「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回は、メタバースと呼ばれる3D空間を体験できる「メタバースの学校」の体験レポートをお伝えします。

今さら聞けない「メタバース」とは

メタバースとは、インターネット上に構成された仮想の3D空間のこと。「メタ(超越した)」と「ユニバース(世界)」を組み合わせた造語です。ブロックチェーンやAIとともに、メタバースは今後10年間の大きなパラダイムとなるでしょう。

仮想空間会議サービスの『Horizon Workrooms(ホライゾンワークルームズ)』には、

・コントローラー不要で利用可能
・ユーザーの身振りを再現するハンドトラッキング(素手によるVR空間での操作)の進化
・ユーザーの表情を再現するリップシンク(口の動きと声を同期させる機能)の進化
・方向や距離を再現する空間音声技術の進化

などの特徴があります。やがては会議やSNSだけではなく、オンオフともに仮想空間で過ごす未来が現実になりそうです。

メタバースという概念自体は、決して最新のものではありません。2006~2007年にブームとなった仮想空間『セカンドライフ』は、メタバースの先駆事例です。セカンドライフの他にも、マイクロソフトの傘下企業が手掛けるゲームの『マインクラフト』もメタバースと言えます。マインクラフトは仮想空間内で自在に建造物をつくり、複数の人が活動することができます。

5Gによって高速、大容量、多接続、低遅延(リアルタイム)が実現すると、VR/AR(仮想現実/拡張現実)がますます普及することになります。バーチャルでのコミュニケーションをリアルと同等の品質にするためには、「実在感」を高めることが必要です。そのためには、ネットワーク遅滞を解消し、ノンバーバル(非言語的)なコミュニケーションも理解、体感できるようにする必要があるわけです。5G、さらには6Gによって、それは可能になるでしょう。

メタバースを体験するなら「メタバースの学校」へ

  • Oculusを付けてメタバース体験中の参加者

メタバースについて学ぶことのできる勉強会や交流会はたくさんあります。『メタバース2.0チャンネル』というフェイスブックグループには、2022年4月時点で1.7万人以上のメンバーが参加し、メタバースに関する情報を得ています。

メタバース2.0チャンネルは、メタバースに関する情報や、VR周辺デバイス、ゲーム、ソーシャルメディア、プラットフォーム、最新テック、NFT、暗号資産まで視野に入れて情報収集と啓蒙活動を行うコミュニティ&メディアです。

そんなメタバース2.0チャンネルを運営しているのが、『メタバースの学校』校長の北村勝利氏。北村さんは経営者として30年以上のキャリアを持ち、4度のエグジットを経験する連続起業家です。ハードウェア、ミドルウェア、ソフトウェア、WebサービスといったすべてのITビジネスを経験したプロデューサー・実業家で、特にB2C向けVR/AR分野での実績が豊富な方です。

メタバースの学校は2021年に開校し、すでに200名以上の方がメタバースを体験しています。私も「メタバースの学校 VR体験コース」に参加してきました。

他の参加者には、映像制作やコンテンツ制作のコンサルタント、建設会社社員、事務員、語学スクール・EC事業の経営者などの方々が大阪や栃木など全国からいらっしゃっていました。

【メタバースの学校 VR体験コースのカリキュラム】
Part:1 /Oculus Quest2の使い方練習
Part:2/VR動画体験(アートの中に入る、高所体験、旅番組体験)
Part:3 /世界最大のVRコミュニティ『VRchat』体験/Facebookが作った次世代型SNS 『HORIZON Venues』体験
Part:4/世界で400万本の大ヒットVRゲーム『Beat Saber』体験
Part:5 /ミニセミナー/質疑応答

カリキュラムのPart:1では、シューティングゲームや宇宙人とダンスを楽しみながらハードウェアの使い方を練習していきます。Part:2では、ゴッホの絵画のなかに入っていくVR体験や、もともとは建設会社の研修の一環として高所恐怖症克服のために開発された高層ビル(高所体験)のVR体験、360度カメラで撮影された旅番組のVR体験などが行われます。

そして、Part:3が体験コースのメインです。世界最大のVRコミュニティである『VRchat』と、Facebookが作った次世代型SNS 『HORIZON Venues』を体験することができます。当日は、フーファイターズのライブがメタバース上で行われており、その会場で体験会の参加者同士が待ち合わせし、メタバース上でコミュニケーションを取りました。

一度体験してみるとわかりますが、バーチャルであることを忘れ、本当にそこに相手が存在しているような実感があります。近い距離で話されると、本当に近くで話している感覚です。すでに世界中にメタバース上で時間を過ごす住民がおり、VRchatにデザインしたアバターを持ち込むことで理想の自分を創り出すこともできています。

またVRchatでは、建築CADデータをメタバースに持ち込むこともできるため、「メタバース建築家」がすでに多く誕生しています。

メタバースの学校の公式サイトには、以下の記載があります。

メタバースムーブメントを牽引するMeta社(旧Facebook社)創業者のマークザッカーバーグ氏は、メタバース、つまり3D仮想世界の実現にむけて向こう10年で1兆円以上の投資を行い、10億人の「メタバース人口」を作り、数百万の「雇用を作る」と宣言しました。

メタバース、つまり3D仮想世界とはインターネット上に新しく「場」や「街」を作ることになります。その時、土地の造成や建築、造園、内装、インテリア、といった産業が動きますが、全く同じことが3D仮想世界の中でも起こります。

つまり3D不動産屋さん、3D建築屋さん、3D家具屋さん、3D造園屋さんといった3DCG産業が生まれます。時代はノンコード。簡単に作れるツールの発達で多くのクリエイターが生まれます。同時に、3D仮想世界の主人公はアバターとして気分によって着替える、ファッションやアクセサリー、街を移動するバイクや自動車も必要になります。

もっと言えば、仮想世界は時間も超えるので、亡くなったペットや肉親をパートナーアバターとして作ることで生活をするといったことも当たり前になります。もちろん冠婚葬祭はメタバースで普通に行われる様になります。当然、メタバースは国境も人格も超えるので犯罪や詐欺も起こりますのでメタバース警備保障みたいな仕事も出てきます。

この様な世界が数年後に実現することを大前提としたときに私たちは今から準備すべきことがあります。それは「作る技術」だったり、「売る場所」や「取り引きする場所」であったり、プラットフォームを見極める「土地選定」だったり、生まれる仕事の種類は多岐にわたります。

まだ見ぬ未来を「正確な知識」で正確にイメージして未来のキャリアを作って行く。これが「メタバースの学校」です。ともに次のインターネット産業を作っていきましょう。

メタバースという新たな空間には、すでに人やコミュニティ、仕事が生まれ進化し続けています。「オフラインよりもオンラインの時間の方が長い」という状況は、一部の人にはもう起きている現象であり、今後はますます「オンラインありき」で社会が設計され、動くようになるでしょう。

メタバースとは、もうひとつの世界を創ることであり、世界を複数にしていくことです。アバターは一人一体とは限りませんから、人口の上限もなくなります。メタバース人口は、10億人どころではなくなっていくはずです。

  • 体験コース当日の様子

忘れてはいけない物事の本質

カリキュラムの最後には、メタバースに関するミニセミナーも行われました。

世間の興味は、「メタバースはビジネス機会なのか?」という点。マクロトレンドは、2Dインターネットから3Dインターネットへの移行と、2DSNSから3DSNSへの移行で、これまで平面で行われていたインターネット体験・SNS体験が、立体での体験となり、リアルとの境界が薄らいでいきます。

そして、時代的追加要素として「クリエイターエコノミー」「デジタル不動産投資」「Play to Earn(遊んで稼ぐ)」「NFT」「暗号資産」などがあり、これらはマクロトレンドと密接に関わっていくでしょう。

北村さんは、「メタバース=3D空間+アバター+交流機能+生態系(エコノミー)」であり、生態系がないと、美しい3D空間だけをつくってもそれは箱物行政と同じであると仰います。全くそのとおりで、美しいだけでは一度訪問して終わり。リピートして行くことはないでしょう。訪れるとそこに人がいて交流があり、生態系があるからこそ魅力があるのだと思います。

ミニセミナーでは、「メタバースで何ができますか?どんなことができますか?」という質問に対し、「お客様はだれですか?」「なにが事業課題ですか?」「なにがマーケティング課題ですか?」「なにが専門分野ですか?」という基本に立ち返り、突き詰めて考えていく必要性も解説されました。メタバースやNFT、ブロックチェーン、Web3などのトレンドに惑わされず、本質を忘れないことも極めて大切です。

北村さんは、「未来は過去の延長上にあり、メタバースの歴史を知ることで未来をみることができる」とも仰います。小説『スノウ・クラッシュ』でメタバースという言葉が生まれ、『セカンドライフ』のブーム、VRヘッドセット『Oculus』のリリース、パンデミックによるオンラインコミュニケーションの必要性の高まり…。フィクションの世界やゲーム感覚だったメタバースが、ビジネスシーンでも使用されるようになり、その用途は無限に広がっていきます。メタバースという新たな空間をどう活かすかは、自分次第ですね。