投資の初心者が知っておくべきこと、勘違いしやすいことを、できるだけ平易に解説しようと思います。今回はイギリスのEU離脱問題によるポンドの影響について取り上げます。

  • イギリスのEU離脱問題、ポンドの行方は(写真:マイナビニュース)

    イギリスのEU離脱問題、ポンドの行方は

英国がEU(欧州連合)から離脱する、いわゆるブレグジット(BREXIT)の行方が引き続き不透明です。2016年6月の国民投票でブレグジットが決定してから、離脱の仕方に関して英国とEUが交渉を続け、ようやくメイ前首相とEU代表が合意に達しました。

英国は10月31日にEUを離脱するか

しかし、その「離婚」協定案を英国議会が今年に入って再三にわたり否決。6月にメイ首相が辞任し、7月にジョンソン首相が誕生しました。ジョンソン首相はEUと交渉を続ける一方、協定案の合意の有無にかかわらず、新たな期日となった10月31日(3月29日から延期)にEUを離脱すると主張しています。

一方、議会は「合意なき離脱」を阻止しようとしており、合意がない場合は離脱期日の来年1月末までの延期をEUに要請するようジョンソン首相に義務付ける法を成立させました。ただし、その法がどれだけ有効かには疑問の余地があるようです。

最終決着に3つのシナリオ

さて、ブレグジットの期日が延期される、それも長期間延期される可能性もあるものの、最終的な決着は、(1)「離婚」協定で合意して秩序ある離脱、(2)合意なき離脱、(3)離脱の撤回、のいずれかになるはずです。

「離婚」協定で合意すれば、2020年末までの移行期間が設けられており、スムーズな離脱が予想されます。他方、合意なき離脱の場合、英国とEUの従来の取り決めは即座に解消されます。貿易においても、英国はEU加盟国間の特権的な待遇を失うため、物流や医薬品などの供給に大きな障害が生じると懸念されています。

ジョンソン首相が離脱を撤回することはなさそうです。しかし、総選挙などによってブレグジットに反対する政権が誕生すれば、第2の国民投票が実施され、その結果次第で離脱は撤回されるかもしれません。EUの承認は不要で、英国が宣言すれば一方的に離脱を撤回できます。

ポンド / 円相場の行方

ブレグジットの行方が定まらないため、ポンド相場の先行きも非常に不透明です。上記のシナリオに沿って、大雑把にポンド / 円相場をイメージしてみます。

離脱の延期が続いている間は、現行の1ポンド=135円前後から大きく変わらないのではないでしょうか。一方、秩序ある離脱が決まった場合、金融市場はそれを好感してポンドは上昇するでしょう。ただ、2016年の国民投票後の高値である2018年2月の156.61円を超えるのは難しいかもしれません。

合意なき離脱の場合は、直後にポンドが10~15%下落するとの見方もあります。2011年の欧州債務危機のさなかにつけた1ポンド=116.84円の最安値を更新するのは簡単かもしれません。

離脱の撤回となれば、ポンドは大幅に上昇しそうです。2016年の国民投票前の水準である1ポンド=160円以上をつける可能性すらありそうです。

今後、ブレグジットがどんな展開となるのか、大変興味深いところです。

  • 中期的なポンド / 円のイメージ

    中期的なポンド / 円のイメージ

執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)

マネースクエア 市場調査室 チーフエコノミスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガン・スタンレー証券などを経て、 2012年にマネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。「投資家教育(アカデミア)」に力を入れている 同社のWEBサイトで多数のレポートを配信(一部は口座をお持ちの方限定で公開)する他、投資家のための動画配信サイト「M2TV」でマーケットを日々解説。