新型コロナウイルスの影響により、経済活動はいま大きな打撃を受けています。企業活動においてもテレワークが推奨されるなど、対面による人と人との接触が大きく制限されています。これまで以上に、メールでコミュニケーションを取る機会も多くなっているのではないでしょうか。このような状況だからこそ、ビジネスメールの中でのちょっとした一言が大きな意味を持つのです。

自粛生活がもたらしてくれたチャンス

この数カ月の間に「Zoom飲み会」という言葉をよく耳にするようになりました。ビデオ会議システムを利用することで、自宅にいながらにして同僚や友人たちとの飲み会に参加できると話題を集めています。ついつい盛り上がり、気づいたら日付が変わっていたなんて話も聞こえてきました。

自粛生活の中で自然と失われていった人とのコミュニケーション。こうした新しい楽しみ方が生まれた背景には、多くの人がコミュニケーションに飢えていたという側面も考えられるのではないでしょうか。

これまで当たり前のように存在していた一つ一つのコミュニケーションが、とてもありがたく感じられます。もちろんメールでの仕事のやり取りも、コミュニケーションの一つです。とするならば、仕事のやりとり一つとっても、これまで以上の喜びが感じられるかもしれません。こんなときだからこそ、いまは取引先の方とより良好な関係を築くチャンスなのです。

効率化よりも大切なこと

いま、ビジネス環境が大きく変化しています。テレワークによって通勤や移動時間が削減され、ビデオ会議システムによって効率的に会議や打ち合わせができるようになりました。便利さや効率の良さを感じる一方で、希薄になっていったこともあります。「空間を共有することで得られていた感覚」「対面コミュニケーションでこそ感じられていた感情」などがそれです。

ビジネスメールでは、用件を簡潔にわかりやすく伝えることが大切です。ですが、このような時期だからこそ、感情を示すこと、気持ちを表現することが求められているのです。

「〇〇様もどうかお体にはお気をつけください」

メールの最後にこう一言書き添えられているだけでも、相手の心遣いが感じられ、心温まるのではないでしょうか。無事に仕事が片づいたお礼とともに、気遣いの言葉を添えてみる。物事の区切りがついたタイミングでの心温まる一言が、きっと相手との関係構築につながるはずです。

具体的なアプローチがより心に響く

新型コロナウイルスは、ビジネスにおいて、さまざまな変化の必要性ももたらしています。これまで店内飲食を主としていたお店が、テイクアウトやデリバリーを始めているのを目にするようになりました。私ども日本ビジネスメール協会が開催している各種講座も、この4月からオンライン化をスタートさせています。

いま各社のホームページを見てみると、多くのサイトで新型コロナウイルスに対する対応策が記載されています。その中には、新しいサービスのご案内なども数多く見かけます。もし、取引先のホームページでそういった情報を見かけたら、それは大きなきっかけとなりえます。見逃す手はありません。

「ホームページ拝見しました。新しいサービスを始められたのですね」
「新しいサービスはとても魅力的ですね。ぜひ利用してみたいです」

メールの相手が、自社の動向に注目してくれている。あるいは自社のサービスに興味を持ってくれている。となれば、それはこの上なく嬉しいことです。それをきっかけに新たなやりとりが生まれれば、より一層相手との距離は近づくことでしょう。

いずれは新型コロナウイルス問題も終息を迎える日がくるはずです。いまやりとりをしている方とも、「あのときは大変だったね」「あのピンチをお互いよく乗り切ったよね」と言い合える日常が訪れます。大変な時期だからこそ、そのときに交わしたコミュニケーションは深く印象に残ることでしょう。ビジネスメールでのちょっとした一言が、将来にわたる良好な関係をもたらし、絆を深めることにつながるのです。

井上賢治

一般社団法人日本ビジネスメール協会認定講師
1974年生まれ。宮城県出身。大学卒業後、大手製紙メーカーグループの印刷会社に勤務。入社3年目で営業成績1位を獲得。翌年にはその経験を活かし、新たな印刷会社の立ち上げに参画。新規開拓において数多くの実績を残し、出版物の制作や大手企業のセールスプロモーションを手がける。その後、ヘッドハンティングにより移籍した会社では東京支社長に就任、20名の部下を統括する。テレアポや飛び込み訪問による営業スタイルを確立していたが、さらなる受注拡大の実現、そして組織全体の営業力強化、人材育成など、幅広い業務を担うなかでビジネスメールの有用性を実感。1通のメールがコミュニケーションを円滑にし、業績向上にも結びつくとの想いから、認定講師としての活動を開始。営業経験、管理職経験を活かした実践的なビジネスメールの指導を得意とする。

日本ビジネスメール協会

日本で唯一のビジネスメール教育専門の団体。ビジネスメールに特化した講演・研修などの事業を10年以上前から行っており、これまでにメールに関する書籍を中心に29冊出版(内3冊は翻訳され台湾で出版)。メディアには1,000回以上登場し、ビジネスメールについて情報発信してきた。仕事におけるメールの利用状況と実態を調査した「ビジネスメール実態調査」を2007年から毎年行っており、本調査は、日本で唯一のビジネスメールに関する継続した調査として各メディアで紹介されている。ビジネスメールに関する研修(講師派遣)や講演(公開講座)を実施。オンラインにも対応。ビジネスメールを学ぶ「ビジネスメールコミュニケーション講座」は東京を中心に毎月開催。研修の問い合わせも受け付け中。