11カ月違いの兄弟、アトムとルーク

書籍『耳折れ兄弟~アトムとルークのノンキな日常~』やDVDなどを発行し、テレビにも出演したアトムとルークの飼い主、たけ&サトコさんご夫妻のご自宅を訪ねたのは、真っ青な空が気持ちの良い冬晴れの日。たけ&サトコさんと、ひとなつっこいアトム、ちょっと内弁慶なルークが出迎えてくれた。

アトムとルークは同じ母親ネコから生まれた兄弟ネコ。「さみしがり屋のアトムのために、兄弟を迎えよう」と思っていた時に、ちょうど、同じ母親ネコから生まれたのがルークだった。

兄弟といっても、それぞれ生後2カ月でたけ&サトコさんのもとにやってきたので、この家が初対面の場所。自分たちが血のつながった兄弟だと知っているのか、いないのか。こればかりは当人に聞いてみないとわからない。

親子のようだが、実は兄弟

え? アトムのおっぱいを吸っている?

毛繕いも二人で

ふたりは子猫のころからいつも仲良し

※いずれも飼い主のたけ&サトコさん撮影

兄ネコが弟ネコを子育て?

やさしいパステルブラウンを基調にした明るい部屋の中、午後のやわらかな日差しを浴びながら、スコティッシュフォールドの兄弟・アトムとルークが気持ちよさそうに寝転んでいる。

一般的に、兄弟ネコは喧嘩することも少なくないが、アトムとルークはびっくりするほど仲がいい。血のつながりを感じたのか、はじめてアトムをみたルークは、自分にそっくりのお兄ちゃんネコを母親と勘違いしてお乳をねだり、アトムは、黙って吸わせていたのだとか。もちろん、何も出ないのだが……。ルークの毛繕いも、アトムの仕事。大きくなった今も、ルークは自分で毛繕いするより、アトムにやってもらうほうが好きなのだという。

背中の模様、色の濃さは違うが柄は見事に同じ!

ごはんを食べる姿も、鏡に映したようにそっくり

ネコの兄弟は、必ずしも外見が似ているとは限らないが、アトムとルークは、背中の模様が瓜二つ。兄弟の特徴でもある折れた耳は、スコティッシュフォールドのネコに多くみられるが、すべてのスコティッシュフォールドの耳が折れるわけではない。偶然にも、兄弟そろって「耳折れネコ」になったという。

「アトムにおもちゃをあげても、ルークに譲っちゃうんです。おやつも、ルークがアトムの分まで食べてしまうのに、怒らないんですよ」とサトコさん。かいがいしく弟の面倒をみる兄の姿には、思わずホロリとさせられる。

外出先からでも二匹の姿が見られるライブカメラ

仕事で家をあけることが多い夫のたけさんは、こんな兄弟ネコの愛くるしい姿を出先からも見られるようにと、ライブカメラを設置。「ちょっと高かったけど、買った甲斐がありました。カメラが動くと、『動いた!』っていう顔でレンズを見るんです。それもかわいくて……」と目を細める。

たけさんは、航空会社に勤務するパイロット。海外を訪れることが多いが、どの町を歩いても、自然とネコを見つけてしまうというが、「でも、アトムとルークより可愛いネコはいませんね」と溺愛ぶり。そんなたけさんは、動物好きなだけあって、仕事中は乗客のことはもちろんのことだが、動物のことも忘れない。

「飛行機は、ネコなどの小動物を乗せていることが多いんです。お客様のアレルギーなどの問題もあり、客席には乗せないことになっていて、貨物室に入れているのですが、狭いところに入れられてかわいそうだなと思って。自分が操縦する飛行機に小さな動物も乗っているかもしれないと思うと、安全で揺れないフライトをしたいという気持ちが自然と強まりますね」

障害を抱えて生きる2匹を見守る

病気に負けず、いつも元気なアトムとルーク

たけさんとサトコさんにたっぷり愛情を注いでもらって元気いっぱいのアトムとルーク。幸せいっぱいに見えるが、心配なことも…。実は、障害を抱えているのだという。

「母親ネコの家系に、遺伝性の腎臓病を抱えたネコがいると知り、エコー検査をしたところ、腎臓に障害があることが発覚しました。今も定期的な検査は欠かせません。それから、ルークは生まれつき心臓の左右の心室の間に穴があく先天性疾患を抱えています。毎日投薬していて、今のところ健康に問題はないのですが……」

アトムとルークの病気の話をするとき、たけさんとサトコさんの表情はとたんに暗く曇る。アトムとルークに出会う前に先代のネコを病気で亡くした辛い経験があるのだ。

「動物病院での誤診があり、手遅れになるまで病気に気づくことができなかったんです。もっと早く治療していたらと思うと、かわいそうで……」

悲しみに暮れていたお二人が偶然目にしたインターネットのサイトで、先代ネコとそっくりのネコを見つけた。それがアトムだった。「あまり似ていたので、生まれ変わりかと思いました」

アトムとルーク、新しい命が家にやってきてから、たけ&サトコさんの家に穏やかな日常が戻ってきたが、先代のネコのことを忘れることはない。そして、「この子たちには、かわいそうな思いをさせたくない」と、病気の予防や早期発見に人一倍神経を使っている。

「検査はお金がかかるものですが、早く見つければ予防できることもあります。悲しい思いをした私たちだからこそ、ほかの飼い主さんたちに、動物の命を大切に守るために検査が必要なことを伝えたいですね。病院任せではなく、排泄物の色や量などで日々の変化を見逃さないことも大事です。排泄物の色が見づらいネコ砂や1週間取り換えなくてもにおいがしないトイレ用パットなどは、便利ですが、体調の変化を見逃しやすいので、注意が必要だと思います」

お二人の愛情に守られたアトムとルークは、今のところ健康に異常なし。仲良く元気に遊んでいる。

甘えん坊のルークをだっこするたけさん

時々、立ちます

アトムとルークの日常をつづったブログ「耳折れ兄弟」の読者からは、「ネコが苦手だったけれど、好きになった」「アトムとルークの話を聞いてから、長男が弟に優しくするようになった」などの声が寄せられるという。

ふと見ると、「病気のことも、人間のことも、僕たちは知らないよ」とでもいうかのように、兄弟がのんびりと体をすり寄せながらじゃれていた。