セルゲイ・ブリンの妻、その凄すぎるバックグラウンド

Vanity Fairの記事より。左がブリン、右が不倫相手のアマンダ・ローゼンバーグ

グーグル共同創業者のセルゲイ・ブリンが社内不倫して、奥さんと別居しているという話が昨年夏の終わりに流れていたが、Vanity Fairの最新号にこの不倫・別居話の内幕を詳しく伝えた記事が掲載されている。莫大な富と才能をもってしても避けて通れなかった、ある種の災難についての話といえる。

この話の「主な登場人物」は、ブリンと奥さんのアン・ウォジッキー、ブリンの不倫相手であるアマンダ・ローゼンバーグ(「Google Glass」のマーケティング担当者)、そしてアマンダが一時付き合いながら結局袖にしたヒューゴ・バッラという元グーグル幹部の4人。

ブリンについては、すでに様々なところで書かれていると思うが、スタンフォード大学院在学中にグーグル現CEOのラリー・ペイジと同社を立ち上げ、近年は同社の秘密研究所「Google X」のパトロン兼リーダー役を務める大富豪だ。このところのグーグル株価の上昇で、個人資産は推定318億ドルに達し、世界全体でみても上位20位前後となっている。一昨年あたりからは同ラボで開発した「Google Glass」着用の写真を見かけることも増えている。会社経営のような面倒なことにはもともとあまり関心がないとされ、そのせいか人前に出ることも滅多にないといった印象があるが、数年前に中国政府からグーグルに圧力がかかった際には同市場からの撤退という思い切った選択をペイジと当時のCEOを務めていたエリック・シュミットに働きかけて、気骨のあるところを示したことなどでも知られている。

このブリンと2007年に結婚したアン・ウォジッキーのほうは、社会的には「23andMe」というバイオテクノロジー系のベンチャー企業の創業者兼経営者として知られているが、このウォジッキー一族がちょっとすごい。いわゆる「学者・教育者の一家」ということになのだろうが、父親のスタンレーはスタンフォード大学の名誉教授で物理学科の責任者、母親のエスターは地元にあるパロアルト高校の教師でクリエイティブ・コモンズ理事会の副会長も務めるジャーナリズムの専門家。さらに、長女のスーザンは長らくグーグル広告事業の責任者を務め、最近YouTubeのCEOに「配置換え」になった同社の経営幹部。ペイジとブリンがグーグル立ち上げ直後にスーザンの家のガレージを借りていたことはよく知られた話だ。さらに次女のジャネットもその分野で知られた小児科医・伝染病研究者らしい。そんなことで、昨年の春にはこの一家の功績を称えるパーティがサンフランシスコで開かれていたほどである。下掲の動画は、そのパーティの際に、AllThingsD=現Re/codeのカラ・スウィッシャーが撮影していたもの。三女の“婿”であるブリンがインタビューの冒頭部分でちょっとだけ顔を見せている。


[High-Flying Wojcickis Talk About How They Do It]


Vanity Fairの記事には、アンがイェール大学で生物学を学んだ後、ウォール街の投資銀行でアナリストとして働き始めたことを両親があまり喜ばず、そのせいで彼女が「実家に帰るといつも恥ずかしいおもいをした」といった一文があって興味深い。このユダヤ系の学者一家の価値観からすると、お金儲けよりもっと他にやるべき仕事があるだろうに……といったことだったのだろう。ブリンの両親もやはり揃って科学者、しかもロシアから人種差別(もしくは迫害)を逃れて米国に移住したユダヤ人で、家系的に決して楽な道のりではなかったから、小さな頃から倹約の大切さを教えられていたという。

そんなよく似た環境で育ち、しかもそれぞれ理系で頭のキレる2人が一緒になった。簡単にいうとアンとブリンは「似たもの同士のおしどり夫婦」ということになろう。また、アンが(買おうと思えばいくらでも買えるのに)「アート作品を集めたり、宝飾品を買い漁ったりはしなかった」とか、ブリンがシュミットに勧められてプライベートジェットを買おうとした時に、「普通の」慎ましい暮らしをよしとするアンが反対した、などというあたりからは、この夫婦の価値観が伝わってくる感じもする。

奇妙なダブル・トライアングル(三角関係)

結婚からしばらくは順調に進んでいると思われた2人の仲がギクシャクし始めたのは、ブリンがGoogle Xで開発を進めていた「Google Glass」のプロジェクトに熱中するようになってからのことだったらしい。Vanity Fairの記事では、そこに至る布石としてブリンの遺伝子にパーキンソン病の発症につながる可能性が高いDNAの変異が見つかったことを挙げている。この発見はアンの起業した23andMeというベンチャーのサービスで遺伝子の検査を受けたことがきっかけだった。これを機に、ブリンがGoogle X関連のプロジェクト(自動運転車やGoogle Glassなど)に没頭するようになった、そしてそれが結果的にアマンダとの不倫につながった……そんな流れだったようだ。遺伝子検査の結果は確かに悲劇的ではあるが、自分の人生が有限であることを自覚した男が皆、女房家族を泣かせるような真似をするわけでは当然ないから、やはりブリンの行いに同情の余地はない。

ブリンの不倫相手のアマンダは、中国人とユダヤ人の両親の間に生まれたミックスだそうで、英国の「ミドルトン姉妹(ケイトとピッパ)も通ったマールボロ・カレッジを卒業」ーー同カレッジの「年間の授業料は31,000ポンド」(500万円以上)などとDailymailにはあるから、それなりに裕福な家庭の出身なのだろう。そんなアマンダが英国拠点からシリコンバレーの本社に移動してほどなく付き合い始めたのがブラジル出身でMITを出たバッラ。バッラはグーグルを離れるまで、Android開発チームの中核メンバーの一人で、グーグルの自前タブレット「Nexus 7」発表の際にはプレゼンもしていたような立場の幹部だった。媒体によっては、Androidの生みの親とされるアンディ・ルービンに次ぐ「ナンバー2」などと書いているところもあったと記憶している。そんなバッラがシャオミ(小米)というイケイケな中国のスマートフォンメーカーの移籍する、というニュースが流れただけでもちょっとした話題になっていた(その半年くらい前にルービンがAndroid部門の責任者から降りていた、という伏線もあった)のだけれど、それとほぼ前後して「実はバッラとアマンダ、ブリンが三角関係にあった」という話がすっぱ抜かれて、一時は「バッラがこの三角関係のせいでグーグルを追われた(あるいは自分から身を退くことにした)」といった憶測も飛び交っていた。

ただし、Vanity Fairによると、バッラがシャオミへの移籍を検討し始めた当初はまだアマンダとブリンとが付き合っていること(自分が二股をかけられていたこと)に気づいておらず、バッラはアマンダに、「一緒に香港に移住しないか」と誘いさえしていたという。また、その後バッラはアマンダから「別れてくれ」と切り出されたが、その際にも理由は明かされなかった、などとある。

さて。

話が奇妙になるのはここからで、8月の末にブリンの不倫話がすっぱ抜かれ、同時にバッラの移籍がグーグルから発表された後も、ブリンとアンの関係は以前とあまり変わらず、今も別居状態こそ続いているものの別れ話などは出ていないらしい。2人は結婚前に、離婚した場合の財産分与などについて契約を交わしているので、お金の問題で離婚しないわけではない。アンとしては、2人いる娘の親権争いなどで裁判にかかわることが嫌で離婚を切り出さず、いっぽうブリンのほうにはこの二股状態(会いたいときには妻や子供たちと会える状態)を楽しんでいるところさえ見受けられるという。米ヤフーのCEOになったマリッサ・メイヤー主催のハロウィーン・パーティには家族4人でお呼ばれしていたとか。

そうなると可哀想なのはアマンダのほうで、バッラは遠くに行ってしまい、また近くにいる(仕事上では相変わらず上司・部下の関係と思われる)ブリンも、妻と別れて自分と一緒になろうとはしないものだから、何度かブリンと大げんかした挙げ句、結局ひどい鬱になってしまったらしい。今年の初めに自分のTumblrページでそのことを明らかにしていた。「身から出たサビ」とはいえ、まだ20代の女性にはちょっと荷の重すぎる火遊びだった、というところかも知れない。

またアンのほうも、亭主のパーキンソン病発症を食い止めるための新薬開発に繋がる可能性のある遺伝子の派生物の特許を手放していない、というあたりからは、いまだにブリンに未練がありそう(なんとかして助けて上げたいという気持ちがある)といった気配も伝わってくる。

前回紹介したルパート・マードックとウェンディ・デンの話が頭にあったので、このブリンたちの不倫話も、あれと似たようなものかと思って途中まで読んでいったが、いい意味で期待を裏切る展開にちょっと複雑な読後感が残った次第。

追記:ウォジッキー母の錚々たる教え子たち

アンの母親エスターが教えるパロアルト高校の卒業生のなかには、俳優・映画監督・脚本家などのマルチタレントぶりで知られるジェームズ・フランコや、NBA(現ヒューストン・ロケッツ)のジェレミー・リン、NFLのジム・ハーボー(現サンフランシスコ49ersのヘッドコーチ)、それにフォーク歌手のジョーン・バエズなどがいる。

情報参照元

O.K., Glass: Make Google Eyes - Vanity Fair

Behind Sergey Brin's affair with the face of Google Glass - The Verge

Google Co-Founder Sergey Brin and 23andMe Co-Founder Anne Wojcicki Have Split - AllThingsD

Android’s Hugo Barra Departs Google for China’s Xiaomi - AllThingsD

Google Glass marketing manager who 'had an affair with Sergey Brin' reveals she is now in treatment for depression - Daily Mail

Sergey Brin’s Search for a Parkinson’s Cure - WIRED

Inside Google's Secret Lab - Businessweek

Breaking Sad - Amanda Rosenberg (Tumblr)