ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本連載では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

  • 仮想通貨はボーダレスな世界共通の通貨なの?

なにかと不便な海外送金

銀行や金融機関での海外送金(国際送金)は、お手軽な送金手段とは言えません。銀行によって必要書類は異なりますが、インボイス(送り状・請求書)の提出を求められることもありますし、送り主と受取人との関係の証明を求められることもあります。口座番号などさえわかれば送金(振込)ができる国内送金と比べれば、その面倒さは明らかです。

マネーロンダリングなどの悪用防止策と考えれば致し方ないのですが、頻繁に海外送金をする人にとっては不便ですよね。銀行窓口で海外送金の手続きを行う場合は、受付時間が午前中までという銀行もあります。さらに着金まで数日もかかり、送金手数料も高いです。

仮想通貨で送金すれば“速くて安い”

それではここで、銀行や金融機関での海外送金と仮想通貨を利用する送金の違いを紹介しましょう。仮想通貨の場合は、365日24時間、送金や着金が可能です。銀行のように受付時間が限定されていることはありません。好きなときに送金することができ、送金スピードは仮想通貨の種類によって異なりますが、着金までも数秒から数分で完了します。以下にその目安となる平均時間をいくつか挙げてみます。

・ビットコイン:10分
・リップル:数秒
・イーサリアム:2分
・ネム:数秒
・フュージョンコイン:数秒

送金にかかる手数料も、銀行・金融機関での海外送金に比べてお手頃です。銀行での海外送金にかかる手数料には、「送金手数料」「為替手数料」「中継銀行手数料」「受取手数料」の4つがあります。中継銀行手数料と受取手数料については、必ずしもかかるものというわけではありません。

中継銀行手数料とは、送金銀行が受取銀行と業務提携(コルレス契約)を結んでいない場合に、一旦中継銀行を通して受取銀行へ送金することになるためにかかる手数料のことです。中継銀行手数料は1,000円~というところが多いですが、送金額などによっては追加請求されることもあります。受取手数料については、送金銀行によって受取手数料を送金側が負担するか、受取側が負担するか選ぶことができるようになっています。

一方、仮想通貨での送金の場合は、そもそも国内送金と海外送金の線引きがありません。個人のウォレット(口座のようなもの)から個人のウォレットに送金する場合、かかる手数料は送金手数料くらいです。ただし、仮想通貨取引所を介して送金する場合は、取引所によっては別途手数料が発生します。

世界中で取引量が増加すると手数料が高くなることがありますが、リップル(XRP)やフュージョンコインのように、取引の認証作業者(マイナー、バリデータ等と呼ばれています)への報酬がない仮想通貨の場合は、手数料の高騰は起きにくいという特徴があります。例えば、仮想通貨の送金手数料は以下のとおりです。

・ビットコイン…0BTC~0.001BTC程度
・リップル…0.15XRP程度
・イーサリアム…0ETH~0.01ETH程度
・ネム…0.05XEM~0.5XEM程度(1.25XEMが上限)
・フュージョンコイン…送金額の0.001%
(※BTC、XRP、ETH、XEMは各仮想通貨の単位)

銀行・金融機関での海外送金だと、必要書類の提出を求められ、着金まで数日を要し、各種手数料がかかる。仮想通貨での送金だと、書類提出はなく、着金まで数秒から数分で、手数料も安い。利便性から言えば、明らかに仮想通貨に軍配が上がります。仮想通貨の信用度が世界中で高まれば、送金手段として仮想通貨を活用する機会も増えるでしょう。

世界の金融機関・決済業者との提携が進むリップル社

リップル(XRP)を発行・管理しているリップル社のシステムは、世界中の企業で採用されています。特に銀行・金融機関での導入が目立ちますが、その目的は、リップル(XRP)を使って高速かつ手数料の安い取引を実現させるためです。

日本では、メガバンクやゆうちょ銀行を含む61の銀行・金融機関がリップル(XRP)の導入を決めています。世界や日本の銀行・金融機関でリップル(XRP)を利用した送金が実現すれば、銀行での海外送金も速く安いものになるかもしれません。しかし、銀行の手数料が上乗せされるでしょうから、仮想通貨の種類によっては、やはり仮想通貨での送金が便利そうです。

海外旅行や出張にも便利な仮想通貨

仮想通貨は国境がなく、世界中で利用できるボーダレスな世界共通通貨とも言えます。決済や送金で、銀行などの金融機関を介する必要はありません。

旅行や出張で海外に行くときに、いちいち両替するのは面倒ですよね。レートを気にしたり、両替所によっては不正を行うところもありますから警戒しなければいけなかったり。バカンスであれば、両替する時間を家族とゆっくりしたり観光したりする時間に充てたいですし、忙しい出張であれば、限られた時間を有効に活用したいはずです。国境のないボーダレスな仮想通貨の普及が進めば進むほど、この問題もクリアになり、世界はより便利になるでしょう。

次回は「仮想通貨は資産保全になるのか?」についてご紹介します。

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。