストレスを感じることもありません。計画的に貯金をするなら、この「先取り貯金」を必ず実践しましょう。

<予備費口座>
予備費口座の役割は、あらかじめ把握できる大きめの出費や不定期に発生する出費に備えることです。例えば、住宅を取得している人は毎月のローン返済以外にも固定資産税の支払がありますし、保険料を年払いにしている場合は年に一度大きな出費がやってきます。毎年決まって帰省しているなら、その費用もここで準備しておくのが良いでしょう。そのほかにも、毎月の出費以外に、前もって決まっている出費があれば予備費に組み入れておきます。また、万が一の病気やケガで医療費がかさんだ時や、冠婚葬祭の費用など、不定期に発生する出費はまさに「予備費」として備えておくべきお金です。

これらの費用を貯金から切り崩しているという人も多いですが、それでは特定の目的のためのお金がなかなか貯められないという事態になりかねません。予測できる範囲の出費は、別途予備費としておくのが賢明でしょう。

予備費は、毎月の給料やボーナスの一部から一定額を貯めていきましょう。不定期に発生する出費としては、「少なくとも〇万円は常備しておく」と決めておくのがオススメです。初めのうちは目安がわからないものですが、その場合は大まかに10万円程度としておきましょう。生活費に余りが生じたら予備費口座へ移しておき、反対に、「今月は生活費が足りなそう」という時には、予備費口座から補てんすれば慌てることがありません。

使う前にお金が貯まる「先取り貯金」の方法

「先取り貯金」は、一度仕組みを作ってしまえば、毎月手間をかけることなくお金が貯まっていきます。勤め先にあれば「財形貯蓄制度」を、ない場合は金融機関の「自動積立定期預金」を活用してみましょう。これなら将来のためにコツコツとお金を貯めていくことができます。

貯金が自動的にできれば、あとは生活費口座と予備費口座の管理をすればいいだけですので、お金が貯められるうえ、負担は大きく減ります。初めは「予備費口座にお金を移すのも面倒……」と感じるかもしれませんが、「毎月〇円、ボーナス時は〇円」と金額を決めてルーティン化させてしまいましょう。

生活費のやりくりや貯金ができないことで悩んでいるなら、「お金を使わない」と強い意志を持つ前に、管理の仕組みができているかどうかをまず確認してみましょう。口座を分けずにお金の管理をするのはとても大変です。役割ごとに口座を使い分けることがお金を貯める近道です。

筆者プロフィール: 武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント

会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。FP Cafe登録FP。