今年のアカデミー賞授賞式で司会を務めたエレン・デジェネレスの「Selfie」(日本でいうところの「自撮り」)がたいそう話題を呼んでいるようだ。
日本の媒体でも下記のような記事が公開されている。
・アカデミー賞、オスカー俳優大集合の自撮り写真がすごい 230万リツイート - HuffPo JP
・ブラピ、アンジーほか総勢12人! オスカーナイトの“自撮り”がツイッター新記録 - 映画.com
・アカデミー賞の授賞式中に自撮りした写真が世界一RTされたツイートに、RT数は300万回超え - Gigazine
海の向こうでは、NYTimesのような一般紙に加え、BloombergやWall Street Journal(WSJ)あたりの経済媒体でも、この話題にあやかろうとするのかような記事が出ていた。
・Selfies, Pizza and Promoting Brands at the Oscars - NYTimes
・DeGeneres Selfie Makes Twitter, Samsung Oscar Winners - Bloomberg
・Behind the Preplanned Oscar Selfie: Samsung's Ad Strategy - WSJ
また、この自撮りに使われたスマートフォン「Galaxy Note 3」の提供元であるサムスンも「これでウハウハだろう」といった記事も見かけた。
・Ellen’s Oscars selfie now the most retweeted post ever — a huge win for Samsung - VentureBeat
さらに、「実はエレンが、テレビカメラに映る舞台上ではGalaxy端末を使っていたものの、舞台裏では(おそらく私物と思われる)iPhoneをつかってTweetしていた」といった記事さえ公開されていて、この一件をめぐる大騒ぎのほどが伝わってくる。
・Ellen Was On Stage At Oscars With Samsung, Backstage With iPhone - Marketing Land
ところで。 上掲のWSJの記事によると、サムスンは今回のアカデミー賞中継であわせて2000万ドル近い広告費を投じていたらしい。その大半はテレビCMで、1枠30秒を10枠(5分間分)購入し、その合計額が推定1800万ドル。
2月初めにあったスーパーボウル中継の広告料が「1枠400万ドル」といった話も出ていたから、それに比べると金額自体は低い気もするが、ただNYTimesの記事に出ているグラフには「スーパーボウルの視聴率が60%後半~70%に対し、アカデミー賞は30~40%の間」などとあるから、それを考えるとほぼ妥当なところといえようか。なお、今回のテレビ中継(ABC)は2005年以降で最高を記録、推定視聴者数も前年の4030万人から今回は4300万人に増加、といったニュースも出ている。
・UPDATE: Oscars Viewership Hits 10-Year High; ‘Kimmel’ Post-Oscars Special Snags Best Ever Results - Deadline
受賞式翌日に放映されたエレン・デジェネレスのトークショーには、二日酔いのケイト・ブランシェットをはじめ、助演女優賞のルピタ・ニョンゴ、助演男優賞のジャレッド・レトらが登場し、スタジオは大盛り上がり。さらに、件のselfieの撮影に使ったGalaxy端末と同じものを、観客全員にサプライズでプレゼントしたというのだから驚きだ。よほど、サムスンは受賞式での広告効果に満足できたのだろう。
いわゆる「プロダクト・プレイスメント」はいまに始まったものでもなく、サムスンだけに限っても1月のグラミー賞(あるいは昨年のMTV VIdeo Music Awardsだったか)の時に、受賞者を発表するプレゼンターが封筒の代わりにサムスンのタブレットを使っていたのを記憶している。ただ、サムスンが2009~2013年の5年間に投じたアカデミー賞関連の広告費が合計2400万ドルということで、今回投じた費用が破格のものだったことも伺える(Jay Zに500万ドル払うよりは費用対効果も大きいかもしれない)。
なお、今回のアカデミー賞授賞式では、テレビ放映中にエレンが取り寄せてブラピなどのスター連中に振る舞った「Big Mama's & Big Papa's Pizzeria」というビザ屋の紙箱にコカコーラのロゴが印刷されていて、コカコーラにとっては「無料のプロダクト・プレイスメントになった」いったことも話題になっていたらしい(今年からノンアルコール飲料の独占スポンサーになったペプシが激怒したかどうかは定かではない)。
・Oscars Pizza Stunt Hands Coke a Free Ticket to Pepsi's 'Exclusive' Night - AdAge
大きなライブイベント(スポーツ中継や音楽・映画の授賞式など)の広告料が年々上昇し続けているが、その理由としてよく挙げられているのが「視聴者数が多いこと」に加えて「CMをスキップされることが少ない」という点。大きな告知効果などが期待できる生番組だから、広告主の側でも「多少のハプニングはつきもの」というふうに鷹揚に構えてくれるのかどうか……そんなこともちょっと気になった次第。