前回は当座貸越について説明いたしました。今回は第4回で取り上げた保証協会付き融資について深掘りいたします。

  • 保証協会付き融資

保証協会付き融資の特徴

以前に書いた内容の繰り返しになりますが、保証協会付き融資は信用保証協会と金融機関の二者が協力する形態の融資です。信用保証協会は、借り手が返済不能となった場合に借り手に代わって資金を立て替え、貸し手に返済します。立て替え後に、借り手は信用保証協会に対して資金を返済していく仕組みです。

信用保証協会を利用するためには、金融機関へ支払う利子とは別に、信用保証料を支払います。保険の世界でいう再保険料の位置付けです。信用保証料の水準は、信用保証協会の審査によって決まります。信用保証料は原則として全額前払いですが、事前の承認を前提とした分納制度もあります。例として東京都で責任共有保証制度を利用する場合、平成30年度は保証金額に対して0.30%から1.90%までの範囲の料率を掛けて信用保険料を算出します。

融資条件面での特徴は、経営者の個人保証が求められることと、先述の通り信用保証料を支払うことが挙げられます。変動金利か固定金利かを選択することができますし、若干ではありますが、制度融資と比較して借り手の裁量の幅がある融資といえます。保証にも種類があり、例として東京信用保証協会のメニューを辿っていくと様々な制度があることがわかります。

分割返済の融資に対応する制度が多いですが、「長期一括連携保証制度」のように最長10年の融資期間で一括返済に対応するもの、「極度枠設定」のように当座貸越に対応するもの、「特定社債保証制度」のように私募債(社債)に対応するものもあります。

信用保証を取り扱う金融機関と保証金額

日本政策金融公庫Webサイトの「中小企業信用保険制度の概要(令和元年7月16日現在)」と、関沢正彦監修の「信用保証協会の保証【第5版】」(一般社団法人金融財政事情研究会、2015)を参照しながら情報を整理いたしますと、まず、信用保証を取り扱う金融機関は下記の通りとなります。

銀行、信用金庫、労働金庫、信用協同組合、農業協同組合、水産業協同組合(各連合会を含む)、農林中央金庫、商工組合中央金庫、日本政策投資銀行、保険会社および信託会社

ポイントとしては、日本政策金融公庫が含まれていないことが挙げられます。日本政策金融公庫は、信用保険制度を通じて再保険の形態で信用保証協会が行う信用保証制度をバックアップしています。各々の金融機関が負担しているリスクを適切に分担するために、日本政策金融公庫の融資は信用保証協会の保証を受けることができないのです。

また、中小企業者1人に対する保証金額の最高限度は信用保証協会ごとに業務方法書で定められています。一般的には保証金額の合計金額が2億8,000万円とされています。組合等の場合は4億8,000万円です。また、無担保保証は原則として8,000万円までであり、保証合計額が8,000万円を超える場合は有担保保証となります。

事業の拡大に伴い融資を繰り返し、保証協会の限度額に抵触するというケースをよく聞きます。当該事象は、例えば担保にできる不動産を保有していないために、無担保保証の上限額に抵触することに起因します。黒字を確保しながら経営の安定のために2カ月分の費用として8,000万円を融資で調達して賄う場合、おおよそ売上高5億円の事業規模がひとつの目安となります。売上高が5億円に到達する前にプロパー融資を申し込み、保証協会の限度額を超えて資金調達できるように準備するとよいでしょう。

信用保証を利用できる中小企業者

信用保証を利用できる中小企業者には条件があります。

(1)中小企業信用保険法に定める「中小企業者」であること。
(2)信用保証協会の定める適格業種を営んでいること。
(3)原則として各信用保証協会の区域内に事業所(個人事業主の場合は、住居または事業所)を有し、事業を営んでいること。

中小企業信用保険法に定める「中小企業者」は、資本の額、出資の総額または常時使用する従業員の数のいずれかが、次の要件を満たしていることが必要とされています。

(a)サービス業:資本金5,000万円以下、または従業員100人以下
(b)小売業等:資本金5,000万円以下、または従業員50人以下
(c)卸売業:資本金1億円以下、または従業員100人以下
(d)製造業、鉱業、運送業、建設業等:資本金3億円以下、または従業員300人以下
(e)医療法人等:従業員300人以下
(f)次の業種については特例措置が講じられています。
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く):資本金3億円以下、または従業員900人以下
ソフトウェア業:資本金3億円以下、または従業員300人以下
情報処理サービス業:資本金3億円以下、または従業員300人以下
旅館業:資本金5,000億円以下、または従業員200人以下

中小企業信用保険法における「従業員」とは、常時使用する従業員を指し、経営の維持のために通年雇用しているアルバイトやパートタイマーも含まれます。役員や繁忙期のみ雇用されるアルバイトは含まれません。

信用保証の対象外となる業種があり、農業、林業(一部例外あり)、漁業、金融保険業(一部例外あり)が含まれます。申し込みの際に許認可証の確認が必要となる業種があり、各信用保証協会のWebサイト等に掲載されています。

保証付き融資(保証協会付き融資)についての説明は以上です。次回は第11回で紹介した、融資以外のデットファイナンスの選択肢について内容を補足いたします。

※写真と本文は関係ありません

執筆者プロフィール:千保 理(せんぼ ただし)

株式会社情報基盤開発CFO(最高財務責任者)

ロンドン日本人学校中学部、東京学芸大学教育学部附属高等学校、東京大学経済学部経済学科を経て、東京大学大学院経済学研究科修士課程企業・市場専攻修了。専門は企業金融(コーポレート・ファイナンス)。生命保険会社のシステム子会社にて勤務した後、東京大学発IT系ベンチャー企業である株式会社情報基盤開発にCFOとして参画。財務と広報を兼務し、融資を受けた金融機関向けに経営状況を伝えるデットIR(Investor Relations)と、報道機関を介して社会全体へ情報発信するPR(Public Relations)を担う。Microsoft Innovation Award 2015にて、株式会社情報基盤開発のデータ入力業務支援ソフトウェアAltPaperが優秀賞を受賞した際のプレゼンター。未上場企業の融資による資金調達を得意としており、弥生株式会社やベンチャーキャピタルが主催する起業家向けの財務経理セミナーの講師を務めている。著書(共著)に千保理・滝琢磨・辻岡将基『~事業拡大・設備投資・運転資金の着実な調達~ベンチャー企業が融資を受けるための法務と実務』(第一法規、2019)がある。