「飲み会に着ていく服がない」と感じた経験はありませんか。週末開催のイベントに誘われたとき、はじめて私服の問題に気づく男性が多いようです。「クローゼットを開けてみたら、スーツ・ゴルフウェア・普段着しかなかった」という声を耳にします。着用頻度・重要性が高いとはいえないからこそ「休日の私服」は後回しになるのでしょう。

とはいえ、学生と違い、大人としての振る舞いが求められるからこそ、私服選びは「普段着以外の服をもつ」ことが大事。どんなにおしゃれに見えたとしても、学生時代とは求められる印象が変わるからです。

  • 学生時代の感覚で私服を選んでいませんか?(写真:マイナビニュース)

    学生時代の感覚で私服を選んでいませんか?

普段着とはちがう「よそ行き服」とは一体どういうものなのか。服のコンサルタントが「30代男性の私服問題」を解決する3つの視点をお伝えします。

着たい服より「期待される服」

30代から私服選びは変わります。着たい服より、「期待される服」が求められます。とくに、ホームパーティー・交流会・飲み会など、初対面で人に会うイベントに顔を出す場面です。

学生時代は個性の演出を目的とした「ファッション要素」が強い私服で十分でした。ところが、30代は人間関係を円滑にする「コミュニケーション要素」が私服の役割として強まります。これまで以上にさまざまな価値観を持った人たちと交流する機会が増えるからです。

そういう意味で、カジュアル要素が強いGジャンや、ミリタリー要素が強いブルゾンは「よそ行き服」にしづらいところ。カジュアル服をよそ行きに見せるためには、センスが求められます。特に、学生時代のあどけなさが消えた30代が着たとき違和感が生まれるリスクが高いのです。そこで、ファッションに自信がない方に「テーラードジャケット」を、私はお薦めしています。

「ジャケット=大人が着ている」イメージが強く、マイナス印象のリスクが低いことが利点です。まずはテーラードジャケットを週末仕様に崩してみてはいかがでしょうか。

たとえば、ジャケットに合わせるインナー。普段の発想から、「襟が付いたシャツ」を思い浮かべるかもしれません。ですが、「襟がないカットソー」を合わせることも可能です。ジャケットスタイルの幅は、合わせ方次第で劇的に広がります。

  • 襟なしカットソーとジャケットの組み合わせ

清潔感を出す白アイテム

服をコミュニケーションツールとして考えたとき、清潔感は欠かせません。お薦めは、インナー・パンツ・靴のどこかに「白いアイテム」を入れること。病院の白衣同様、「白=クリーン」なイメージが強く、積極的に取り入れたいところ。そして、意外かもしれませんが簡単な白アイテムは「スニーカー」です。

足元に合わせた白スニーカーは、ほぼ何色のパンツでも合わせられます。もちろん、汚れやすいという理由から敬遠していた男性も多いことでしょう。

長持ちの秘訣は、水を付けたメラミンスポンジでキュキュッと拭うだけ。革靴のクリーム・クリーナー感覚で水とスポンジで手入れ可能です。

アンダー1万円の白スニーカーもファストファッションで見掛けます。初心者が手に取りやすい価格帯です。このとき、パンツ丈をいつもより短めに設定しましょう。スニーカーは見た目以上にボリュームがあるため、余ったパンツ生地が靴に覆いかぶさると野暮ったく見えます。靴にちょうど当たる程度、ソックスがチラッと見えるか見えないかくらいがスニーカーに合うパンツの最適丈です。

  • 白スニーカーにあわせたパンツスタイル

センスでなくレシピ

私服のコーディネートは料理に似ています。レシピ通りに着るだけでファッションに疎い男性も、それっぽい恰好に見えるからです。逆に、私服で失敗する男性の多くは「私服=ファッション」という固定観念にとらわれているよう見受けられます。無理な個性を演出よりも、マイナス要素を避けるという位置づけで大人の私服は劇的に変わります。

簡単にできる30代の私服レシピは、ジャケットを軸にした格好。「襟がないカットソー」「白スニーカー」「いつものパンツ」を合わせてみてはいかがでしょうか? もちろん、着用頻度が低いとはいえ、いつも同じ格好をしている訳にはいきません。だからこそ、レパートリーも必要ですね。

着回しを簡単に増やしたいならば、インナーのバリエーションを増やしましょう。たとえば、ボーダー柄のカットソーをくわえるだけで、ジャケットスタイルに幅がでます。一方、雰囲気をガラッと変えたいならば、白パンツを合わせます。この時、靴はザラッとしたスエード革を合わせましょう。こうするだけで私服も大人っぽい印象に見えます。

  • 着まわしのバリエーションを増やす

学生時代は私服が基本だからこそ自由でした。ところが、30歳を過ぎるころから人間関係や立場は劇的に変化しています。だからこそ、求められる私服も変わるのです。センスを鍛えるという高いハードルを目指さず、全身の組み合わせをレシピ化する習慣を身に付けましょう。

著者プロフィール: 森井良行(もりい・よしゆき)

エレガントカジュアル 代表取締役
20代後半から40代の男性のファッションを「エレガントカジュアル」でワンランクアップさせる「服のコンサルタント」。 街のセレクトショップを歩き、顧客に試着を繰り返してもらいながら、その人に最も似合う服を探していく独自の「買い物同行」は9割以上の高い満足度を誇る。著書『毎朝、迷わない! ユニクロ&ツープライススーツの上手な使い方』 (WAVE出版)