クレジットカードの特典で多いのが各種のポイント還元。共通ポイントの運営企業は、クレジットカードを通じたポイント獲得・利用拡大に力を入れています。これに対してセブン銀行とセブン・カードサービスが、現金を直接還元する「nanacoクレジットカード」を発行しました。従来と一線を画す現金還元カードの背景について、セブン・カードサービスに話を聞きました。
メインカード化を狙う現金還元
nanacoクレジットカードは、8月26日に発行を開始した新しいクレジットカードです。これまで発行されていた「セブンカード・プラス」は6月30日に新規入会申し込みが停止となっており、その後継というべきカードがこのnanacoクレジットカードです。
最大の特徴が、月間10万円の利用ごとに現金1,000円を還元するという「現金リワード」です。ポイントを経由して現金を還元するカードとしては平和堂のHOP-VISAカードがありますが、利用金額に応じて現金をセブン銀行ATMから引き出して還元できるというのは日本初だとしています(セブン・カードサービスによる)。
通常の利用では利用200円につき1nanacoポイントを還元するので、還元率0.5%といういたって普通のカードですが、月間で10万円利用すると1,000円が還元されるため、通常のポイント還元と合わせて還元率は1.5%になります。
10万円という基準は、「メインカードとして使われる額」という観点から決めたそうです。一般にクレジットカード会社が把握するのは利用店舗や金額などの決済情報で、購入した商品までは分かりません。一方、小売店のポイント施策では、購買データと会員情報を組み合わせることで商品単位の購入履歴を把握できる場合があります。ただし、今回の現金リワードは商品ごとの購買情報を使うのではなく、月間のカード利用金額を基準に還元する仕組みです。
つまり、特定の店舗や商品に限定されず、nanacoクレジットチャージや公共料金の支払いなども含めて、所定の集計期間中に対象となる支払のクレジットカード利用額が10万円に達すれば1,000円の現金還元を受けられる、ということです(注)。
早川氏は、「現金の特別感」を狙ったと現金リワードの意図を説明します。ポイントだと使うタイミングや場所などが限定されてしまうが、現金であればそういったことはありません。「キャッシュレスでは味わえない特別感や体験価値がある。そういった点で他社と差別化できると考え、現金提供に踏み切った」と早川氏。
そして、現金リワードをセブン銀行ATMで受け取るようにすることで、グループ連携によるサービスとして構築しました。これには、もともとセブン銀行グループが提供している「現金受取サービス」をうまく活用したと言います。このATM受取サービスは、メールで送られてきた番号をATMに入力することで、セブン銀行口座を持たなくても現金が受け取れるサービスです。
セブン銀行ATMは、セブン-イレブン店頭を中心に全国に約28,000台が設置されています。さらにファミリーマートの店頭へのATM設置も始まっており、今後拡大予定。つまり現金リワードはファミリーマート店舗内のATMでも受け取れるわけです。nanacoポイントの還元であればファミリーマートでは利用できませんが、現金であればそのまま使えるため、現金還元のメリットが活きるでしょう。
逆に、これをきっかけにセブン-イレブンやセブン銀行ATMへの誘導を図るという考えがあるかというと、これはそうでもないようです。早川氏は、「結果的に誘導に繋がるかもしれない」とコメントしつつも、それは目的ではないとしています。とはいえ、結果として利用の拡大に繋がれば一石二鳥との認識のようです。
独自の与信モデルでチャレンジ
現金還元はインパクトがありますが、nanacoクレジットカードとして重要なのは、「アプリが欠けていた」(早川氏)という課題を解消した点です。今回、新たにnanacoクレジットカードアプリを投入し、明細の照会や、nanacoポイント/マネー残高などの確認が可能になっています。
特に、アプリから申し込むことでカードの即時発行が可能になったのは大きな進化で、審査受付からカード番号発行までの手続きが最短3分で完了するとしています。カード番号が発行されれば、物理カードの到着を待たず、デジタルカードとしてスマートフォンのウォレットに登録して決済で利用できます。
こういったサービス改善を顧客接点の強化に繋げたいというのが同社の戦略です。まずは即時発行・利用の体験を提供。マーケティングツールのKARTEなども導入しており、ユーザーごとのお知らせを実現するなど、今後はさらなる顧客体験の向上に繋げたいとしています。
既存のセブンカード・プラス(JCB)の本会員は、このアプリに登録すると、現金還元などnanacoクレジットカードと同様のサービスを利用できます。既存ユーザーがわざわざnanacoクレジットカードへの移行をしなくてもいいというのはメリットでしょう。
そしてもう1点、今回の即時発行にも繋がりますが、新たな与信モデルを導入している点も大きな変化です。
この与信に関してはセブン・カードサービスが自社で行っているそうです。早川氏は、「イトーヨーカドーやセブン-イレブンへ来店するすべてのユーザーにクレジットカードを発行したいという思いから構築した」と説明。従来、審査が通りにくかった層に対しても発行できるように、「一部チャレンジングな審査を行っている」(同)といいます。それもあって、利用枠は最低5万円からとなっています。
この与信モデルについて、長年のnanacoの知見を生かして行動パターンも与信に生かしていきたいと早川氏は話しており、今後さらに改善を続けていく方針です。
nanacoクレジットカードは、「nanaco」のブランドを冠した初のクレジットカードです。電子マネーのnanacoは発行枚数で8,000万枚を超えて一定のブランド価値があります。それにクレジットカードを合わせることでnanacoからのクレジットカードへの取り込みも図りたいといいます。
「ファイナンスに弱かったのでそこを強化したい」と早川氏は話しており、キャッシングやリボ払いといった利用の底上げも狙っていく方針です。
nanacoクレジットカードの現金還元が、どこまでユーザー層の拡大に繋がるかは注目です。今後の7iDのPayPay IDへの統合、PayPayポイントの採用もどういった影響があるかは読めないところですが、セブン・カードサービスはセブン銀行傘下ということもあって、「nanacoというブランドを大切にして今後も推進していきたい」としています。

