「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回のテーマは、投資信託や暗号資産の積立投資についてです。

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忘れる投資が心地いい

投資・資産運用には、「長期」「積立」「分散」という原則があります。この原則に従うのが、効率がいいと言えるでしょう。NISAやiDeCoのような制度もありますので、家庭と家計の状況にもよりますが、

・NISAをつみたて投資枠で月10万円×夫婦2人で年240万円
・iDeCoを会社員なら月2.3万円×夫婦2人で年55万2000円

これだけでも月24万6000円の積立投資ですから、続けられたら十分すごいことです。さらに成長投資枠の年240万円を夫婦で(年に計480万円)すれば、月64万6000円の積立になりますが、これを毎月続けられる人は少ないでしょう。

制度を活用するだけでも、夫婦2人でかなりの額を投資・資産運用に回すことになります。生涯投資枠の1800万円を超えて10年、20年と長期で続ければまとまった資産になるでしょう。

銘柄は、全世界株式や全米株式、S&P500などのインデックスファンドでもいいですし、余裕資金があるなら、まずはNISAの枠を埋めるか、ビットコインやイーサリアムなどのメジャーな暗号資産をドルコスト平均法で買い増していくのもいいと思います。「積立NISA、積立ETH(イーサ、イーサリアム)、積立BTC(ビットコイン)」です。ちなみにこの順番を推奨しているわけではなく、なんとなく語呂がいいからです。今はNISAの成長投資枠でビットコインやビットコインETF、イーサリアムを購入することはできませんが、いずれは可能になるかもしれません。

NISAで買う銘柄については、株式だけでなく債券、REITなども含むバランス型でもいいでしょう。人気のオール・カントリーでもいいのですが、「地域の分散」にしかなりません。株価は、暴落すればアメリカも日本も新興国も暴落するので分散にならないからです。「資産の分散(種類の分散)」「地域の分散」「時間の分散」をして、積立設定をしたらあとは放置して投資したことを忘れるくらいが心地いいのではないでしょうか。

すでにまとまった資金があるなら、積立投資・ドルコスト平均法ではなく一括投資という選択肢もあります。また、金融投資だけでなく、アメリカやシンガポール、ロンドン、パリ、東京などの世界都市の不動産を買うのも王道です。世界都市の不動産は資産価値が下がりにくく、インカムゲインを得られるからです。日本は長年のデフレですっかり「デフレ思考」が定着しています。しかし、世界的に見ると日本の不動産や日本企業の株価、サービス・商品は品質の割に安く過小評価されています。デフレ思考から「インフレ思考」に切り替えて、バリュー投資的に日本に投資するのもいいでしょう。

あとは、余計な(特に怪しげな)投資話には乗らないことです。投資が仕事や趣味という人でない限り、多くの人にとっては投資・資産運用は人生を豊かにするための手段にすぎません。築いた財産をどのように使い、どのような人生を過ごすかの方が大切でしょう。

おさえておきたい投資の原理原則

近年流行しているインデックスファンドについて書かれた本に、「投資の大原則 人生を豊かにするためのヒント」があります。この本は2名による共著ですが、バートン・マルキール氏は「ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理」でも知られ、チャールズ・エリス氏は「敗者のゲーム」でも知られる著者です。

「投資の大原則 人生を豊かにするためのヒント」に書かれているポイントは、以下のとおりです。

・若いうちから貯蓄を始め、続けること
・会社の福利厚生や国の退職に向けての制度を活用すること
・市場全体に投資する、コストの低い「インデックスファンド」で分散を図ること
・自分に合った資産配分を維持するために年1回見直すこと
・決めた投資方法を守り、長期投資を心がけること

投資・資産運用の基本ルールについては、以下のように書かれています。

【9つの基本ルール】

・お金は若いうちから定期的に貯めよう
・会社と国に資産形成を手伝ってもらおう
・不時の出費に備えて現金は用意しておこう
・保険をかけているか確認する
・分散投資をする
・クレジットカードのローンは使わない
・短期運用への衝動を無視しよう
・低コストのインデックスファンドを使う
・オーソドックスな分野に注目

書かれているのは普遍的な原理原則ですので、投資・資産運用を検討している方だけでなく、すでに投資・資産運用を始めている方にもぜひ知っておいてほしい内容です。

「ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理」や「敗者のゲーム」だけでなく、最近の本では「JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則(ニック・マジューリ 著、児島修 訳、ダイヤモンド社)」や「ジェイソン流お金の増やし方(厚切りジェイソン 著、ぴあ)」でもほぼ同じ内容が書かれています。

「市場平均に勝ち続けること」と「資産を維持すること」の難しさ

個別株や個別案件に投資するよりも、投資信託やETFなどの金融商品に投資する方が安心という人もいるでしょう。投資信託は大きく分けると、前述の「インデックスファンド」と「アクティブファンド」の2種類に分類することができます。

インデックスファンドは、日経平均株価やTOPIXといった指数に連動するように運用目標が設計された投資信託です。一方のアクティブファンドは、指数を上回る、または指数に捉われずにリターンの獲得を目指す投資信託です。

少し古い資料ですが、2016年に発表されている「SPIVA(R)U.S.Scorecard」によれば、アメリカ大型株の代表的なインデックスであるS&P500とアメリカ大型株に投資するアメリカ国内のアクティブファンドを比較してみると、2016年末までの5年間では88.30%が、10年間では84.60%が、15年間になると92.15%がインデックスよりも下回っています。つまり、投資のプロが運用するアクティブファンドでも、長期的にはインデックス(市場平均)に勝ち続けることは困難ということです。

この数値には、アクティブ運用をうたっていても、実態は市場平均を示す株価指数と組み入れ内容が近いファンド(隠れパッシブ、アクティブもどき)が含まれている可能性もありますので、実態のパーセンテージは変わるかもしれません。アクティブファンドは単純にインデックスファンドの反対用語となっていますが、その内実はピンキリです。アクティブファンドの王道は、「投資対象の本質的な価値を見定めて、いい企業の株をできるだけ安く買い、長期的に保有し続けること」ではないでしょうか。そういったアクティブファンドに投資できれば、インデックスファンドに投資するよりも効率的に資産を増やせる可能性はあります。

また、仮に資産形成に成功し、ミリオネアやビリオネアになれたとしても、その資産を維持することは極めて難しいと言えます。詳しくは、第15回「ビットコイン堕落論」~億り人で在り続けるために必要なこと~で書いていますので、興味のある方は読んでいただければと思います。

鉄メンタルもいいが「柳メンタル」を持つこと

株式市場でも、約10年に一度は大暴落が起こります。暗号通貨市場は、本連載でも何度かお伝えしているように「夏と冬しかない」市場です。夏=お祭り状態=バブル。冬=過度な期待期後の幻滅期=大暴落です。2024年は年初のビットコインETFの承認にはじまり、約4年に一度のビットコイン半減期もあり、雪解けの年になるでしょう。

「大暴落は必ず来る」「暴落したら買い増せばいい」と頭ではわかっていても、いざそのときが来ると値動きや含み損、含み益のアップダウンが気になり、多くの人は売ってしまいます。鉄のような強いメンタルを持つこともいいのですが、私は柳のように受け流すメンタルの方がいいのではないかと感じます。

「柳の枝に雪折れはなし」という言葉の対句として、「松の雪折れ」という言葉があります。松の枝は強いが、雪の重さに耐えられず折れてしまうことがある。柳の枝は雪も雨も風も受け流すので、折れることはないという意味です。松や鉄のような強いメンタルではなく、柳のように受け流す方が、厳しい市場でも生き残り続けられるのではないでしょうか。

また、暗号資産市場の激しいボラティリティに慣れると、株式市場の暴落は気にならなくなるかもしれません。「30~50%の暴落は誤差」と思えれば、買い増し続けること(JUST KEEP BUYING)もできるでしょう。「上がってよし、下がってよし」と思い、大暴落をバーゲンセールと捉えて買い続けると、若い世代はいつかは報われるはずです。

もちろん、「売却のタイミングで大暴落」というシナリオも、頭に入れておくことは必須です。20代や30代であれば、暴落しても回復するまで待てますが、50代や60代以上の方にとっては、大暴落のタイミングを前提にしておく必要があるからです。株式や暗号資産だけでなく、債券やREIT、不動産などの実物資産もポートフォリオに組み込み、自分のリスク寛容度と照らし合わせておいた方がいいでしょう。

ちなみに私は、金融商品や不動産への投資に対しては「流動性のないものは投資するに値しない」という考えを忘れないようにし、事業投資に対しては「自分でマネジメントできないことはしない」という考えを忘れないようにしています。何事にも、マイルールを設定しておくことは必要です。やることを決めること以上に、やらないことを決めることも大切だからです。