コラムニストの小林久乃が、ドラマや映画などで活躍する俳優たちについて考えていく、連載企画『バイプレイヤーの泉』。
第158回は俳優の本田響矢さんについて。長い時間色々と日本の作品を見ていると、時折、流れ星のように王子様が現れる。現在、大ヒット中のドラマ『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系)で主人公の夫・江端瀧昌役を演じる本田さんがその王子様のひとり。実は毎週、必ずドラマをお代わり視聴するほど、作品にハマっている小林が考える本田さんの魅力について。
これぞミーム化? SNSトレンド常連作品に
今さら説明不要かもしれないが『波うららかに、めおと日和』は、昭和11年を舞台にしたラブコメだ。親の勧めで見合い結婚をした、江端なつ美(芳根京子)の夫は、帝国海軍の中尉である瀧昌。時代柄、恋愛経験ゼロ、結婚で初めて会う関係の純情なふたりが、夫婦として距離を縮めていく物語。
ひと昔前の少女漫画の世界がそのまま映像化された、甘酸っぱい物語に多くの女性視聴者が熱狂をした。そこに年齢のボーダーラインはない。張り巡らされた伏線回収、劇的ドロドロ……とハードな内容が多い昨今のドラマ界隈にとって、新鮮すぎるドラマだった。ものすごく楽しませてもらった。ありがとう。
人気の理由はいくつもあるけれど、江端瀧昌役の本田響矢さんの魅力はとても大きい。ドラマ番宣で見かけた、電波ジャックでの誠実な雰囲気に、凛々しい眉が印象的な端正な顔立ち。脱いだらすごいぞの筋肉がしっかりついたボディ。ヒト科として誕生したからには、希望するものを手中にしている。
「問題ありません」
瀧昌の口癖であり、決めゼリフを思い出しながら、本田さんを見ていると思い浮かんだ法則がある。
濃厚太眉の男性俳優、約20年ごとのブレイクあり
今回、本田さんが演じた瀧昌役は"当たり役"だった。ワンクールに40本以上の連続ドラマが放送しているのを鑑みると、新人俳優陣には役柄が多すぎる。融合性は低く、本作による瀧昌様ムーブは稀。
この現象、約20年に一度のペースで起きているのでは? というのが私の推論。
各所で書いているけれど、今回の江端瀧昌役を見て思い出したのが1987年公開の映画『はいからさんが通る』。大正7年、許婚により結婚した若い男女が、互いの存在がかけがえのないものになっていくストーリー。この時に夫の将校・伊集院忍を演じたのが、阿部寛。この作品で俳優デビューを果たし、その後の活躍がある。当時、阿部さんは22歳。本田さんは今、26歳の同年代だ。
そして『波うららかに、めおと日和』は、少女漫画原作によるスマッシュヒット作品。同じく、突然スタートしてブームを起こした少女漫画原作のドラマといえば思い出すのが、当時21歳の松本潤主演『花より男子』(TBS系・2005年)だ。「ブレイクのきっかけになった」と嵐のメンバーが話すように、ドラマは大ヒット。第二シリーズ、映画化と女性視聴者たちの心を掴んでいった。
本田さんを起点にして、思い出した他2作のメインキャストの阿部寛と松本潤。この3人を脳内に並べると、印象に残るのは太く、力強く、とても濃い眉だと気づく。約20年ごとに一度、少女漫画原作の映像作品に生まれる大ブレイクタレントであり、王子様とは日本人離れをした濃ゆい顔立ちと、太眉が共通項かもしれない。
長い間、ドラマオタクとして芸能界を見ていて気づいてしまった(やや強引な?)法則。則っていくと、本田さんもこれから着実に人気者の階段を登っていく。そういう香りがする。次に彼が出演する作品が楽しみだ。加えて、この法則が繰り返されるのなら、20年後にまた新たなヒーローが誕生するかもしれない。でもその頃は自分が生きているんだろうか……と、少し寂しくなった。