先ごろのグラミー賞授賞式で『Same Love』のパフォーマンス&33組合同結婚式を観て以来、すっかりマックルモア&ライアン・ルイスのにわかファンになっている。


[MACKLEMORE & RYAN LEWIS - SAME LOVE feat. MARY LAMBERT (OFFICIAL VIDEO)]



[Queen Latifah GRAMMY Wedding]


あの合同結婚式のシーンは相当な反響があったらしく、WSJでは「今回のグラミー賞ではあれが圧巻だった」などという見出しのブログ記事も出ていた。

またその少し前には、グラミー賞の受賞効果について書かれた記事をBusinessWeekで見かけた。このなかには、アデルのアルバム『21』の例などが紹介されている。2011年のベストセラーアルバムだった『21』は、すでに600万枚も売れていたのに、グラミー賞授賞をきっかけに売上が1週間で73万枚まで盛り返した(授賞式の前は12万2000枚)という。また、テレビ中継の視聴者について、歴代の平均視聴者数が約2400万人(全米)で、平均年齢は42歳、などとある。つまり、ふだん流行の楽曲などとはあまり縁の無い中高年者が、グラミー賞授賞式のテレビ中継で若い人が支持するアーティストにはじめて接し、興味を持って楽曲を買ってみたりする……ということだろう(その点では紅白歌合戦に似ている)。

また今回のグラミー賞でも同じような効果があったらしい(日本国内でさえ)。

グラミー受賞作が急上昇 ダフト・パンク76位→13位 - オリコン

T-モバイルの破天荒CEOに注目

そういえば、このところシアトルに関係する情報ばかりを目にしているような気がする。

ひとつは、マイクロソフトの次期CEO選びやそれにともなうビル・ゲイツ会長の進退(もしくは新たな役回り)についてのもの。もうひとつは、やはりシアトル周辺に本社を置く、T-モバイルUSAという携帯電話会社に関する話。この会社は、ソフトバンクの孫正義社長が昨年買ったスプリントを使って、今ちょうど「なんとかして手に入れたいな……」と狙っている意中の相手だが、ただし米司法省と米連邦通信委員会が「あまりいい顔をしていない」らしく、そう簡単にはいかないといった雰囲気が濃厚である。

このT-モバイルUSAにはジョン・レジャーという名物CEOがいる。彼はまさに「破天荒」な人物。人前に出るときは必ず会社のロゴ入りTシャツを着用したり、Twitterを使って敵視するAT&T(規模ではT-モバイルの何倍も大きい)の幹部連中をからかい続けたり、あるいは競合他社のサービスを大勢の人の前で「クソ」よばわりしたり……と、お堅い携帯電話業界の経営者としては相当型破りなタイプだ。

今年の年明けには、そのレジャーがAT&T主催のパーティにうまく潜り込んだものの、すぐに見つかってつまみ出された、という話題で注目を集めていた。このイタズラについてレジャーは「パーティの目玉となっていた(シアトル出身の)メックルモア&ライアン・ルイスのライブを観たかっただけ」などとうそぶいていたらしいが、ジャケットの下には名刺代わりになったピンク色のT-モバイル Tシャツを着ていたというから、いわゆる“確信犯”であった可能性は高い。

さらにこの話には続きがある。レジャーはこのパーティの一件から半月と経たないうちに、さっそくリベンジを果たしたのだ。「T-モバイルがスポンサーになって、マックルモア&ライアン・ルイスのライブをやるぜ」と発表(実は複数ある企業スポンサーのひとつになっただけ)。しかもご丁寧に、AT&TのCEOにあてて「君の分のチケットも用意してある。AT&Tのサービスを解約してT-モバイルに乗り換えた証拠をみせてくれたら、すぐにチケットを送る」などとツイート。50歳代も半ばの、大企業のトップがやることとは到底思えないが、それも「作戦のうち」なのかもしれない。しかも肝心のT-モバイルが現在絶好調ーーあっという間にLTE網を拡げ、新規加入者も急増中といったことで、いまのところは小言を言う人もあまりいないようだ。

なお、グラミー賞授賞式の前々日にロサンゼルスで開催されたマックルモア&ライアン・ルイスのライブでは、一緒に記念撮影したりして、かなりご満悦だった様子。


[Macklemore, Ryan Lewis, John Legere at Macklemore and Ryan Lewis]



[INTERVIEW - John Legere at Macklemore and Ryan Lewis Presented By T-Mobile Live]


スーパーボウルを制したシアトル・シーホークス

ところで。

先々週末のグラミー賞授賞式に続いて、先週末にはスーパーボウル(NFLの決勝戦)が開かれ、米メディアの話題をほぼ独占していた感があった。とくに今回は、ニューヨーク開催(会場はマンハッタン中心部から10キロちょっとしか離れていないニュージャージー州イーストラザフォードのメットライフ・スタジアム)ということもあり、NYTimesあたりは例年にない力の入れようで、またジミー・ファロンあたりも毎晩Late Nightでスーパーボウル関連のネタを口にしていた。

既報の通り、今回のスーパーボウルでは、シアトル・シーホークスが対戦相手のデンバー・ブロンコスを大差で破り、1976年のチーム創設以来初めてチャンピオンの座についた。そして、試合後に行われた優勝杯(Vince Lombardi Trophy)の授与式では、チームのオーナーであるポール・アレンが、選手や監督らとともに壇上に上がっていた(ウェブで検索すると、トロフィーを高々と掲げたアレンの写真も見つかる)。

このポール・アレンが、ビル・ゲイツとともにマイクロソフトを立ち上げた人物で、やはり今期絶好調のNBAポートランド・ブレイザーズのオーナーでもあり、かつまたシアトルに「EMP Museum」という博物館をつくってしまったほどのロック好き(とくにジミ・ヘンドリックスの大ファン)というのは「知る人ぞ知る」という類いの話かもしれない。

このポール・アレンに焦点を当てた記事が、スーパーボウルの前にNYTimesに出ていたが、それによるとアレンは滅多に人前に出てこない人物らしい。また、しっかりチームの運営を支えるものの、現場のことにはあまり口出しもしない「素晴らしいオーナー」といった選手の評価も紹介されている。

このアレン、1月半ばにあったNFC決勝戦(対サンフランシスコ49ers戦)では、シーホークスの本拠地センチュリーリンク・フィールドにある高いステージに上り、試合の開始を告げる鐘を鳴らしていた(NHK BSの中継でそのシーンが一瞬だけ映っていたが、NYTimesにもその場面をキャッチした写真が掲載されている)。そして、この試合のハーフタイムに同じステージでライブをやっていたのがマックルモア&ライアン・ルイス。YouTubeで公開されている、ライブ・ツアーの舞台裏を記録したドキュメンタリーの最後には、この日のライブや、試合後のロッカールームで選手らとともに盛り上がるマックルモアの姿を捉えた場面もある。


[MACKLEMORE & RYAN LEWIS - 2013 FALL TOUR DOCU SERIES - EP. 05 - PRES. BY BUFFALO DAVID BITTON]

にわかファンでもたっぷり楽しめるこのマックルモア&ライアン・ルイスのライブツアー・ドキュメンタリーは5本立て(Buffalo David Bitton Presentsのものが、1から5まで全部で5本ある)。とくに印象に残るのは、選曲のセンスの良さ、それにマックルモアが行く先々で、ライブ会場を本拠地とする各バスケットボール・チームのユニフォームを身に付けているところ。地元シアトル・キーアリーナでの凱旋ライブでは、往年のスーパーソニックのユニフォーム(緑と黄色のもの)を着用しているが、ただし背番号「40」の下には選手名(ショーン・ケンプ)の代わりに「Bring Em Back」とある。おそらく、失敗に終わったNBAチーム誘致(マイクロソフトのCEOを辞めるスティーブ・バルマーらが計画)活動のときにつくられたものだろう。またツアーの途中で、シーホークスの試合を観ている場面が何度も出てくる。

そのほか、トロントではNBAマイアミ・ヒートのレブロン・ジェームス、ドウェイン・ウェイドとコート上で立ち話したりーー本人曰く、試合観戦中となりの席に座っていたのが偶然にもジェームスのマネジャーだったらしいーー、キーアリーナでのライブでは、シーホークスのクォーター・バック、ラッセル・ウィルソンが楽屋に陣中見舞いに来たりと、いろいろな人気者の姿も見られて楽しめる。

なお、スーパーボウルで勝利したシーホークスの祝勝会には、マックルモアが参加してパフォーマンスを披露したほか、オーナーのアレンも自らのロックバンド("The Undertakes"=「葬儀屋」という名前らしい)とともにステージにあがり、ギターの腕前を披露していたという(リンク先の記事には、それぞれの動画がある)。

Team owner Paul Allen plays ‘big licks’ at Seahawks Super Bowl celebration party - GeekWire

また、このパーティ会場にいたシーホークスのヘッドコーチ、ピート・キャロルは「ポールアレンのバンドは、これから登場するマックルモアの『最高の前座』」などとツイートしている。

さらに、シーホークスのユニフォームに身を固め、準備万端でスーパーボウル開始を待つジョン・レジャーの自撮りも。

情報参照元

Mass Wedding of Straight and Gay Couples Steals Show at Grammy Awards - WSJ

Grammy Award Winners Cash In - BusinessWeek

Paul Allen, the Seahawks’ Man in the Shadows, Shows Them the Light - NYTimes