届いたメールを開いたものの、「やっぱり後にしよう」と反射的に閉じてしまう。メールの対応を先送りにしてしまった。そんな経験はありませんか。いったいなぜ後にしようと思ったのでしょうか。「難しそう」。それとも「時間がかかりそう」。とにかく「今は読みたくない」と感じさせる、何らかの心理的要因が働いていたはずです。

新型コロナウイルスの影響により、テレワークの普及、コミュニケーションの非対面化が急速に進みました。自分が送ったメールが相手に先送りされるようだと、仕事がスムーズに進みません。メールを送ったのに返事がこない、相手から望む対応が得られないといった事態に直面します。

円滑な業務の進行に支障をきたす「先送りされてしまうメール」。実は、これには一つの特徴があります。それは「見た目」が悪いことです。

明暗を分けるのは第一印象

『人は見た目が9割』。ミリオンセールスを記録した書籍のタイトルです。コミュニケーションの要素を「言語」と「非言語」に分解し、何を話すかという「言語情報」よりも、見た目や話し方などの「非言語情報」の重要性について書かれています。まさに「非言語コミュニケーション」の入門書とも言える一冊。

メールは一般的に「言語コミュニケーション」の代表として語られることがほとんどです。しかし、読みやすいメール、理解しやすいメールを書くための最大のポイント、それが「見た目」なのです。

私たちは初めて会う人に対して「爽やかな人」とか「優しそうな人」と、さまざまな印象を抱きます。時間にしたらわずか数秒、これが第一印象です。

第一印象が良いと、その後の話も好意的に受け止めてもらいやすくなります。一方で、第一印象が悪いと、相手に警戒されたり、そもそも話を聞いてもらえなかったり。話の内容ではなく見た目の印象が、相手の受け止め方に大きな影響を及ぼします。

開いたメールを反射的に閉じてしまう。となると、そのメールは読まれてすらいません。内容以前の問題です。メールを開いた瞬間に「難しそう」「時間がかかりそう」と悪い印象を持たれてしまうことが、先送りされる原因になっているのです。

ビジネスメールで円滑なコミュニケーションを望むならば、相手に「読みやすい」と感じてもらうことが大切です。「先送りされてしまうメール」は、メールの第一印象、つまり「見た目」を変えることで改善できます。

第一印象を良くする三つのポイント

相手が「読みやすい」と感じるメールを書くポイントは、以下の3つです。

  • 適度な改行
  • 行間の活用
  • 1文を短く

適度な改行

1行の文字数は20~30字程度が適当です。文字数が多すぎると予期せぬところで改行され、相手にとっては読みづらくなることも。一方、原稿用紙に書くように、文字数をぴったり合わせる必要もありません。文節の区切りで適度に改行しましょう。

スペースの活用

パッと見たときに文字がぎっしり詰まっていると、相手は読むのが面倒だと感じます。目でしっかりと文字を追う必要があり、内容を理解するためには集中力が必要。5行以内を目安に、意味のかたまりごとに行間をあけましょう。

1文を短く

1文にあれこれと内容を詰め込むことが、用件が正しく伝わらず、誤解を与える原因に。1文で一つのメッセージだけを伝えるのが基本。最大でも50文字程度になるよう、長い文は2文、3文に分けましょう。

この三つのポイントを意識することによって「見た目」が改善されます。そして、この「見た目」を改善するメリットは、単にメールを読みやすくすることだけではありません。

「見た目」の改善で効率アップ

これは、ある営業パーソンが上司に送った、取引先との商談結果を報告するためのメールの一部です。

本日の商談では契約まで至りませんでしたが、予算をオーバーしているため、社内で調整とのことで、サービス内容には魅力を感じてもらえていますので、受注できると思います。

このメールの問題は、読みづらいことだけではありません。

この報告には、大きく四つの情報が含まれています。

  1. 結論(契約に至らなかった)
  2. 取引先の状況(予算を調整中)
  3. 自身の予測(受注できると思う)
  4. そう考える根拠(サービスには魅力を感じている)

これらの情報が1文に入り混じっていることが問題なのです。上司の方はメールを読みながら、一つ一つ頭の中で情報を整理し直すことになるでしょう。そのため正しく内容を理解するためには、時間がかかってしまうのです。

これを三つのポイントにならって改善すると、以下のようになります。

本日の商談では、契約まで至りませんでした。
予算をオーバーしているため、社内で調整中とのことです。
 
サービス内容には魅力を感じてもらえています。
予算の問題さえクリアできれば、受注できると思います。

ビジネスにおいて、「事実」と「意見」は切り分けて伝えることが大切です。書き手にとってメールの「見た目」を意識することは、情報の整理にも大いに役立つはず。相手も瞬時に内容が理解でき、誤解を招くこともなくなります。

「見た目」の改善でメールの第一印象をアップさせましょう。「読みやすいメール」「理解しやすいメール」を書くことが、コミュニケーション効率を向上させるために最も有効な方法です。