「結婚したい」と言いながらも、なかなか結婚できない女性を見ていて、不思議に思うことがあります。「見た目も悪くなければ、常識もあるし思いやりもあるし、性格に問題もない。色気がないかというとそんなこともない。なんでこんなに感じの良い女性が結婚できないんだろう?」

もちろん、私自身も結婚したいと思いつつできていないので、その私の観察が正しいかどうか、大いに疑わしいところではあるのですが、そういう女性にはあるひとつの共通点があるような気がしてきました。それは、彼女たちがみんな、学生時代は「真面目な優等生」だった、ということです。

真面目な人は恋愛が苦手?

私自身もそうなのですが、子供の頃は親の言うことを聞く「いい子」でした。そういう子供は親にホメられたくて勉強しますし、言いつけを真面目に守ります。

しかし、男女のあれこれについては、親は教えるどころかむしろ禁止してくるのが普通です。「日が暮れる前には帰ってきなさい」「誰と電話してるんだ、いい加減にしろ」など、男女交際を禁止するような家のルールもありますし、もちろんテレビでベッドシーンが流れようものならチャンネルを変えられます。そんな生活の中で、得られる情報といえば少女マンガの中のドリーム全開の男女交際像か、もしくは逆に、父親が隠し持っているエロ全開のエロ本……。

本来なら、学生時代に友達とのコミュニケーションの中で、自然に自分の恋愛感情や、それを表現する方法を身につけていくはずなのに、ファンタジーばかりを摂取して現実のコミュニケーション能力が身につかないのです。中学時代は「高校受験でそれどころじゃない」、高校時代は「大学受験でそれどころじゃない」と塾や予備校に通っていた人間が、晴れて大学生になって「さぁいざ恋愛しよう!」と思っても、中高で恋愛修行を積んできた人たちとの間には、もう埋められないほどの恋愛力の格差ができあがっているのです。

恋愛をする能力とは、意図してルールを乗り越え、一線を乗り越える能力でもあります。真面目に優等生をやってきた人間には、この「コミュニケーションで一線を越える」ことが、非常に難しい。もちろん、もういい大人ですから「学生時代がああだったせいで、私は結婚できないんだ」なんて嘆いてるヒマなんかありません。自分でどうにかするしかないのです。

恋愛の猛者たちの中で、いまさら初陣をやるのは大変なことです。でも、「したい」という気持ちがあるのなら、それは勇気を振り絞って「してみる」べきなのです。真面目な優等生だった人には、いままでさぼってきた「恋愛」や「異性とのコミュニケーション」という科目は非常に難しいものに見えるかもしれませんが、他の科目と同様、学ばなければ伸びないのです。

他の科目とは違い、相手のあることですから、思いやりを忘れず、良い関係を築けるように、大事にひとつずつ学んでいけるといいな、と思います。

<著者プロフィール>
雨宮まみ
ライター。いわゆる男性向けエロ本の編集を経て、フリーのライターに。その「ちょっと普通じゃない曲がりくねった女道」を書いた自伝エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を昨年上梓。恋愛や女であることと素直に向き合えない「女子の自意識」をテーマに『音楽と人』『POPEYE』などで連載中。

イラスト: 野出木彩