「子育てにお金ってだいたいどれくらいかかるの? 」「東京暮らしと地方暮らしとでは、子育てにかかるお金に違いがあるの? 」「教育資金づくりってどんなふうにするの? 」「教育費が足りない場合どうしたらいいの? 」など、子育て真っ最中の方、またはこれから子育てする方には、こんな疑問や不安がある方も多いのではないでしょうか。

前回につづき、今回も「子育てとお金」をテーマに有益な情報をご紹介していきます。「出産にかかるお金」「教育費の目安」「教育資金づくりの方法」「教育費を地域別で比較」など、さまざまな角度から、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が「子育てとお金」についてお伝えしていきます。

奨学金の返還ができなくなった!

日本学生支援機構(以後「JASSO」という)の貸与型奨学金(第一種奨学金・第二種奨学金)は、給付金ではなく借金です。大学等を卒業した後、返還(返済すること)する義務があります。

ただし、奨学金の返還が難しくなってしまった場合のための「救済制度」があります。今回は、奨学金の返還が難しくなった場合に利用できる2つの制度と延滞した場合の措置についてお伝えいたします。

返還が困難な場合の救済制度

災害、傷病、失業、その他の経済的な理由によって奨学金の返還が困難である場合に、【1】減額返還制度と【2】返還期限猶予という2つの制度があります。

【1】減額返還制度

減額返還制度とは、毎月の返還額を減額して返還することができる制度です。 「毎月の返還額の半額ならば返せるんだけどな…」というような場合もあるでしょう。一定期間、当初約束した毎月の返還月額を2分の1または3分の1に減額して、減額返還適用期間に応じた分の返還期間を延長することができます。

申請方法

奨学金減額返還願にマイナンバー(個人番号)および申請事由により必要な証明書を添付して願い出る必要があります。ただし、返還開始より1年以内の初回申請時のみ、証明書の提出は不要となります。

適用期間

最長で15年(180ヵ月)まで延長可能です。ただし、1年ごとに願い出る必要があります。 また、所得連動返還方式(コラム「第88回奨学金の返還方式【2】所得連動返還方式とは」を参照)を選択した場合は、減額返還制度を利用することはできません。

参照 : 【1】減額返還制度の詳細はこちら

【2】返還期限猶予制度

返還期限を先延ばしにして、一定期間返還の猶予(返還を待ってもらうこと)を願い出ることができる制度です。

申請方法

奨学金減額返還願にマイナンバー(個人番号)および申請事由により必要な証明書を添付して願い出る必要があります。審査により承認された期間については、返還期限が猶予されます。

適用期間

最長で10年(120ヵ月)まで延長可能です。ただし、1年ごとに願い出る必要があります。減額返還制度と延ばせる期間が異なるので、ご注意ください。 ただし、減額返還制度でも同様ですが、申請しても承認されない場合は、返還を継続する必要があります。

返還期限猶予の適用期間終了後に返還が再開され、返還終了年月が延長されます。この返還期限の猶予は、一定期間の返還期限を猶予する制度であって、返還すべき元金や利息が免除されるものではありません。

参照 : 【2】返還期限猶予制度の詳細はこちら

【1】減額返還制度と【2】返還期限猶予のいずれの制度を利用した場合でも、返還総額は当初の予定通りに返還した場合と変わらない金額です。返還する総額が減少することも増加することもありません。

延滞した場合の措置

<人的保証の場合>

返還金を延滞すると、本人、連帯保証人、保証人に対して文書と同時に電話による督促が行われます。

振替不能になってしまった場合

翌月の振替日に今月の返還額と翌月分の返還額を合わせて引き落としが行われます。返還者本人に対しては「振替不能通知書」が送付されます。

振替不能が連続して3回目になった場合

1回目分からの延滞金が課せられ、返還者本人に「振替不能通知書」が送付されるとともに、連帯保証人および保証人に対しても督励状が送付されます。

振替不能が4回目以上になった場合

口座振替が停止され、JASSOが回収を委託した債権回収会社から返還者本人、連帯保証人および保証人に対して督促が行われます。

人的保証では、一般的には親などの家族が連帯保証人や保証人を引き受けてくれる場合が多いでしょう。振替不能がつづくと、連帯保証人や保証人を引き受けてくれた家族に対しても大変な迷惑をかけてしまうことになりますので、延滞にはご注意ください。

長期間延滞した場合

何度も督促したにもかかわらず、返還がなく、救済制度の手続きや相談もなく、延滞が長期にわたる場合、返還未納額の全額を一括で返還するよう請求されます。

それでも返還に応じない場合は、民事訴訟法に基づき、JASSOから裁判所へ支払督促の申し立てが行われます。 なお、機関保証の場合、一定期間督促後、JASSOは保証機関に対し代位弁済請求を行います。

また、機関保証、人的保証のどちらを選択した場合であっても、返還を開始してから6ヵ月経過した時点で、延滞が3ヵ月以上となった場合は、個人信用情報機関に延滞した人の延滞情報が登録されます。

個人信用情報機関に延滞者として登録された場合は、クレジットカードが利用できなくなったり、住宅を購入する際の住宅ローンを組めなくなったりする場合があります。

一旦登録された情報は、延滞を解消しても、返還完了後5年が経過するまで登録は消えません。

奨学金を延滞すると、社会人としての日常生活に支障をきたす可能性があります。ご自身の生活に不利益が出ないようにするためにも、返還が困難になった場合はすぐにJASSOの返還相談センターに電話でご相談ください。

参照 : 奨学金相談センター