最近は缶詰も高級化していて、500円~700円台くらいのおつまみ缶詰がたくさんあります。その上には千円台のものもあるし、3千円台や5千円台という缶詰だって存在します。じゃあ、一番高い缶詰っていったいいくらなのか。そしてそれは何の缶詰なのか。気になりますよね。

今回は日本一高価な缶詰を博士が実食。その驚愕のお値段と中身を紹介いたします!

  • マルハニチロ「特選たらばがに脚肉詰」。存在感がすごい

高価だけどロングセラー

筆者は今、緊張のあまりキーボードを打つ手が震えている。というのも、目の前に日本一高価な缶詰があり、それをこれから開けようとしているからだ。

その名は「特選たらばがに脚肉詰」。マルハニチロが誇る最高峰のカニ缶で、おそらく世界的に見てもカニ缶のキングであります。

そのお値段は何と……1万7,000円!

「いやいや。それだけお金出すならカニ料理店に行けるでしょ」と思ったあなた。確かにそうなんですが、でもこの缶詰は昭和40年代から続くロングセラーでもあるのです。

  • パッケージは型押し。缶界のルイ・ヴィトンである

ロングセラーということは、いつの時代も固定客がいるということ。おそらくお中元やお歳暮などの需要がほとんどだと思う。ちなみに売り場は、一部の限られた店舗か、マルハニチロの直販サイトだけだ。

外観写真を撮ったあとは、いよいよ開缶である。なぜか周囲をうかがい、誰も見ていないことを確かめてしまう。別に見られて困るわけじゃないけど(そもそも部屋に一人しかいない)、何だかいけないことをしている気がする。

  • イージーオープンではなかった

ともかく開缶! 今どき缶切りがないと開けられないタイプで、それがかえって高位な存在に思える。と、まず目にするのは紙の包み。カニ缶やホタテ缶特有のパーチメント紙というもので、身が缶内面に直接触れるのを防いだり、身が崩れたりするのを防ぐ役割がある。

  • ついにご対面

包みを開いてついにご対面。鮮やかな脚肉がぎゅうぎゅうに収まっている。見た目がすでに重量級。この時点で、ボイルしたカニの濃厚な匂いが立ち上がってくる。

この値段にはワケがある

  • 取り出してみた

かくのごとし。汁気を切って取り出した状態であります。これは「一番脚肉」と呼ばれる肩に近い脚肉で、この缶詰はその部位だけを使っている。1本を測ってみると、長さは約7センチ、幅は太いところで約4センチあった。

1万7,000円で6本入ってるということは、えーと、この1本が(引き出しから計算機を取り出す)2,833円ということになる。

また周囲をうかがう。誰も見ていないようでほっとする。

箸で持ち上げると、重い。うっかり落としそうになる。そうはさせじと握力を込めて口に持っていき、がぶり。

やっ、歯応えが強いです。ボイルしたカニなのに、焼きガニのように身が締まっている。その繊維を噛み切ると、どう猛なうま汁が溢れてくる。カニなのに脂っこいような、野趣溢れるうま味だ。それがやがて口中を満たして、しばらく恍惚の人となる。

マルハニチロの人に聞いたのだが、この値段は「ほぼ原料費と人件費など」だそうな。厳選した新鮮なタラバガニを使い、そのもっとも太い脚肉を手作業で傷つけないように抜き取って手詰めしているからだ。

自分ではなかなか買えないけど、究極の贈り物としてはアリだと思う。

缶詰情報
マルハニチロ / 特選たらばがに脚肉詰
希望小売価格 1万7,000円(税込)
同社の直販サイトなどで購入可

黒川勇人/缶詰博士

昭和41年福島県生まれ。公益社団法人・日本缶詰協会認定の「缶詰博士」。世界50カ国以上・数千缶を食している世界一の缶詰通。ひとりでも多くの人に缶詰の魅力を伝えたいと精力的に取材・執筆を行っている。テレビやラジオなどメディア出演多数。著書に「旬缶クッキング」(ビーナイス/春風亭昇太氏共著)、「缶詰博士が選ぶ!『レジェンド缶詰』究極の逸品36」(講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。
公式ブログ「缶詰blog」Facebookファンページも公開中。