相手のビジネスメールがうまいと感じたことがある人は約80%。その理由は様々ですが「質問が具体的で答えやすい」「先回りした情報が書かれている」という回答があります。(※ビジネスメール実態調査2018より)

上手なメールは返信がラク

こうしたメールをうまいと感じるのは「返信負担が少なく、早く返信ができる」ということがあります。

受信後、具体的に何をしていいかわからないと、結局、詳細の確認や、メールの意図を確認するためこちらから再度メールを送ったり、電話をかけたり。また、条件を数パターンに分けて回答する等、複雑化した返信のメールを書かなければならないこともあります。具体的に、事例でみていきましょう。

研修講師へ、研修終了後の請求書・完了報告書送付依頼

例えば、研修で外部の講師へ依頼を行いました。研修終了後に講師から完了報告書と、請求書の送付を依頼する場面です。この場合のビジネスメールの書き方がこちらです。

箇条書きでわかりやすく、一見ビジネスメールとして成立しています。文面が失礼など、特に不快感を抱くことはなく、よく見かけるメールです。しかしメールを受信した側は、どのような報告書が必要なのか、締め切りはいつか、また請求書はPDFでよいのか、郵送が必要なのか等、わからないことが多々あります。これを確認するためにメールを送るのは二度手間ですし、確認せず自分が考える報告書を送って書き換えを依頼されれば、やはり二度手間になります。

では先回った具体的なメールだと、どうなるのでしょうか。

後者のメールは相手を悩まさない

後者のメールだと、まず提出期限が明確。報告書の様式も添付されているので、必要事項を記入して提出するだけで済みます。提出先の記載や請求額について明確に記載されているのもポイントです。

提出先はこのメールをやり取りしている人だから、あえて書く必要はないとも考えられますが「請求書は経理担当へ送ってほしい」という企業もあることを見越して、記載されているのでしょう。また、請求額、税額や交通費を文面に書かれる場合もあります。この場合請求側は、自分の計算額と突き合わせた上で、請求書を送ることができます。

期日や金額を書くのは失礼ではない

「提出期限や金額を明確に書くと、失礼に当たるのでは」と書かない方もいます。しかしその遠慮のせいで、余計なやり取りが増え「無駄な手間がかかる」「不親切」と相手に思われているかもしれないこと、また書いてある方が効率的で親切だと、喜ばれる方もいます。

もちろん期限を書くなら、少し期限に余裕を持たせるなど一定の配慮も必要です。また金額に関しては、事前の条件通りの金額を記載すれば、何も失礼ではありません。どうしても抵抗があれば書かないのもよいですが、事前に電話連絡で期日と金額を確認してから、メールを書くという方法もあります。

丁寧な準備と配慮が、仕事のスピードも質もあげる

仕事ができる人というのは、常に先回りして動きます。メールを受信した後、相手にどんな仕事が発生するか、どういう情報を準備すればスムーズに進むかを想定しメールに反映させているのです。

一見メールの文量は増え、手間や時間はかかりますが、それだけ相手のために丁寧に仕事を進めているということであり、それゆえに相手のミスも減ります。ストレスを抱えながら無駄なやり取りを何度も行うよりも、結果ずっと効率的。さらに「〇〇さんのメールはわかりやすい」が積み重なり、相手の方からの信頼にもつながっていくでしょう。

長野ゆか

長野ゆか

一般社団法人日本ビジネスメール協会認定講師。元大阪府八尾市職員。情報システム部門に在籍し、市役所内部や自治体間、教育機関、大手IT企業のSEや営業の担当者等とのやり取りやりとりを行う中で、電子メールを主なツールとして利用。また市民からのメールに対して、返信を行う総合窓口業務経験をもち、これまでの電子メールの送受信実績は、10万通を超える。整理収納アドバイザー1級認定講師(全国24名)、情報資産管理指導者等の資格をもち、オフィスの片付け・コンサルティング等を実施しており、オフィスファイリングシステムの構築を基本とし、データや電子メールの効率的な管理・共有・分類も得意分野としている。自治体、青年会議所、税理士事務所から一般の状況企業まで、ビジネスメール・ビジネスマナー・オフィスの整理収納・ファイリングセミナーなど、多数の企業研修を実施。一般公開講座としては、毎月大阪・奈良にてビジネスメールコミュニケーション講座を開催。著書に『この1冊で安心!!新人公務員のメールの書き方』(学陽書房)がある。

日本ビジネスメール協会

日本で唯一のビジネスメール教育専門の団体。ビジネスメールに特化した講演・研修などの事業を10年以上前から行っており、これまでにメールに関する書籍を中心に28冊出版(内2冊は翻訳され台湾で出版)。メディアには1,000回以上登場し、ビジネスメールについて情報発信してきた。仕事におけるメールの利用状況と実態を調査した「ビジネスメール実態調査」を2007年から毎年行っており、本調査は、日本で唯一のビジネスメールに関する継続した調査として各メディアで紹介されている。ビジネスメールに関する研修(講師派遣)や講演(公開講座)を実施。2時間でビジネスメールを学ぶ、「ビジネスメールコミュニケーション講座」は東京を中心に毎月開催。研修の問い合わせも受け付け中。