メールは、仕事をする上で欠かせないコミュニケーションツールの一つです。相手に好印象を与えることができれば、それだけで仕事をスムーズに進めることにつながるはず。ここで押さえておきたいビジネスメールの基本があります。それは、メールのやり取りは「一往復半」が理想ということです。

「一往復半」とは次の状態を指します。

(1)自分から送信 自分→相手
(2)相手から返信 相手→自分
(3)自分から返信 自分→相手

これを意識することで、コミュニケーションの質を高めることが期待できるのです。

相手の負担を軽減することが効率化につながる

特に目的を持たない雑談であれば、まとまりのない会話が何往復も続くことがあります。しかしビジネスメールでは、ダラダラとやり取りが続くことは好まれません。仕事上のやり取りであれば、物事が円滑に前に進むことが重要。例えば、打ち合わせの日程を調整するケースで考えてみましょう。以下は、A社のプレゼンを来月に控えた営業部の山田さんと企画部の田中さんのやり取りです。このようなコミュニケーションは、決して円滑とは言えません。

山田
来月のA社のプレゼンについて、打ち合わせしたいのですが。

田中
そうですね。いつにしましょうか。

山田
日程はお任せします。できるだけ早い方がいいですね。

田中
それでは来週の月曜日はいかがでしょう。

山田
すみません。その日は別のクライアントとの約束があります。

これがメールのやり取りだとしたら、とても非効率ですよね。日程が決まるまでに何往復もメールが行き交うことになりそうです。スタートからこれでは先が思いやられます。この段取りの悪さを思えば、プレゼンの成功も危ぶまれるのではないでしょうか。次のように改善すると、「一往復半」で用件を完結することができます。

山田
来月のA社のプレゼンに向けて打ち合わせをしたいのですが、
以下の日程でご都合はいかがでしょうか。

■候補日時
・12月6日(月)11時~15時
・12月8日(水)10時~16時
・12月9日(木)13時~17時

30分ほどいただければと思います。

ご確認よろしくお願いいたします。

田中
分かりました。打ち合わせは、以下の日時でお願いできますか。
・12月8日(水)10時~

山田
ありがとうございます。
それでは12月8日(水)の10時からよろしくお願いいたします。

ポイントは、打ち合わせをする理由や目的を伝えた上で、候補日について具体的な選択肢を提示していることです。相手の都合を尊重しようと「お任せします」のような投げかけをしてしまう人もいますが、これは相手にとって意外と動きづらいもの。仮に「来週の月曜日」とピンポイントで日時を返答されても、別の予定が入っていれば再び調整をお願いすることになり、無駄なやり取りが続くことになります。

もちろん、候補日を提示することが必ずしも正しいわけではありません。相手との関係性や状況によっては、かえって失礼になるケースもあります。大切なのは、調整に必要な要素をいかに先回りして伝えられるかということです。これが社外の方との打ち合わせともなればなおさら。日程はもちろん、打ち合わせの場所や所要時間、同行者の有無など、さらに多くの要素を考慮する必要があります。

今回のようにお互いに打ち合わせの必要性を感じているのであれば、あらかじめ候補日を提示することによって相手の負担は軽減されます。これこそが効率的なコミュニケーションを生み出します。

効率的なコミュニケーションは、なにも日程調整だけに限りません。例えば、上司に相談をする、判断を求めるといった難しい状況においても同様です。単に「どうしましょう」と相手にすべてを委ねるのではなく、あらかじめ具体的な考えや対応策を提示することが、相手からの早い判断を引き出すことにもつながります。場合によってはYES・NOだけの判断で済むこともあり、効率的なコミュニケーションが実現できます。

「一往復」コミュニケーションの危険性

コミュニケーション効率を高めることは、その後の業務を円滑に進めることにつながります。ただし効率だけを重視してしまえば、思わぬ失敗やトラブルを招くこともあります。特に「一往復」だけで終わってしまう、短すぎるコミュニケーションには注意が必要です。

先ほどの日程調整を、別のケースで考えてみましょう。

山田
来月のA社のプレゼンに向けて打ち合わせをしたいのですが、 12月8日(水)の10時はご都合いかがですか。

田中
はい、その日でしたら大丈夫です。

わずか「一往復」。ここでやり取りが終了してしまったら、果たして無事に打ち合わせは行われるでしょうか。

山田さんは田中さんのスケジュールの確認が取れたことで、すっかり安心しています。一方、田中さんの立場からすれば、その日が対応可能だと答えただけ。実際にその時間で打ち合わせが行われるとは思っていないかもしれません。いざ当日を迎え、田中さんはまったく打ち合わせの準備ができていないということも。「一往復半」の基本に従えば、山田さんからもう一度、時間の了承を得る最終確認のメールを送るべきでした。こうしたコミュニケーションエラーを防ぐためにも「一往復半」のやり取りは有効です。

相手の感情に寄り添うことが大切

「一往復」だけの短すぎるやり取りには、さらに大きな問題もあります。それは相手の感情をないがしろにしてしまう可能性があることです。

業務を進める上で行き詰まりが生じ、上司の方に相談のメールを送ったとしましょう。忙しい上司の方が、仕事の合間を縫ってアドバイスを返信してくれたとしたら、当然、もう一度お礼のメールを送りますよね。

ご返信いただきありがとうございます。
アドバイスをいただき解決の糸口が見えました。

仮にこの返信がなければ、上司の方はどう感じるでしょうか。「メールは届いただろうか」あるいは「自分の返信が役に立たなかったのだろうか」と心配になるはずです。場合によっては「忙しい中、せっかくアドバイスをしたのに無礼なやつだ」と怒りを覚える可能性すらあります。

仕事をする上では、相談に限らず質問や依頼など、さまざまなやり取りが発生します。ここでも忘れてはならないのが「一往復半」のコミュニケーションです。

(1)分からないことを質問 自分→相手
(2)質問に対する回答 相手→自分
(3)お礼 自分→相手

(1)資料の作成を依頼 自分→相手
(2)完成した資料の送付 相手→自分
(3)お礼やねぎらい 自分→相手

自分の用件が片付くと、そこでコミュニケーションを終えてしまう人がいます。自分が送ったメールに対し、相手は少なからず時間や労力を費やしています。それに対してお礼やねぎらいを伝えるのは、当然の流れですよね。最低でも、そのメールを確認したことくらいは返信すべきでしょう。

メールは双方向のコミュニケーションツール。効率だけを重視するあまり、相手の感情を無視することがあってはなりません。相手の感情に寄り添い、その上で効率的なやり取りをすることが求められます。それを実現するのが「一往復半」です。コミュニケーションの質を高めるためにも、ぜひ「一往復半」のやり取りを心がけてみてください。