続いて女性編です。就活で使用する女性用ブラウスは、大きく分けて「レギュラーシャツ」と「スキッパーシャツ」の2種類があります。どちらを着用しても選考に影響することはありませんが、気をつけるべきポイントがあります。

最近の就活生はどちらかというと「スキッパーシャツ」を選ぶ女性が多いといわれています。「スキッパーシャツ」は開襟シャツとも呼ばれ、第一ボタンのないシャツです。襟はジャケットの外に出しても中にしまってもOKです。襟を出し、左右に開いて着用すると、首の短い人はすっきりとシャープに見えます。また首元が縦に広く開くので、明るく活発な印象を与えます。

  • インナーの襟の型で印象が変わる

    インナーの襟の型で印象が変わる

ただし、ジャケットの襟幅よりも大きく襟を出すのはNGです。大きすぎる襟は、全体のバランスを崩してしまい、だらしない印象になってしまいます。また後ろ襟も外に出して着用するので汚れやすいですから、着用する際は小まめにチェックしてください。

一方スキッパーシャツに比べ、上品で信頼できる印象となり、誠実さをアピールできるのが「レギュラーシャツ」です。「レギュラーシャツ」とは第一ボタンがあるシャツのことです。ノーネクタイ時の男性のシャツマナーとは違って、第一ボタンは必ず留めましょう。ボタンがあるのに留めていないと、着崩しているように見られます。第一ボタンを開けて着たい人はスキッパーシャツを選ぶべきということです。

さらに、定番ではありませんが、マナーを守れば襟のないシャツでもOKです。最近は、クールビズの制度が広まってきたこともあり、多くの企業でスーツのインナーを襟なしシャツにしても問題ないと言えます。

ただし、職種によっては避けた方がよいところも多くあります。銀行や国家公務員、証券、保険などは取り扱うものが個人情報や政府機関の情報であるため、秘密を厳守できる誠実さが求められます。その誠実さをアピールするためにも、レギュラーシャツがふさわしいといえます。

襟なしシャツを選ぶ際に気をつけなければならないポイント2つあります。一つは、胸元の開き具合です。首筋から鎖骨あたりまで綺麗に見える程度のものを選びます。最初の挨拶で頭を下げた際に胸元がチラついて目のやり場に困るようでは第一印象が台無しですから、胸元まで空いているものは決して選ばないようにしてください。

もう一つは素材です。Tシャツのようなカットソー生地はとてもカジュアルで、ビジネスシーンにはふさわしくありませんから、ブラウスやシャツ素材の品位のあるものを選びましょう。

なお、男性用スーツは袖口からワイシャツを5㎜程度出して着用するのが好ましいスタイルですが、女性用スーツはシャツの袖を出してはいけません。腕をおろして、約5mmジャケットの中に入っている状態がよいとされています。

ストッキング

ストッキングはナチュラルなベージュを着用するのがビジネスシーンでのマナーです。会社によって冬場はタイツを着用してもよい職場もありますが、そのときは黒を基調とし、カラータイツや網タイツは避けましょう。

また逆に真夏の酷暑の中でも生足はNGです。必ずストッキングを着用します。最近のストッキングはだいぶ丈夫になってきましたが、万一伝線したときに慌ててコンビニに駆け込むということのないよう、替えを必ずバッグの中に1つしのばせておくのがよいでしょう。

靴はプレーンなパンプスが基本です。オープントゥ(つま先が空いている靴)やサンダル、ミュール、ブーツは避けなければなりません。ヒールは、3~5cm程度のものを選ぶと、見た目にもすっきりしていて歩きやすく、機能的な印象を与えます。

オープントゥのパンプスでもう一つ、マナーということでお話しすると、結婚式にお呼ばれした際には、「つま先が隠れるパンプス」を履きましょう。つま先の出ているオープントゥのパンプスはとってもおしゃれですが、「つま先」→「妻先」→「妻が先立つ」という意味になり、縁起が悪いとされていますから、結婚式には不向きです。

男女共通の注意ポイント

男女それぞれに気を配るべきアイテムを挙げてきましたが、これ以外に共通して配慮すべき以下のような項目があります。

・鞄はA4サイズのものが入れられて、床に置いたときにしっかりと立つもの
・靴は黒の革靴で、飾りがついたものは避ける
・腕時計は派手ではなく、秒針がついているもの(1分間で自己PRといった面接の練習に役立ちます)
・基本的にアクセサリーはつけない
・コートを着用していった場合には、会社の建物に入る前に「中表」にして脱ぐ(表面が内側になるようにしてたたむこと。これにより「あなたの会社に花粉や雨粒は落としません」という意思表示となります)

就活生を厳しい目で見る面接官や新社会人を迎える上司・先輩は、能力や人柄はもちろんですが、それ以上にその人が与える「第一印象」をとても重視しています。「身だしなみ」はとても重要なビジネスマナーであるという思いから、「江上いずみのビジネスマナー道」の初回から2回にわたって「身だしなみ」のお話をしました。

きちんとした身だしなみは、仕事に取り組む姿勢、清潔さや誠実さ、ひいては品格にもつながります。一緒に仕事をする相手に好印象を与える必須のビジネススキルといえます。

「自分がどう思うか」ではなく「他の人から見てどう見えるか」を意識した「ご自身のプレゼンテーション」だと思って、大いにご自身の魅力をアピールしていきましょう。

著者プロフィール: 江上いずみ(えがみ・いずみ)

筑波大学客員教授・札幌国際大学客員教授・Global Manner Springs代表。東京生まれ。筑波大学附属高等学校から慶應義塾大学法学部法律学科卒業。1984年日本航空入社。客室乗務員として30年間で約19,000時間を乗務。オリンピック・パラリンピック教育担当講師として全国の小中高校で「おもてなしの心」をテーマに講演。国内外での年間講演数は250回に及び、「おもてなし学」の構築に取り組む。主な著書は「幸せマナーとおもてなしの基本」(海竜社)、「"心づかい"の極意」(ディスカバートゥエンティワン)