『デスノート』『デスノート the Last name』(06年)、スピンオフ作『L change the WorLd』(08年)で大成功を収めた実写『デスノート』シリーズ。誕生から10年の時を経て、映画『デスノート Light up the NEW world』(10月29日公開)で、まさかの続編として復活を遂げる。果たして、その"最終ページ"には一体何が書き込まれたのか。

マイナビニュースでは「独占スクープ 映画『デスノート』の最終ページ」と銘打ち、すべての作品を企画・プロデュースしてきた日本テレビ・佐藤貴博プロデューサーの「今だから語れる」証言を中心に、全20回にわたってその歴史を掘り下げていく。インタビューは合計約5時間、4万字近くにも及んだ。第4回は「ストーリー展開」にまつわる秘話。

――俳優陣の役作りと共に、ストーリー展開を評価する声もあります。

「主演・藤原竜也」は決まっていて、金子修介監督と脚本・大石哲也さんとの本格的な脚本作りを始められたのが、2005年11月下旬頃。前編を「夜神月とLの対峙」まで、後編を「両者の決着」とすることと、二部作ではあるけれど、どちらにも事件の展開と盛り上がりとクライマックスを作り、前編、後編それぞれどちらもひとつの作品としても楽しんでもらえることを目指しました。

――原作のヨツバグループやニア・メロを映画に入れなかった理由は? 2部作であれば、採用する選択肢もあったのではないかと。

ドラマからスタートするプランではどちらも入れるつもりでしたが、映画2部作で完結させるとなった段階で、月とLの激突を主軸にしたいと、集英社さんを通じて、原作者の大場つぐみ先生にお願いして、ご了承いただきました。

――後編の結末も最初から考えていたんですか?

考えていません(笑)。「Lで決着させる」と決めていましたが、ギリギリのスケジュールだったので、前編撮影前には、前編の脚本で精一杯。決着のトリックや、弥海砂(戸田恵梨香)をどのように活躍させるかの具体案は間に合っていませんでした。

――夜神月は、原作では2人目の標的としてコンビニ前で強引にナンパしていた男・渋井丸拓男を実験台に「試し書き」をします。ところが映画では、一度はノートを手放そうとしたものの、無罪放免となった凶悪犯に強い憎しみを抱き、正義感のもとで犯人の名前を書き込みます。この違いは?

僕としては原作のまま「退屈な天才がたまたま手にしたデスノート」という始まりにしたかったのですが、金子修介監督は違った。金子監督としては、映画という短いスパンでは主人公のモチベーションに観客は感情移入出来ないとダメだと強く主張されて、月が最初から法で裁かれない犯罪者への強い憤りを持っているキャラクターになりました。そこは"金子修介のすごさ"だと思います。結果として、金子監督のアイデアは正解で、何よりも藤原竜也という俳優が持っている魅力にも合っていました。

――なるほど。後編へとどのようにつなげていったのかが気になります。

前編を撮りながら後編の脚本を作っていました。レイ・ペンバーとの地下鉄シーンは、原作の設定では山手線でしたがロケはできないので、福岡の地下鉄で撮ることに。日中、特別ダイヤにしていただいて、限られた時間の中で撮影しました。タイトなスケジュールでそんなに予算があったわけではないので、ラストシーンの美術館も福岡の流れで撮影できる北九州美術館で撮ることに。地下鉄に合わせて、ロケ地が決まっていった感じです。地下鉄と美術館シーンの間に1日だけ撮休があったので、脚本の大石哲也さんに九州まで来てもらって、そこで後編の脚本打合せを開始しました。大石さんの実家が北九州だったので、そのまま里帰りしてもらいました(笑)。

――その時点で後編の結末はどのようにイメージしていたんですか。

僕が監督と脚本家に伝えたのは、「デスノートを完全に終わらせる」。ホラー的な「恐怖は終わらない」的な終わらせ方ではなくて、「完全に」終わらせる。それと、「デスノート」だから決着のトリックは「デスノート」でなければならないこと。前編の撮影段階で原作はまだ終わっていなかったので、最終回のゲラがあがったところで、貴重なそのゲラを先に見せていただきました。そこに「リュークが夜神月の名をノートに書く」という衝撃の結末が書いてありまして、そこは絶対に踏襲しようと。しかし、原作とは違うLとの対決の中で決着させなければならないので、「デスノート」の「23日ルール」と「一度書かれたことは覆らない」というルールを使ってのLの決死の逆転策にたどり着きました。月とLのどちらかの完全勝利にはしたくなかったので、ある意味での相討ちの終着を思いつけて良かったと思っています。

――Lの本名を考えたのは、原作・原案の大場つぐみさんと聞きました。実写化に協力的だったことがうかがえます。

上記の決着を思いついた時に、原作には出てこないLの本名が必要だったので、それは大場先生にお願いしました。Lの本名を我々が決められるわけはないですから(笑)。ストーリー的にLの本名が必要なのをご理解いただき、快く本名を考えていただけました。大場先生は協力的というよりも、「映画は映画」という割り切った感じだったのではないでしょうか。ご自身の漫画への誇りや自信を持たれていると思いますので。でも、「楽しみにしています」とおっしゃっていただいたのはとてもありがたかったです。

デスノートのルールを変えない。われわれにとっての「鉄の掟」でした。そこがブレてしまうと何でもありになってしまいますので、矛盾が生じないよう細心の注意を払いました。デスノートのルールに関しては、担当編集の吉田幸司さんに厳しく詰められました(笑)。私が集英社に行って、吉田さんと二人で朝までルールの検証をして、それをそのまま寝ないで、私が脚本打合せの場に持って行って、監督、脚本家と脚本に落とし込んで練り上げていくという作業を繰り返しました。

私が法学部だったことは役に立っていたかもしれません(笑)。デスノートのルールは、死神もすべては把握していないし、また人間が知りえないものもある。そして、実際のところどのようになるかは、解釈によるところもあり、それは法律的な読み解きに近い。解釈の仕方を利用するといったことも可能なもので。

前編と後編、結末のトリックの種は私が提案したものです。デスノートでは他人の命を奪うような行動を操ることは出来ない。「拳銃で誰かを殺す」と書いても、心臓麻痺で死んでしまう。南空ナオミが「拳銃を暴発して自殺」、秋野詩織が「美術館の同時刻に事件に巻き込まれて被弾して死ぬ」。デスノートはその時の状況に合わせて、一番都合が良い死に方をするという解釈であればデスノートのルールは成立する可能性もある。大場先生に相談したら、「まぁ、そうですね(笑)」とご了解いただきました。

■プロフィール
佐藤貴博(さとう・たかひろ)
1970年4月26日生まれ。山梨県出身。1994年、日本テレビに入社。営業職を経て、2003年に念願の映画事業部に異動する。映画プロデューサーとして、『デスノート』シリーズ、『GANTZ』シリーズ、『桐島、部活やめるってよ』などヒット作話題作を数多く手がける。今年公開作品は、『デスノート Light up the NEW world』(10月29日公開)、『海賊とよばれた男』(12月10日公開)。

(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 (C)2006「DEATH NOTE」FILM PARTNERS 監督:金子修介