幼少期から熱血ドラマオタクというライター、エッセイストの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る“脇役=バイプレイヤー”にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第49回は俳優の小泉孝太郎さんについて。現在、放送中の『ハケンの品格』(日本テレビ系)に出演する小泉さん。2002年に『初体験』(フジテレビ系)で、デビューした彼が愛されて、そして活躍する役者になるとは誰が想像したでしょうか。今では彼が物語に登場すると、いざこざは起きることはないと安堵感さえ覚えるほどです。

年代差0、好感度100を誇る愛され俳優

『ハケンの品格』(日本テレビ系)に出演している小泉孝太郎

小泉孝太郎

大前春子(篠原涼子)は数多くの資格を保持、そして人並外れたビジネススキルを持つスーパー派遣社員。里中賢介(小泉孝太郎)の熱いリクエストにより、食品商社S&Fにて13年ぶりに働くことになった。正社員と派遣社員との人間関係、そして軋轢。社内で巻き起こる数々の問題を春子が解決していく。”

と、いうのが『ハケンの品格』のあらすじ。13年前に第1弾が放送されて、今回は13年ぶりの放送、第2弾となる。初回放送時は主演の篠原涼子さんの人気が大爆発した頃。派遣社員をテーマにした斬新さと、身近さが話題を呼んで大人気の作品に。毎話、大前春子の問題を爽快に解決していく様子が楽しかった。そして元号も変わった2020年に見事、復活である。

小泉さんはこのドラマで、大前春子が働く営業企画課の課長・里中賢介を演じている。温厚な性格と、真面目で誠実な仕事ぶりで社内では出世コースを進んでいる。

小泉さんはご存知の通り、内閣総理大臣を務めたことのある小泉純一郎氏の地長男。孝太郎さんの俳優デビュー時と純一郎氏の就任期が近いこともあって、当時はいろいろ騒がれたはず……。そろって著名人と言う親子なんて珍しくはないけれど、歴史に名前を残す伝説の人物の息子なんて、七光りどころの騒ぎではない。大物芸能人や芸能関係者のサラブレッドが、親の名声を借りて勢いよくデビューを果たしている。ただその勢いのまま、跡形もなく消えていくことも多々。

でも小泉さんは外野の騒ぎには一切関わっていなかった記憶がある。いや、ワイドショーでも、その手の質問はスルーして不機嫌そうにしていた。今でこそご家族のこともお話ししている様子を見かけるけれど、今から18年前は頑なに口を閉ざして、自力のみで闘っていたのではないかと想像してしまう。そう言えば、里中賢介も第一弾では性格も、髪型もかなりとんがっていた正社員だった。それが時間を経て“いい上司”に成長しているとは、里中は本当にご本人の人柄を映す役なのかもしれない。

本人のイメージがそのまま役に反映されて

小泉さんの演技をガッチリと見るようになったのは『西村京太郎サスペンスシリーズ』(フジテレビ系)二時間サスペンスに出演するようになった頃だ。目の肥えた高齢者たちにファンの多い、放送枠で幅広い年代から愛されるようになった。それが『警視庁ゼロ係〜生活安全課なんでも相談室』(テレビ東京)の第4シリーズまで続く人気作への主演に繋がっているはず。あのハズレのないストーリー展開は非常に好きだ。この作品でもまるで小泉孝太郎本人がそのまま、反映されているようないい人・小早川冬彦を演じている。

思い返すと2020年冬ドラマ『病院の治しかた〜ドクター有原の挑戦~』(テレビ東京)で演じた医師・有原修平も『グッドワイフ』(TBS系・2019年)の弁護士・多田征大も真面目で優しくて、誠実と言うお婿さん条件の全てを兼ね備えた役柄。そう、小泉さんご本人のパブリックイメージがそのまま。このご本人のイメージそのものが役になって、キャスティングされていくなんて稀だ。私が思い出す限りでは、えなりかずき君くらいだろう。いい人なだけではなくて、実はすごい才能を育てた俳優さん。できればこのまま何十年後もイメージを担保して欲しい。そして出演する作品では視聴者の心の拠り所=オアシスのポジションを守り続けてくれないだろうか。間違っても『小泉孝太郎、イメージを覆す殺人犯に!』というスポーツ新聞の見出しになりそうな方向転換はやめよう。きっと大火傷になるから。

小林久乃

エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター。エンタメやカルチャー分野に強く、ウェブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。