ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。

本稿では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

今回のテーマは、「今でも案外多い? 仮想通貨に関する3つの勘違い」。

  • 今でも案外多い? 仮想通貨に関する3つの勘違い

「1BTC」からしか投資できない?

仮想通貨には、「通貨単位」と呼ばれる記号があります。

ビットコインはBTC、ビットコインキャッシュはBCH、イーサリアムはETH、ライトコインはLTC、フュージョンコインはXFC、リップルはXRP……などが通貨単位です。

法定通貨でも、円、ドル、ユーロなどがありますが、これと同じです。

仮想通貨投資は、株式投資に似ていると言われることがあります。会社の将来性・成長性を見極めて株の銘柄を選ぶという点が、個別の仮想通貨の将来性・成長性を見極めてコインの種類(銘柄)を選ぶことと似ているからでしょう。

そのためか、「0.5株だけ買うなんてことは株式投資ではできないから、仮想通貨も1通貨単位からじゃないと投資できないと思っていた」「1BTC買おうと思ったんだけど、資金が足りなくて買うタイミングを逃した」という勘違いを聞くことがあります。

実際には、0.001BTCからでも買うことができます。仮想通貨取引所によって、下限取引額が決まっていることもありますが、少額からでも投資を始められるのが仮想通貨投資です。

リップル(XRP)は、1XRP=20~30円だったりしますから、1BTC=80万~85万円、1BCH=2万~3万円、1ETH=2万~3万、1LTC=4000~5000円、1XFC=180~250円(いずれも2020年4月時点の価格目安)などに比べると安く感じるかもしれません。

2016~2017年の仮想通貨ブームの際、リップル(XRP)が人気だったのは、「安くみえたから」という理由もありそうです。

仮想通貨取引所は証券取引所と同じくらい社会的信用が高い?

仮想通貨取引所は、第49回の記事でご紹介したように、日本では「仮想通貨交換業者」と呼ばれ、ライセンスを得るためには金融庁の認可が必要になっています。

ただし、認可制になった後も、2018年のコインチェック、Zaif、2019年のビットポイントなどの仮想通貨取引所でハッキング事件は起きています。

そのため、「金融庁の認可を取っているから、この仮想通貨取引所は100%安心」とはまだまだ言えません。

仮想通貨は誕生してからまだ10年ほどしか経っていませんから、存在自体が草創期であるとも言えます。それに、ハッカーの世界は日進月歩。セキュリティの向上は欠かせません。

まだ発展途上にあるのが仮想通貨ですので、仮想通貨取引所も、それを監理する金融庁も、ハッキングや不正を防ぐ十分な仕組みやルールづくりができているわけではないでしょう。

そのため、「仮想通貨取引所は、証券取引所と同じくらい社会的信用がある」「金融庁から認可を受けた仮想通貨取引所で取り扱っている仮想通貨は安全」と考えるのは安易です。

海外の仮想通貨取引所であれば、ライセンスを取るという決まりがない国もありますし、マッチングサイトさえ作ればすぐに仮想通貨取引所を始めることさえできてしまいます。

仮想通貨取引所で取り扱う仮想通貨の決め方も、「お金を払えば取り扱う(取引所に上場できる)」というずさんなところもあります。

第14回の記事でお伝えしたように、仮想通貨で言われる「上場」は、株式市場・証券取引所における「上場」「IPO」とは意味も価値も全く違いますので、注意が必要です。

仮想通貨の使い道は利殖・投機だけ?

仮想通貨というと「あぁ、怪しいお金儲けの話ね……」というイメージがまだ根強いのですが、第7回第47回でご紹介したように、決済・支払いで利用できるお店、オンラインショップなどが増えてきています。

日本でビットコイン決済を利用できるお店としては、ビックカメラやコジマ、メガネスーパーなどが有名ですね。他にもカフェ、レストラン、クリニックなどで、仮想通貨決済・ビットコイン決済が利用できます。

「ビットコイン決済対応店舗」などで検索すると、たくさん情報が出てきますので調べてみてください。近所にも仮想通貨決済できるお店があるかもしれませんよ。

また、第58回の記事等でご紹介したFUSION BANK(フュージョンバンク)の銀行カードを使えば、マスターカードやVISAカードを利用できるお店やオンラインサイトでも仮想通貨で決済が可能になります。ほとんど世界中で使えるわけですから、決済インフラとしては最強と言えるのではないでしょうか。

決済・支払い以外の使い道として、海外送金や国内送金(振込)の代わりに仮想通貨で送金し合うことも可能です。同じ仮想通貨同士の送金であれば、手数料も安く済みますし、送金スピードも速いので便利ですよね。

「あ、今日は財布に現金がほとんど入ってなかった。銀行ATMは時間外で手数料がかかるし、下ろしに行くのも面倒。割り勘をするには現金じゃないと……」というときでも、仮想通貨であれば「今1BCHは2万円だから、0.25BCH(5,000円分)送るね」とスマホで友人に送ることができます。

例えば第6回の記事でご紹介したネム(NEM)には、コアなファンが多く、ネム決済が利用できるフリーマーケットやバーをオープンするなど、ネム普及のための活動を積極的に行っている人もいます。

ビットコインやネムのように、ホルダーやファンたちが勝手にいろいろなことを考えて通貨を広めていける点も、仮想通貨の醍醐味であると言えるかもしれませんね。

次回は、「仮想通貨の中央集権型」についてご紹介します。

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。監修を担当した書籍『THE NEW MONEY 暗号通貨が世界を変える』が発売中。