前回は、融資の概要について出資と比較しながら説明しました。今回は、融資の商品としての特徴に着目します。融資を商品として考える場合、商流を意識します。サービスの提供者である貸し手とサービスの需要者である借り手が、誰を介在させて取引するのかがポイントです。介在するプレイヤーの種類によって融資条件がどのように変化するのか、解説していきます。

融資は関与するプレイヤーの種類によって分類することができ、大別すると4つに分かれます。(1) 制度融資、(2) 保証付き融資(保証協会保証付き融資)、(3) プロパー融資、(4) 資本性ローンです。各々について詳しく見ていきましょう。

(1) 制度融資

地方自治体をはじめとした公官庁と、信用保証協会と、金融機関の三者が協力する形態の融資です。政策的な意味合いが含まれ、特定の業種が優遇されるプランがあるほか、経営再建のために利用できるコースもあり、使い勝手が良いです。優遇の形態として、利子補給や信用保証料の減免があり、助成金のような側面があります。実例を見てみましょう。

筆者の勤務先がある東京都文京区の平成29年度の「創業特例」は、5年を超えて借りる場合に利率1.7%、利子補給1.7%、実質金利0%で最大1,000万円まで融資を受けられる制度です。融資の契約通り毎月利子を金融機関へ支払えば、3カ月に1回、支払済みの利子に相当する金額を文京区から受け取ることができます。

(ご参考:文京区Webサイト内「融資一覧」)

制度は国レベル・都道府県レベル・市区町村レベルで、それぞれ用意されています。筆者の経験をもとに紹介しますと、国レベルの代表例が中小企業技術革新制度(SBIR制度)、都道府県レベルの代表例が東京都中小企業制度融資、市区町村レベルの代表例が先述した東京都文京区の融資あっせんです。各々の詳細についてはWebサイトやパンフレットで知ることができます。

繰り返しになりますが、プレイヤーとして公官庁・信用保証協会・金融機関が存在します。公官庁側の審査の実務は商工会議所が担うケースがあります。融資を申し込もうとしている企業に融資の相談ができる金融機関がない場合は、商工会議所へ依頼すれば日本政策金融公庫につないでいただけます。日本政策金融公庫以外の金融機関を利用したい場合は、自力で探します。

融資条件面での特徴としては、金利水準があらかじめ指定されていること、制度毎に上限金額が定まっていること、経営者の個人保証が求められること、信用保証料を支払うことが挙げられます。

(2) 保証付き融資

信用保証協会と金融機関の二者が協力する形態の融資です。信用保証協会は、借り手が返済不能となった場合に借り手に代わって資金を立て替え、貸し手に返済します。立て替え後に、借り手は信用保証協会に対して資金を返済していく仕組みです。信用保証協会を利用するためには、金融機関へ支払う利子とは別に、信用保証料を支払います。信用保証料の水準は、信用保証協会の審査によって決まります。

融資条件面での特徴は、経営者の個人保証が求められることと、先述の通り信用保証料を支払うことが挙げられます。変動金利か固定金利かを選択することができますし、若干ではありますが制度融資と比較して借り手の裁量の幅がある融資といえます。

(3) プロパー融資

金融機関が単独で実行する形態の融資です。貸し手と借り手の双方の合意が必要ですが、条件面は柔軟に設計することができます。交渉次第で経営者(役員)の個人保証を外すこともできますが、貸し手側のリスク負担が大きくなることを理解する必要があり、たいていは借り手側が金利面で譲歩してバランスを取ることになります。

制度融資や保証付き融資と異なり、信用保証料が不要です。借り手の負担するコストが低くなることは、借り手の信用力が高まったことを意味します。よくある企業成長のストーリーとして、まずは制度融資から取引を始め、実績を積んでプロパー融資を目指すという絵を描くことができます。

(4) 資本性ローン

先述の3種類の融資と比較して、特異な特徴を持ちます。無担保・無保証・長期一括返済という、破格の条件の融資です。金利も業績に応じて年に1回変更され、業績が悪い年は低利、業績が好調な年は高利となります。繰り上げ返済ができないことはデメリットです。経理上は借入金の勘定科目に振り分けますが、金融検査上は自己資本とみなすルールがありますので、他の融資と比較して追加融資を受けやすい点も魅力的です。

日本政策金融公庫が貸し手となる制度で、国民生活事業と中小企業事業の双方で利用することができます。好条件での融資を受けることになるため審査には高いハードルがあり、事業の新規性や商品・サービスの競争力等について、詳細な説明が求められます。特に事業の新規性については、貸し手と借り手以外の第三者の視点から示さなければなりません。例えば特許を取得している、ベンチャーキャピタルから出資を受けている等の実績(傍証)が必要となります。

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融資の商品による違いの説明は以上です。次回は貸し手である金融機関について、分類しながら解説します。

※写真と本文は関係ありません

執筆者プロフィール:千保 理(せんぼ ただし)

株式会社情報基盤開発 CFO(最高財務責任者)

ロンドン日本人学校中学部、東京学芸大学教育学部附属高等学校、東京大学運動会バドミントン部を経て、東京大学大学院経済学研究科修士課程企業・市場専攻修了。専門は企業金融(コーポレート・ファイナンス)。生命保険会社のシステム子会社にて勤務した後、東京大学発IT系ベンチャー企業である株式会社情報基盤開発にCFOとして参画。Microsoft Innovation Award 2015にて勤務先が優秀賞を受賞した際のプレゼンター。融資による資金調達を得意としている。