リストラや倒産などの会社都合で会社を辞める場合、自己都合に比べてさまざまな優遇措置が利用できます。公的支援を最大限に活かすための5つの法則を紹介します。

(1)離職理由にこだわる

会社をやめるとき、勤務先から「雇用保険被保険者離職者票-2(以下、離職票)」という書類をもらいます。この書類には離職理由が書かれているのですが、この内容によって雇用保険の基本手当(以下、失業手当)が支給されるタイミングや給付日数に違いが生じます。実態通りの内容になっているか必ずチェックしましょう。

離職票に書かれている離職理由は大きく分けると、次の4つです。

  1. 事業所の倒産等によるもの

  2. 定年、労働契約期間満了等によるもの

  3. 事業主の働きかけによるもの

  4. 労働者の判断によるもの

  5. その他

チェックポイントは、離職理由が特定受給資格者の対象(いわゆる会社都合)になっているかです。

3の「事業主の働きかけによるもの」の「(1)解雇(重責解雇を除く)」または「(3)希望退職の募集又は退職勧奨」にチェックが付いていれば、会社都合に該当するので問題なし。特定受給資格者となり、自己都合離職の際に設けてある給付制限期間(最長3カ月)がなくなります。7日間の待機期間ののちに給付が開始され、さらに給付日数も長くなる可能性が高いというオマケ付きです。

たとえば、雇用保険の被保険者期間10年未満の給付日数はすべての年齢で90日ですが、特定受給者の場合、被保険者期間5年以上なら30歳未満で120日、30歳以上45歳未満なら180日、45歳以上60歳未満なら240日になります。

早期退職優遇制度で辞める場合は要注意です。2の「定年、労働契約期間満了等によるもの」の「(4)早期退職優遇制度、選択定年制度等により離職」にチェックが入っていると、特定受給資格者にならないことがあります。そんなときのために、会社が配った資料類はすべて保存しておくこと。離職票で上記2-(4)にチェックが入っていたとしても、リストラされたことがわかる資料(退職勧奨時に配布された資料など)をハローワークに提出することによって、ひっくり返ることがあります(※上司とのやりとりを無断で録音するなどの行為はやりすぎです。プライバシー侵害として、逆に訴えられることにもなりかねません)。

(2)離職のタイミングにこだわる

退職金を少しでも多くもらいたいなら、離職時期にもこだわること。タイミングが数日違うだけで、退職金の手取り額や失業手当の給付日数に差が生じる場合があるからです。

会社の中には「在職期間3年未満の退職金は支払わない」などの退職金規定を設けていることがあります。就業規則、退職勧奨時に配布される資料、自身の入社日などをチェックして、慎重に離職日を決めましょう。

また、在職期間が20年か20年1日かで退職金にかかる税金も変わります。退職金1000万円の場合、20年だと14万円の税金(所得税+住民税)がかかりますが、20年を1日過ぎて退職するだけで税金は9万1000円に下がり、約5万円手取りが増えることになります。離職時期を決める前にぜひ確認しておきましょう。

失業手当は雇用保険の被保険者期間が6カ月、1年、3年、5年、10年、20年の節目に近い場合は要注意です。給付日数を設定する節目となっているので、1日でも足りないと失業手当を受けられる期間が少なくなるおそれがあります。被保険者期間は人事部に確認すればわかることです。もしや…と、思ったら、ちゃんと確認してくださいね。

なお、退職勧奨から30日経過する前に解雇された場合は給与の30日分以上を「解雇予告手当」として請求できます。労働基準法第20条(解雇の予告)で「解雇は30日前までに予告するか、もしくは、給与の30日分以上の解雇予告手当を支払わなくてはならない」と定められているからです。ただし、日雇いや2カ月以内の短期契約、季節労働者などの場合は対象外となっています。所轄の労働基準監督署に確認した上で主張しましょう。

(3)離職前の給与にこだわる

失業手当の給付日額は退職前の日割り給与に50~80%(60歳~64歳については45~80%)を乗じて算出します(年齢による上限あり)。このときの賃金は「離職日前1年間のうち最後の6カ月間に支払われた賃金総額(賞与を除く)×1/180」になります。退職勧奨の面談の際に、離職前の給与について確認しておくと安心です。

(4)離職したら、すぐに手続きを

失業手当にはタイムリミットがあります。原則として、離職した日の翌日から1年間です。手続きが遅れると給付日数が短くなることがあります。「少し羽をのばしてからハローワークに行こう!」なんて思わずに、早め早めの手続きを心掛けましょう。

(5)再就職の入社日に気を付ける

雇用保険には早期の再就職を支援するために「再就職手当」などの就業促進給付があります。しかし、給付に所定の要件があるため、入社日の設定次第では手当がもらえないことも。再就職先での入社日は手当を意識して決定しましょう。

再就職手当とは、いわゆる再就職の祝い金で、失業手当の給付日数を所定の日数以上残した状態で安定した職業に再就職した場合に、雇用保険から支給される一時金です。支給額は「所定給付日数の支給残日数×給付率×失業手当日額(上限あり。60歳未満は5,870円、60歳以上65歳未満は4,756円)」で計算します。

給付率は失業手当の支給残日数が2/3以上であれば60%。一方、1/3以上2/3未満は50%で、1/3未満だと0%でまったくもらえません。7日間の待機期間中に就職先が決まった場合も支給されません。失業手当の給付は再就職先に入社する前日までが対象になります。入社日が再就職手当の給付率を左右する節目に近い場合は、再就職先に相談してみるといいですね。

(※すべての数値は2012年10月13日現在のものです)

執筆者プロフィール : 柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき)

財布にやさしく、家計に役立つ知恵を発信するファイナンシャル・プランナー(CFP(R)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/株式会社家計アイデア工房 代表取締役)。毎日感謝をモットーに、お客様のわくわく生活を全力でサポートしている。得意技は社会資源と各種シミュレーションを駆使したアドバイス。著書には『人生の引継ぎを考える方にアドバイスしたい70のこと(きんざい)』、『書き込み式 老後のお金の『どうしよう?』が解決できる本(講談社)』などがある。

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