2011年に「ツナとタイカレー」を発売し、一世を風靡したいなば食品。以降も「ガパオ」や「バターチキン」などエスニックな缶詰を出し続けています。
「あのシリーズの変遷は本当に面白くて、それだけで1冊の本が書けるほどです!」と興奮するのは缶詰博士。「でも今は時間がないので、面白ポイントだけさくっとお教えしましょう」。
ということで、今回は珍しく歴史もの(?)だそうです。
タイで造ったタイカレー
いなば食品「ツナとタイカレー」が出たときの衝撃は忘れられない。ココナッツの甘さにわずかな酸味と辛さが加わり、具のかつお(ツナ)からはうまみがじゅんじゅん湧いてくる。本場タイの協力工場に製造を委託したという、紛う事なきタイカレーだったのであります。
同じ内容で量を75gに減らした小缶は100円ショップで発売され、あっという間に話題になった。
「100円でこんなに本格派?」
「缶詰タイカレーまじウマ!」
それから人気が高まりすぎて製造が追いつかず、店の棚から姿が消えたこともしばしばあった(僕が憶えているだけでも3回あった)。
その後、タイカレーシリーズはバリエーションを増やしていった。具にチキンが加わり、味付けもイエローバージョンが出た。
弁当にも!
タイカレー缶はオフィスワーカーの弁当にも活用された。白ごはんと缶詰を持参し、デスクでぱかっと開ければ即席タイランチだ。
味付けのバリエーションを増やし、供給体制を整えて全国を制覇していったいなば食品。さて、その動きを見ていた他のメーカーはどうしたか?
乗っちゃいました
もちろん黙って見ているわけがない。自分たちもタイカレー缶を造り始めたのであります。
当時、いなば食品ではないメーカーの担当者が言っていた。「ま、ブームに乗っちゃいました」。それだけタイカレーが売れたのであります。
さあ、パイオニアのいなば食品はどうするのか? 混沌としてきたタイカレー戦線をどう回避するのか?
まさかのインド回帰
タイではなくインドに行きました(笑)。タイカレー戦線はかなり激しくなっていて、他業種の「無印良品」まで参戦していたのだ(レトルトパウチだったけど)。
それにしてもインドって、カレー発祥の地ですよね。タイカレーという新たな市場を形成しておいて、まさかのインド回帰。面白すぎるぞ、いなば食品!
インドカレーは新しいフェイスへ
さて、現在もいなばのタイカレーシリーズは続投中であります。そしてインドカレーも新たなフェイスに移行している。
「チキンとインドカレー・黒カレー」は18年4月に出た商品。黒ごまを加えて黒さを演出しつつ、ココナッツミルクとバターでさらにコクをプラス。にんにくもがっちり利いております。
うまみがかなり濃い
かくのごとし。熱々の白ごはんにかけただけのミニマル盛りつけだ。
決して手抜きしたわけではありません。ごはんにかけるだけで十分おいしいという表現方法であります。いなばさんに敬意を表しての結果であります。
辛さの立ち上がりは穏やかなれど、食べ進むうちに汗が出てくる。そしてうまみがかなり濃い。ゆえに白ごはんによく合うのだ。忙しいときの昼食など、これで十分ではないだろうか。
同商品にはトマトで仕上げた「赤カレー」バージョンも存在する。となればもちろん、黒と赤の両方を揃えておくのがいなばファンというものであります。
缶詰情報
いなば食品/チキンとインドカレー・黒カレー 税別210円
スーパー、コンビニなどで購入可