悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、仕事を効率よくこなす方法を身に付けたいと悩んでいる人のためのビジネス書です。

■今回のお悩み
「仕事が次から次へと舞い込んできて終わりません。効率的なやり方を身に付けたいです」(34歳男性/公共サービス関連)

  • 仕事の効率を上げるためにできること


働き方改革の影響で、時間外労働が減ったという方も多いのではないかと思います。しかし厄介なのは、労働時間が減れば仕事も減るというわけではないということ。それどころか人員削減が進む状況下においては、当然のことながら個人の負担が増えていくことになるでしょう。

したがって、「労働時間が減らされた→人の数も減った→けれど仕事は一向に減らない」という悪循環となってしまうわけです。

そんな働き方改革、あるいは企業のあり方については、僕個人としても感じることはいろいろあります。しかし、それはともかく当面の問題として、日々の業務に追われるビジネスパーソンは「いま目の前にある仕事」をなんとかしなければなりません。

だとすれば、必要になってくるのは「効率化」です。かけられる時間が限られているのであれば、そのなかで最大限の成果を出さなければならないのですから。そこで今回は、少しでも仕事を効率化できるように、3冊の本をご紹介したいと思います。

3つの"間"で8割のムダな仕事を手放す

『1日の仕事を3時間で終わらせるダンドリ術』(山本憲明 著、フォレスト出版)の著者は、2005年に会社を辞めて独立し、税理士業を始めたのだそうです。税理士として脂が乗ってきたその後しばらくは、1日16時間以上仕事をしていたのだとか。

ところが現在、仕事をしている時間は実質的に1日3〜4時間。仕事をする時間が以前より8割も減ったということですが、お客様に迷惑をかけることもないのだといいます。それどころかムダな経費が減ったので、手取り金額はむしろ増えているそう。

でも、なぜそんなことができたのでしょうか? その秘密は、「ムダを省く」ことにあるようです。

ほとんどの人は「ムダな仕事」や「やらなくてもいい仕事」で時間を浪費しています。また、「これをやらなきゃ」という仕事も、よくよく考えてみると単なる"思い込み"だったりします。私の経験上、「これをやらなきゃ」と思っていた仕事の大半をやめてしまっても、何も問題ありませんでした。今の仕事をすべて見直して、核心的で「どうしても必要」という仕事だけをやり、残りの時間は自分自身や周囲の人たちの将来を良くするために使えばいいのです。(「はじめに」より)

  • 『1日の仕事を3時間で終わらせるダンドリ術』(山本憲明 著、フォレスト出版)

大事なことは、既成概念を捨てることだと著者は言います。そこで本書では、身のまわりのさまざまな「ムダ」を指摘し、それらを排除することを勧めているわけです。

たとえば著者は、「仕事は空間・時間・人間との間合いで決まる」と主張しています。この3つの"間"をうまく利用することで、8割のムダを手放すことができ、さらには自分で仕事をつくり出すことができるというのです。

まずは「空間」。机の上に書類が山積みになっていたりする人も少なくないでしょうが、それではいい仕事はできないということ。大々的に環境を変えることは難しいとしても、せめて自分の机(とその周囲)にはなるべく余計なモノを置かないようにし、すっきりとさせるべきだという考え方です。

「時間」のムダを徹底的に減らすことは本書の最大のテーマであると同時に、すべてのビジネスパーソンにとっての重要課題。そのため本書でも、あらゆるムダを省くためのメソッドが紹介されています。

そして最後が「人間」。いきなり電話をかけてきたり、どうでもいい内容のメールを送ってくるなど、仕事の邪魔をしてくる人はいるもの。そうした人たちから距離をとり、自分の仕事を有形無形にサポートしてくれる人たちを確保することこそが大切なのです。

いい仕事ができるか、短い時間で成果を上げることができるかは、空間・時間・人間との間合いで決まるということ。

8割のムダな仕事を手放し、成果が上がる仕事をつくり出すためにも、常にこの3つの"間"の取り方を心がけるべきだというわけです。

「目的」を確認しよう

『トヨタ社員だけが知っている超効率仕事術』(渡邉英理奈 著、フォレスト出版)の著者も、仕事における「やりなおし」「ムダ」の多さを指摘しています。効率的に仕事を進められないのは、本当に効率を上げる仕事の仕方を知らないだけだとも。

だとすれば、その手段を知り、身につけることができれば改善できるのかもしれません。でも、そのためには具体的にどうすればいいのでしょうか?

これまでの「なんとなく仕事に取り掛かる」スタイルをやめて、プロセスとスケジュールを明確にしてから仕事に取り掛かる。これで、すべて解決します。 「準備が面倒くさそう……」「その準備にかける時間がもったいない」そう思うかもしれませんが、慣れてしまえばこの準備で1時間、慣れていない場合でも2時間ほどで終わります。この2時間の投資でやり直しやムダがなくなれば、今までより数日単位で時間を短縮することができます。(「はじめに」より)

  • 『トヨタ社員だけが知っている超効率仕事術』(渡邉英理奈 著、フォレスト出版)

本書のタイトルにもなっている「超効率仕事術」の最初のステップは、「仕事の目的とアウトプットを考える」ことだそうです。

まず、仕事を始める前に大切なのは「目的」を確認すること。なぜなら「目的」を確認、認識していないと、間違ったアウトプットをしてしまう可能性があるから。言い換えれば、「目的」次第で「アウトプット」も変わるということです。そのことを説明するために、著者は企画書作成を例に挙げています。

例えば、企画書の目的が役員決済に使うものなら、会社や組織によってはいつも以上にしっかりつくり込む必要があるかもしれません。体裁やデザインにもこだわり、文章も念入りにチェックするでしょう。反対に、部署やグループ内で完結するようなものや参考程度に必要なものだったらどうでしょうか? 完成度は下げていいでしょうし、既存の資料を使えば代替できてしまい、そもそも作成する必要がなくなるかもしれません。このように、「目的」は「アウトプット」の質や内容に大きく影響します。(48〜49ページより)

このように、「目的」は「アウトプット」の質や内容に大きく影響するというわけです。それは、日常のさまざまな業務について言えることでもあるでしょう。

3分間「集中」する

『なぜ、あの人の仕事はいつも早く終わるのか? ―最高のパフォーマンスを発揮する「超・集中状態」』(井上裕之 著、きずな出版)の著者は、「歯科医師」であり「作家」でもあるという人物。

まったく異なる2つの仕事を両立させることは難しそうですが、どちらも高いレベルでこなせているのだといいます。その秘密が、本書のテーマになっている「集中力」。

仕事やプライベートにおける成功は「最高の結果に対して、最大の集中力を発揮できるか否か」で決まります。結果へと最大の集中でフォーカスした状態を、本書では「超・集中状態」と呼びます。(「Prologue」より)

  • 『なぜ、あの人の仕事はいつも早く終わるのか? ―最高のパフォーマンスを発揮する「超・集中状態」』(井上裕之 著、きずな出版)

ただ現実問題として、なかなか集中できない、あるいは集中力が続かないといったこともあるものです。しかしそんなときは、「3分間だけ集中してみよう」と考えてみればいいのだそうです。

3分間でなにができるのかと思われても当然かもいしれませんが、3分間で成し遂げられることは意外に多いもの。それを知ってほしいのだと著者は言うのです。

考えてみれば、30分も3時間も、3分の積み重ねです。3分をおろそかにする人は、たとえ与えられた時間が30分であっても、3時間であっても、いつも「時間が足りない」と嘆くことでしょう。また、「時間が足りないから、やらない」というように、やらない理由を探す行為は、自分の行動に制限をかけることにつながり、結果的に潜在意識にも悪い影響を与えてしまいます。(中略)短い時間だからこそ、有効に使う。成功を目指すなら、その心構えがとても大事なのです。(134〜135ページより)

些細なことかもしれませんが、たしかにそう考えれば集中力を少しずつ高めていけるのかもしれません。


僕にも経験がありますが、仕事が終わらない状況に追い込まれると、精神的に余裕がなくなってくるものです。そしてそうなると、少なからず自分を追い込んでしまいがちでもあります。でも多くの場合、それは自分の能力のせいではありません。むしろ、物理的な事情によるものであることのほうが多いはず。

だからこそ、冷静さを維持しながら、「いま、すべきこと」をひとつずつこなしていくことが大切なのではないでしょうか?

印南敦史

作家、書評家。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家として月間50本以上の書評を執筆。ベストセラー『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)を筆頭に、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)ほか著書多数。4月8日発売の最新刊は、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)。