「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。

お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか? 」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。

2月から3月にかけては、「引越しシーズン」と言われています。進学や入社、転勤などで住み慣れた街を離れて、新しい街での新生活をスタートする人もいらっしゃるでしょう。私自身も、東京と地方を何度も引越ししてきました。そこで、前回に引き続き、統計やアンケートなどに基づいたものではなく、私個人の経験をもとに、「賃貸物件探し」のポイントをお伝えしようと思います。前回(第120回)では、「一人暮らし用の賃貸物件」でしたが、今回は「家族用の賃貸物件」です。

賃貸物件の情報をインターネットや不動産会社の店舗で見るとき、はじめにどの項目から確認しますか。一人暮らしとは異なり、家族での賃貸物件となると、家族の人数や年齢によっても探す物件は違ってくると思います。大きなリビングがあれば、一人部屋(書斎等)は不要と考える家族もいれば、子供の人数分の個室が必要と考える家族もいるでしょう。

私個人として「家族用の賃貸物件」で、こだわったことを2つ挙げるとするならば、

【1】寝室には、掛け布団が入る奥行のあるクローゼットもしくは押入れがあること

畳の場合は、奥行のある押入れがあるので問題ないのですが、フローリングのみの場合、奥行がない収納しかない物件もあり、使用しない布団を折りたたんでしまうことができないこともあります。しまうたびに圧縮袋等で家族分の布団を小さくしなければならないのは、かなり手間だと思います。クローゼットを見る際は、奥行に注目してみてください。

【2】日差しが他の建物等で遮られていないこと

物件探しをする際には、必ずベランダを開けて、外の様子を見ます。ベランダの前に高層の建物があったとしても、一定の距離があり、日差しが部屋に入るのであれば、日々の生活において気にすることはないでしょう。以前、内見した部屋で、他の物件に比べて十分な広さがあり、室内もリフォームされてきれいだったのですが、リビング側の目の前には高層ビルが建っていて、日差しが入らない部屋でした。照明をつければ、室内は明るくなりますが、日中まったく日の光を感じない部屋は、私には違和感がありました。内見する際には、日差しの入り方に注目してみてください。

一方、賃貸物件検索サイト等で「物件のリクエスト」項目にある内容でも、私個人としては気にならなかったことを3つ挙げてみました。

【1】南向き以外でも快適!

今まで南向き、西向き、東向きの部屋に住んだことがありますが、実は「向き」が重要ではなく、建物と建物の「間隔」だと思います。

南向きでも、ベランダのすぐ前に高層な建物があると日当たりが悪く、南向きのメリットをあまり感じることができないと思います。西向きや東向きでも、ベランダの前に平置き駐車場等があるだけで建物がなければ、日差しは十分に部屋に入ると思います。また、外に洗濯物を干さずに、室内乾燥機を備えている場合は、南向きである必要性は少ないと思います。

【2】1階に住むメリットもある!

前回のコラムの「一人暮らしの賃貸物件」でこだわったことのなかに「2階以上の住宅であること」を挙げましたが、家族で暮らす場合は、1階に住むメリットもあります。例えば「音」。1階は下階がないので、足音などの生活音を、上階よりも気にせずに生活できます。特に、幼い子供がいるご家庭や、生活リズムが夜型の家族は、1階の部屋だと気が楽かもしれません。

【3】部屋の広さより奥行のある収納が大事!

さきほど書いたこだわったこと【1】の裏返しでもありますが、家族には、それぞれ大事な物があり、生活に必要なものも異なります。家族で暮らす場合、一人だけの判断で「家に置くもの」の量や大きさを決めることはできません。そこで必要となるのが収納です。部屋が広くても収納が少ないと物をしまうことができず、部屋の中をどんどん物が占領してしまいます。少々部屋は狭くても、大きな収納があると「そこに物をしまう」という意識が芽生えて、所有する物の量を調整することができ、快適な空間で生活できると思います。

部屋を決める際の「優先順位」は人それぞれですが、「南向き」や「部屋が広い」という言葉に惑わされずに、日差しや収納の奥行などにも注目してもらえたらと思います。