ネット社会の現代では、グルメのブームに火が付くのも"SNSがきっかけ"ということも多い。ここでは、流行に乗り遅れないために知っておきたいSNSで話題の"バズるグルメ"をご紹介。トレンドに敏感なクライアントや同僚たちの前で恥をかかないように、しっかり話題のグルメを押さえておこう。第22回は「#カヌレ専門店」。

  • 沖縄のカヌレ専門店「ほうき星」の彩り豊かなカヌレ(写真:マイナビニュース)

    沖縄のカヌレ専門店「ほうき星」の彩り豊かなカヌレ

カヌレ専門店の個性豊かなカヌレが人気

ここ数年、カヌレ専門店が増えている。カヌレとはフランス・ボルドー地方の伝統菓子のことで、正式名は「カヌレ・ド・ボルドー」という。溝が入った釣鐘型の容器に蜜蝋(みつろう)を塗り、牛乳・卵黄・小麦粉・バターなどを混ぜた生地を入れて焼いたお菓子で、外側はカリッと、内側はもっちりとした食感が特徴だ。

ワインの名産地として知られるボルドー。ワインの製造工程の中で澱(おり)を取り除く際に卵白を使うため、余った卵黄を使ってお菓子を作ったのがカヌレのはじまりだという説もある。

そんな伝統菓子カヌレが、いま日本で人気だ。カヌレ専門店が増えており、季節や地域の食材を使ったSNS映えするカヌレも登場している。Instagramで「#カヌレ」の投稿は24万件以上に上り、「#カヌレ専門店」だけでも8,000件以上の投稿があり、全国各地のカヌレ専門店の多様なカヌレの写真がアップされている。

当日焼き上げたカヌレだけを販売「カヌレ堂」

Instagramでもっともよく目にするカヌレ専門店が「カヌレ堂」。大阪で3店舗を展開しており、「#カヌレ堂」のハッシュタグが付いた投稿は約3万件ある。

  • 「カヌレ堂 CANELE du JAPON 桜川店」。Instagramには店頭ののれんを映した写真も目立つ

1号店である「カヌレ堂 CANELE du JAPON(カヌレ ドゥ ジャポン)桜川店」がオープンしたのは2012年。現在は2号店の「CANELE du JAPON doudou(カヌレ ドゥ ジャポン ドゥドゥ)」(大阪・堂島)や3号店の「長堀橋店」もある。

「カヌレ堂をはじめた2012年頃はまだカヌレの知名度が低く、"大きくて甘ったるい"というイメージを持つ人もいました。カヌレの本来の美味しさを多くの人に知っていただきたいと思ったのがオープンのきっかけです。ひと目見ただけでカヌレ堂のものとわかるような、日本の食材や四季を感じる"日本のカヌレ"を目指しました」とカヌレ堂スタッフの今岡和子さん。少しずついろいろな種類を好む日本人の傾向を取り入れたのだという。

  • カヌレ堂の一口サイズのかわいいカヌレ(各120円~)は1個から購入可能

きなこや抹茶、ほうじ茶などを使った定番カヌレ6種類のほかに、季節のカヌレ2種類を用意。1番人気は、バニラとラム酒の香るプレーンタイプの「しろ」だという。

SNS上では、「種類がいっぱいで迷った」「どれにするか迷うのも楽しみ」といった声も多く、食べたあとの感想も「和風のものが多くてとても上品」「大きさもちょうどいい」など満足度が高いものが目立つ。

こだわりはその日焼き上げたカヌレしか販売しないことだそうで、通販などは一切していない。また、全種類生地から味が違うので一つ一つに個性がある。意外に男性客も多く、「お土産で買って行ったら女性社員に喜ばれたから」と再訪する人もいるそうだ。

沖縄発の黒糖カヌレ専門店「ほうき星」

沖縄で初めての黒糖カヌレ専門店「ほうき星」もInstagram投稿が6,000件近くある人気店。2018年に港川本店を、2019年に那覇空港店をオープンした。

  • 「焼きたてカヌレ8個入」(1,296円)

カヌレの専門店にした理由を聞くと、「沖縄は海も綺麗ですが、夜空に輝く星もとても美しく、星の形とカヌレの形が似ていることから、カヌレに着目し、店名も『ほうき星』になりました」と港川本店店長の伊藤ちひろさん。

地元の食材を取り入れた小ぶりで色とりどりのカヌレは全10種類。一番人気の「プレーン」には多良間産の黒糖が使われており、ほんのり控えめな甘さ。プレーンのほかに「パイナップル」「ドラゴンフルーツ&シークヮーサー」など南国らしいフルーツを使ったもの、店名の"ほうき星"をイメージしてかわいい星型のホワイトチョコレートを乗せた「星×バナナ」などもある。Instagramの投稿を見ると、「宝石箱みたい」「食べるのがもったいない」など見た目にときめいている人も多い様子。

観光地にある港川本店の客層は国内外の観光客から地元の人まで幅広い。一方、那覇空港店は、国内線に店舗があるため、ほとんどが日本人観光客。那覇空港店では、約1ヶ月日持ちする冷凍カヌレも販売しているので、お土産にもよさそうだ。

土日祝限定、行列のできるカヌレ専門店「ダンラポッシュ」

ベーシックなカヌレも人気だ。東京・学芸大学の「Dans la Poche(ダンラポッシュ)」は、有機小麦粉、平飼いの卵、甜菜糖といったこだわりの材料を使ったカヌレ専門店。土日祝日の営業のみだが、Instagramには1,000件近い投稿がある。開店前から行列ができ、午前中のうちに売り切れてしまうことも少なくない。

オープンは2018年。店主の内藤裕子さんは店を始めたきっかけについて、「ワインと甘いものが好きだったので、ワインを飲みながらおつまみのように楽しめるスイーツを探しており、カヌレにたどり着きました。ワインに合うカヌレや原材料にこだわったカヌレが市販されていなかったので、自分で始めようと思いました」と話す。

  • ワインと楽しめるDans la Pocheのカヌレ(各300円)。店頭ではワイングラスに入れて断面を見せた見本を置いている

カヌレの種類は、ラム酒とバニラビーンズが香る王道の「プレーン」など定番フレーバーのほか、季節ごとに限定フレーバーも登場する。店頭では「プレーン」と日替わりでもう1種類のフレーバーを販売。当日に焼いた焼きたてのカヌレを購入できる。オンラインショップでは冷凍で販売しており、定番フレーバーをすべて注文できる。

「プレーン」以外の定番フレーバーは3種類。白ワインと合わせるなら柑橘の香りが楽しめるティムールペッパー(山椒の一種)を使用した「スパイス」、赤ワインと合わせるならチョコベースのカヌレにフランスバスク地方の名産ピーマンデスプレット(バスク唐辛子)を入れたほんのり辛みのある「ショコラバスク」がおすすめ。ほかにマダガスカル産のチョコをブレンドし、イチヂク、くるみ、カカオニブの食感が楽しめる「チョコ」がある。

ボルドーで生まれた本来の作り方にならって、蜜蝋と銅型を使って外側のカリッとした食感を出しているそうで、Instagramでも「外はザクザク、中はしっとり」「中のやわらかさ具合が好き」など食感にまつわるコメントも多い。ワインと合わせた写真の投稿も目立つ。スイーツ好きな女性からワイン好きの男性まで、幅広い人が訪れているという。

カヌレ専門店の増加とともに、カヌレファンを増えている。味わいが多彩なので、いろいろ食べ比べるのも楽しいし、手土産や旅行のお土産にも使える。仕事終わりや週末に、カヌレとコーヒーやワインでほっとひと息つく時間をとるのも安らぎそうだ。

※価格は特記がない限り税込