久しぶりにNBAの話題をひとつ、ふたつ。
今シーズンのプレイオフが米国時間19日からスタートし、いよいよ「本番」に突入したNBA。いっぽう、プレイオフに進めなかった下位14チームの一部では早くもヘッドコーチの解任や引退といった話も出始めている。またなかには、オーナーの交代(チームの売買)がレギュラーシーズン終了とともに発表されたところもある。
今季15勝67敗と30チーム中最低の成績に終わったミルウォーキー・バックス(以下、バックス)の売却が米国時間16日に発表されたが、その値段がNBA史上過去最高となる5億5000万ドルということで、ファンやメディア関係者の間で大きな話題となっていた(売買が正式に決まるのは、今後予定されるチームオーナー会議での承認を経てから)。「売り手」のハーブ・コールは、デパートチェーンを経営する一族の跡取り。長らく連邦上院議員も務めていたというところからはいわゆる「地元の名士」と察せられるが、そんなコールが1985年(マイケル・ジョーダンNBA入りの翌年)にバックスを買った時の値段が1800万ドルだったそうで、チームの価値は約30年間で30倍以上もつり上がった計算になる。
ESPN系のGrantlandというブログを運営しているスポーツ・ジャーナリストのビル・シモンズは、ForbesのNBAチーム評価額ランキングで4億500万ドルと最下位だったバックスに、史上最高の値段が付いた理由について、【1】ここ2年ほどの間に「需要側」の状況がすっかり様変わりしたこと、【2】2011年の「労使交渉」を経て、経営(球団)側の取り分が増えたこと、そして【3】ローカル・マーケットのチームでも、人気のスーパースターを抱え、強いチームを作れば、なんとか黒字にできるようになったこと、などを挙げている。
【1】の点については、まず下記の例を並べて、チームの取引金額がここ2年ほどで跳ね上がったことを示している。
- デトロイト(2011年6月);3億2500万ドル
- フィラデルフィア(2011年10月):2億8000万ドル
- ニュー・オーリンズ(2012年6月);3億3800万ドル
- メンフィス(2012年10月):3億7700万ドル
- サクラメント(2013年5月);5億3400万ドル
- ミルウォーキー(2013年4月):5億5000万ドル
なお、上記のForbesランキングでは、ブルックリンの推定時価が7億8000万ドルとなっている。本拠地が変わり、チームも刷新されそれなりに強くなったなどの影響もあるが、現オーナーのミハイル・プロホロフが2009年に80%を取得した際の評価額が約2億5000万ドルだったから、こちらも約4年で3倍以上になった計算になる。
また、【3】の点については、主にインターネット普及の影響が大きく、以前には地元チームの試合しかテレビで放映されなかったが、最近ではネットのおかげで地理に関係なくファンが生まれるようになっているとシモンズは指摘。その証拠に、たとえばオクラホマシティ・サンダーがロサンゼルスに遠征してきた時には、試合会場でケビン・デュラントやラッセル・ウェストブルック(いずれもサンダーのスーパースター)のジャージーを着た観客をたくさん見かけるようになったとか。
一方で、ダラス・マーベリックスのオーナーであるマーク・キューバン(「Dancing with the Stars」「Shark Tank」といったリアリティ番組にも登場する名物オーナー)は、「バックスは5億5000万ドルでも安い買い物」「あと5年もすれば30チームすべてが10億ドル以上の価値を持つようになる」といった見方も示している。これにはオーナーの「ポジショントーク」的な要素も強く含まれていそうだ。
いずれにせよ、ビル・シモンズの指摘しているように「NBAのオーナー」になることが、すなわち「世界で30人しかメンバーになることを許されない、とてもエクスクルーシヴなクラブ」に入会することだという事実に間違いはない。人間のエゴが絡むと、「値段が高いかどうか」はそれほど重要ではなくなり、代わりに「買える金額かどうか」のほうが大きな問題となる、という面も多分にあるのではないだろうか。
追記1:GSウォーリアーズ、Salesforceから新アリーナ用地を購入へ
新しいアリーナの建設を予定しているNBAのゴールデンステート・ウォーリアーズ(サンフランシスコーベイエリアのチーム)が、このための用地をセールスフォース(Salesforce.com)から購入する契約がまとまったようだ。
[Warriors to Buy SF Arena Land From Salesforce - Bloomberg]
ウォーリアーズが長年本拠地としてきているのは対岸のオークランドにある「オラクル・アリーナ」。そして、新アリーナの建設計画が発表されたのはたしか2年ほど前のことだったと記憶している。
Bloombergの記事をみると、当初の予定地(Pier 30-32というフィッシャーマンズ・ワーフからもそう遠くないところ)では話がなかなかまとまらず、代わりにセールスフォースが買ったまま遊ばせておいた土地(ベイブリッジの南側にあるミッション・ベイという地区の海側)を使うことになった、といった経緯が伺える。セールスフォースのほうは、もう少し街中に近いところに立つ予定の高層オフィスビル(「Salesforce Tower」という名前の61階建てビル)に「店子」として入居する契約を結んだと今月はじめに発表したばかり(ソフトウェアもオフィスも「買って持つより、借りろ」ということか)。使途が宙に浮いた土地を新アリーナの建設地として譲渡する、というのはマーク・ベニオフ(セールスフォースCEO)にとってまさに「渡りに舟」の話だったのかも知れない。
新アリーナの建設が本決まりになるのはこれからだろうが、ことの経緯をふまえると、新アリーナの「ネーミングライツ」をセールスフォースが取得したとしても不思議はなさそう。オラクルとセールスフォースの戦いがこんなところにも波及するのかも知れない。
追記2:今年のイースターは?
今年もホワイトハウスで「イースター・エッグロール」(”Easter Egg Roll”)の催しが開かれていた(米国時間20日)。
[White House Easter Egg Roll Highlights 2014]
大きくなってしまったからなのか、昨年まで親である大統領夫妻と行動をともにしていたはずのお嬢さんたちの姿が見えない。
情報参照元
・Bucks announce sale of team - ESPN
・The World’s Most Exclusive Club - Grantland
・Why are the lowly Milwaukee Bucks worth $550 million? Soaring inequality - Vox.com
・Mark Cuban: Bucks sale a bargain - ESPN
・Mark Cuban: Mavs worth over $1B - ESPN
・Warriors Reach San Francisco Arena Deal in Move From Pier - Bloomberg
・Salesforce dominates Transbay Tower with San Francisco's biggest lease ever (Video) - BizJournal