自動車ユーザーなら数年に一度はクリアしなければならない車検。ディーラーや工場に持ち込んで車検を受けるのが一般的だと思うが、W124乗りの私は毎回「ユーザー車検」を実施している。ちょうど今年が車検だったので、費用や当日の流れなどを詳細にレポートしてみたい。

  • メルセデス・ベンツ「W124」

    愛車のメルセデス・ベンツ「W124」(1993年式の280E)でユーザー車検に挑戦!(本稿の写真は撮影:原アキラ)

ユーザー車検とは?

走行距離が80,000kmを越えたばかりの我がW124にとって、令和5年7月は車検の時期だった。筆者は東京都国立市に住んでいるので、車検場がある「関東運輸局東京運輸支局 多摩自動車検査登録事務所」(場内は撮影不可のため写真は入り口のみ。以後、多摩陸運局)までは車でたったの5分ほど。ということで、車検は毎回「ユーザー車検」を行っている。

  • メルセデス・ベンツ「W124」
  • ドライビングクラブ「THE MAGARIGAWA CLUB」
  • コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッドが千葉県南房総市に建設した超高級会員制ドライビングクラブ「THE MAGARIGAWA CLUB」(会員価格3,600万円)の取材に向かう途中、多田良北浜海水浴場付近で撮影した愛車「W124」(右はTHE MAGARIGAWA CLUBのコース)

  • メルセデス・ベンツ「W124」

    走行距離は80,000kmを超えたところ

  • 多摩陸運局
  • 多摩陸運局
  • ユーザー車検を受けるため多摩陸運局にやってきた(右は場内図)

ユーザー車検とは、自分で整備した車を自ら車検場へ持ち込んで検査を受けること。最大のメリットは、業者に頼まないので手数料が不要になる点だ。一方で、24カ月の法定点検整備については自分で行なったり業者に頼んだり、検査後に行ったり(申告が必要)と自由な代わりに、安全面で不安がないようにしっかりと行う必要がある。受け付けは有効期間満了の1カ月前から当日まで。車検場は平日の日中しかやっていないので、その時間帯に行けない人にユーザー車検は難しいだろう。

多摩陸運局の場合、ネットで事前に開始時間(1日4ラウンド)が予約できる。不合格の場合には当日中に再挑戦できる(合計で1日3回までらしい)ので、なるべく早い時間帯に1回目を受けることをオススメする。ちなみに筆者が予約したのは9:30からの第2ラウンドだったのだけれど、少し早めの9時ごろに到着したら、そのまま受け付けてくれた。

当日の流れは?

今回の検査の流れは以下の通りだ。

  • ①まずはナンバーセンターで重量税(W124は車齢18年以上で2トン以下のため50,400円。高い!)と検査手数料2,300円を支払う。自動車検査票(検査結果を打刻するための票)と自動車税納付書には印紙を貼ってくれる。継続検査申請書もくれるのだが、これはネットでダウンロードできたので前もって記入しておいた。車検証などとともにA4のバインダーにまとめて持っていると便利だ。

  • ②次は自賠責保険の手続きと支払いだ。陸運局の斜め前の道路沿いには、昭和の時代から雰囲気が変わらない保険屋さんや代書屋さんの店舗がずらりと並んでいるので、空いているところを選んで手続きする。筆者の場合は最も近い「すみれ行政書士自事務所」でまとめてやってもらった。保険は24カ月で17,650円。検査表と納付書には代書で記入をお願いした。申請書は記入済みだったので「1,000円でいいですよ」とのこと。「ドキドキなので」と伝えると「がんばってくださいね」と励ましてくれた。

  • ③全部の書類をまとめて場内の「庁舎」へ。各窓口付近にはツナギを着た“プロ”の方々が大勢いらっしゃるので、けっこう気後れしてしまう。奥の方にある6番窓口に「ユーザー車検」の看板が出ているので、ここに先ほどの書類を提出。チェックの後、「慣れていないなら係員をつけるので、3番の検査コースに並んでください」と指示される。4台目に並んで、いよいよ検査開始だ。

  • ④検査棟に入る前には、書類との同一性や外観、灯火類のチェックが行われる。検査官の指示がよく聞こえるように窓を開けておくとよい。ヘッドライト上下、フォグ、スモール、ウインカー、ハザード、ブレーキ、リバースなどを指示通りに点灯。さらにクラクション、ウォッシャーとワイパーの拭き取りも。ボンネットを開けて型式の確認なども行われる。

  • ⑤車軸をラインに合わせてコースに侵入、まずは排ガス検査を受ける。エンジンをかけたまま車から降り、マフラーにプローブを差し込んで結果を待つ。W124は2本だしマフラーなのだが、差し込むのはどちらでもOKとのこと。○印で合格。検査票をリーダーに差し込んで打刻する(以後、項目ごとに結果の打刻を行う)。

  • ⑥次はサイドスリップ検査(アライメントのチェック)。4km/h以下でクリープ走行しながらそーっと直進する。通過中にハンドルやブレーキを操作しないように注意だ。これも合格。

  • ⑦ローラー上にタイヤを乗せてフットブレーキとサイドブレーキの検査。上方にある表示に「ゆっくりと踏む」と出たら、思いっきり奥まで踏み込むことが大切。当たり前だが、ペダルを踏み込めるようシート位置を調整しておく必要がある。結果は合格。

  • ⑧スピードメーターの検査。天井から吊り下がっているコードの先にあるボタンを手にしたあと、ローラー上でアクセルを踏み込み、メーターの針が40km/hになったらそれを押す。以前はこのタイミングでパッシングして知らせていたはず。合格。

  • ⑨同じ位置で前照灯のチェック。ライトオンにすると前方に受光の機械が出てきて、右、左のロービーム、ハイビームをチェック。合格。

  • ⑩最後は下周りの検査。中央に穴が空いた場所に車をすすめてエンジンを切る。ピットの下では検査官がオイル漏れやブッシュ類の破れなどをチェック。ハンドルを揺らされたり、カンカン、コンコンとハンマーで各部を叩いたりする音が聞こえる。合格!

付き添ってくれた検査官から「全部、合格で終わりましたよ」と声をかけられ、最後の打刻を行う。出口にある制御室に書類を持っていって合格を確認してもらい、庁舎に戻って7番窓口に提出する。「合格ですか?」と確認されてタグを渡され、その番号が呼ばれると、新しい車検証(以前のものに比べてサイズが半分以下になった)とステッカーがついに手渡される。

  • 車検証

    新しい車検証をゲット!

  • 車検クリアで受領したステッカー
  • 車検クリアで受領したステッカー
  • ステッカーは7ゾロでラッキーな感じ

車検通過で気を付けるべきことは?

表裏面を山折、谷折りで合体(これがちょっと面倒)したステッカーは、令和7年7月までと2つの7がそろってラッキーな感じ。ルームミラー裏に貼り付けて作業終了だ。今年7月からはウインドー右上でもよくなったらしいけれども、それは後で知った。ドキドキワクワクの全行程は1時間ちょっと(検査コース自体は20分ほどだった)で終了。まずはめでたしめでたし、である。

一方、残念ながら車検に不合格となった場合は、近所のテスター屋さんや整備工場で調整し直して、その日のうちに再挑戦できる。陸運局近くにある「米山自動車」で話をしてくれたのは、この道46年というベテラン整備士の内山さん。「不合格の原因として最も多いのはライト。LEDライト車は下向きで検査する際に不合格になるのが特に多いです。古いのは暗すぎるのも原因です。うちなら光軸だけでなく、ブレーキパッドやドライブシャフトのブーツ破れなどにもすぐに対応できます。ディーラーに持ち込むと時間がかかるし、費用も高いしね」とのこと。インタビュー中もひっきりなしに車が持ち込まれていて、まさにユーザー車検の駆け込み寺という雰囲気だ。

  • 米山自動車

    米山自動車さんで話を聞かせてもらった

ちなみにW124は、車検前にくだんのアイディングに持ち込み、左前のタイロッドを交換。ブーツが破れてグリスが漏れていた。さらに始動直後のエンジンストールが何度かあったので、イグニッションコイル(1個20,390円)を3個とも交換していた。

  • メルセデス・ベンツ「W124」
  • メルセデス・ベンツ「W124」
  • 左前のタイロッドを交換。ステアリングを切ると音が出ていた。右側は昨年交換済み

  • メルセデス・ベンツ「W124」
  • メルセデス・ベンツ「W124」
  • イグニッションコイルを3個とも交換

さらに、純正品ではないオーバロードリレーが付いていたので、試しに純正品に変えて様子を見ている。工賃込みで101,035円也。車検の法定費用70,350円と代書の1,000円、新調したエーモンの非常信号灯(車検対応)の722円を合計すると、今回の車検で173,107円を費やしたことになる。そういえば、エンジンオイルの交換もそろそろだった……。

  • メルセデス・ベンツ「W124」

    純正品ではないオーバロードリレーが付いていたので純正に交換してみた

さて、話は変わるけれども、最近古い自動車のプラモデルを手に入れることができた。完成前で塗装中だが、このシルエットで車名がわかるだろうか?

  • クルマのプラモデル

    このクルマは何でしょう?