「昨日のメールはご確認いただけましたか」
ビジネスシーンにおける何気ない一言のようにも見えますが、会話の中でこのフレーズが聞こえたら危険信号。コミュニケーションに失敗している可能性があります。
ビジネスメールでは、報告や連絡、相談はもちろんのこと、問い合わせや依頼など、さまざまな用件が送られてきます。どのような用件であっても、円滑なコミュニケーションを取るために押さえておきたい二つのポイントがあります。それは「レスポンス」と「タイミング」です。
「レスポンス」で相手の発信を受け止める
一つめのポイントは「レスポンス」。つまり、相手からの発信に反応を示すということです。
対面でのやり取りを想像してください。例えば、上司の方から、クライアントに提出する提案書の作成を依頼され、参考資料を手渡されたとします。その際には、「かしこまりました」「資料を確認いたします」など、状況に応じた返答をしますよね。仮に、表情を変えることなく無言のまま受け取ったらどうでしょう。上司の方は「理解できただろうか」「大丈夫だろうか」と不安になるはずです。もっとも、その前に「返事くらいしなさい」と注意されることでしょう。いずれにせよ、問題になる反応です。
ところが、この問題になる反応。メールにおいてはしばしば見かけることがあります。上司からの依頼のメールを読み、黙々と提案書の作成に取りかかる。おそらく本人としてみれば、職務を全うしているつもりでしょう。悪意はまったくないはずです。しかし上司の立場で考えると、無言のまま参考資料を受け取られたのと変わりありません。相手の発信を理解できたことを示す「レスポンス」が大切なのです。
提案書の作成、承りました。
添付していただいた参考資料も後ほど確認いたします。
分からないことがあれば相談させていただきますので、
よろしくお願いいたします。
このような返信があれば、「依頼を受けたこと」「間違いなく参考資料が添付されていたこと」が上司の方も確認できます。「分からないことがあれば相談する」と書くことで熱意も伝わるでしょう。相談がなければ、順調に進んでいるという安心につながるかもしれません。
メールを返信すべき適切なタイミングとは
「レスポンス」を示すことと併せて、もう一つ大切なポイントがあります。それが「タイミング」です。せっかくの「レスポンス」も、適切な時機を逃してしまうと意味がありません。
営業マンに、クライアントから問い合わせのメールが届いたとします。最も適切な返信のタイミングはいつでしょうか。「できるだけ早く」のような曖昧な答えではありません。正解は「そのメールを読んだとき」です。
メールをくださりありがとうございます。
お問い合わせいただきました〇〇については、
明日の15時までにご回答いたします。
すぐに答えが出せる内容であれば、もちろんすぐに回答をします。とはいえ、すぐに回答できる問い合わせばかりとは限りません。その際には、上記のように「メールを受領したこと」と「回答期限」を返信します。回答までに時間がかかる理由なども添えておくと、より相手に安心感を与えられます。
一方で、問い合わせのメールを送ったクライアントから電話がくると、次のような応答をする営業マンを見かけることもあります。
「メールでお問い合わせいただいた件ですよね……」
これこそが、コミュニケ-ションに失敗している可能性がある反応。
「メールを送ってくれれば電話はいらないのに」
多くの営業マンがそう思っているはず。時には、メールを送った後で電話をする人をやゆする声さえ聞くことがあります。正直なところ、私もメールを送って同じことを伝えるだけの電話は、基本的に不要と考えています。ただし、電話をしてくる相手の方を非難する前に、自身が適切なタイミングで返信ができているのかは、ぜひ振り返ってみてください。相手の方は「レスポンス」が無いことに不安を感じているだけかもしれません。メールを読んだ「タイミング」で返信していれば、その電話は無かったかもしれないのです。
誤解しないでいただきたいのは、メールが届いたらすぐに返信するということではありません。それだとメールに振り回されてしまいます。メールは「返信できるときに読む」そして「読んだらすぐに返信する」これだけです。
朝にメールチェックの重要性
「読んだらすぐに返信する」。これを実現するためには、あらかじめメールを処理する時間を確保しておくことが効果的です。可能であれば、一日に3回、朝・昼・夕方くらいのタイミングで時間を確保することがおすすめ。中でも、特に重要な時間帯が朝です。
仕事でメールを使っていれば、出社したらまずメールを確認するという方も少なくありません。前日に送ったメールであれば、翌朝にはきっと相手も確認するだろうと考えるのは、想像に難くありません。
そのタイミングでレスポンスがないと「メールは見てもらえただろうか」と不安になったり、「後回しにされているのではないだろうか」と不信感を覚えたりする可能性があります。朝のタイミングでレスポンスができれば、少なくとも「昨日のメールはご確認いただけましたか」という会話は発生しません。
メールは双方向のコミュニケーションツールです。確認して内容を理解しただけでは、コミュニケーションが成立したとはいえません。「レスポンス」と「タイミング」。この二つを押さえておくと無駄なやり取りが発生するのを防ぐことができます。相手に安心感を与えた上で、円滑なコミュニケーションが実現できるでしょう。