悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、貯蓄が思うように増やせず悩んでいる人のためのビジネス書です。

■今回のお悩み
「支出と収入があわず、貯金が増えなく悩んでいます」(37歳女性/事務・企画・経営関連)

  • 「貯金ができる人」になりたいと思ったら


お金を貯めることって大変ですよね。僕も以前は、なかなかお金を貯めることができなくて悩んだものです。というのもある時期まで、ストレス発散の手段としてモノを買いまくっていたからです。

「欲しいから買う」のではなく、買うことが目的化していたということ。ですから、お金は減っていくばかり。しかも反比例するかのように、さして必要のないモノばかりが増えていくわけです。

そりゃー、貯まらなかったとしても当然ですよね。しかもモノが増えれば、生活空間はどんどん窮屈になってもいきます。ですからストレス発散していたはずなのに、どんどんストレスがたまっていったのでした。

と、あえて過去形で書いたのは、いまは正反対の状態にあるから。きっかけのようなものがあったわけではないのですが、以前ほど物欲がなくなり、お金を使う機会が自然と減っていったのです。

で、お金をあまり使わなくなったので、そこそこお金が貯まるようにもなりました。といってもたいした額ではありませんが、塵が積もって小山になると、山をより大きくしたくなるもの。

つまり、日常の“ちょっとした貯金”が楽しくなっていったのです。

ただ、それは人に教えられるものではなく、自分で感じ取るものでもあると思います。いってみれば「自分次第」なので、(僕が自分なりの手段を見つけたように)自分にとって無理のない貯蓄法を見つけ出すことが大切なのではないでしょうか?

そこで、なにかのヒントになりそうな、貯金に関する3冊の本をご紹介したいと思います。

節約の前にまず「片づけ」を

お金を貯めるためには節約が大切。けれど、意志の力だけで節約をするのは困難でもあります。しかし『金持ちになる人の財布、貧乏になる人の財布』(羽根田修 著、KADOKAWA)の著者によれば、節約をする前にすべきことがあるのだそうです。

節約の前に「片づけ」から始めると、節約のハードルが一気に下がり、お金が貯まりやすくなるというのです。事実、「片づければお金は貯まる」と信じ、実践してきたという著者は、「片づけ→節約→貯金」のサイクルをぐるぐるまわして、資産を着々と増やしているのだとか。

お金を貯める方法は、「収入を増やす」「資産運用する」「支出を抑える」の3つしかありません。その中で「支出を抑える=節約」は、リスクなしでカンタンに取り組めます。だから、多くの人が節約に取り組みますが、これが意外と難しい。ダイエットや禁煙と同じように、何度も挫折している人は多いでしょう。節約のために、いきなり買い控えをしたり、家計簿をつけたりするから失敗するのです。「片づけ」というワンクッションを置くことで、ハードルはグッと下がります。(「はじめに」より)

  • 『金持ちになる人の財布、貧乏になる人の財布』(羽根田修 著、KADOKAWA)

でも、なぜ片づけが節約に効果的なのでしょうか? その答えは、著者が副業として行っているアパート経営にあります。

たとえば家賃の入金日を守り、日常のあいさつや会話などから「真っ当だな」と思う家庭は、室内の清掃が行き届き、部屋は片づいていたのだそうです。

そういう家庭の人が退去する際に退去理由を聞くと、「家を買った」という答えが返ってくることが何度もあったというのです。

一方、家賃を滞納するような人の部屋は、モノがとても多く、散らかっている“汚部屋”であることが少なくないのだといいます。汚部屋に住んでいる人すべてがお金にだらしないというわけではないものの、そこにひとつの傾向があるのは事実だということ。

家にモノがあるということは、それだけモノにお金を支払っているわけです。自分の生活のベースである部屋とモノのコントロールができない人が、お金のコントロールができるわけがありません。(48ページより)

たしかにそう考えると、片づけには重要な意味があることがわかります。そして著者は、「片づけは、貯金の習慣を身につけるための訓練」だと主張しています。節約できない、お金が貯まらない人は、まず片づけから実践すべきだということ。そこが、スタートラインなのかもしれません。

貯めるコツ「潜在貯蓄」とは

ファイナンシャルプランナーである『給料そのままで「月5万円」節約作戦!』(ヨースケ・城山 著、ごま書房新社)の著者は、税込年収650万円のときに1年間で350万円貯めることができたのだそうです。そのうちの80万円は保険を解約したものだといいますが、そうにしても驚くべき結果です。

それには様々な工夫と方法、理由などがあります。面倒くさい節約なんかはしたくないけど、でもお金は貯めたいという、都合の良い事を、いろいろ勉強をして、考えて、実行してみたら、ラクして貯金をすることが出来ました。(「はじめに」より)

  • 『給料そのままで「月5万円」節約作戦!』(ヨースケ・城山 著、ごま書房新社)

具体的にいえば、ポイントは固定費を減らすこと。たったそれだけのことかと思われるかもしれませんが、「月5万円節約」どころか、工夫次第では10万円も可能だといいます。事実、著者は以前にくらべ、月に10万円は固定費を削減し続けているというのです。

たとえばインターネット・プロバイダ、携帯料金、保険など生活にかかるお金を見なおすだけで、かなりの額を削減することが可能。税金を見なおして5万円節約、住宅ローンも5万円節約できるなど、ちょっと頭をひねるだけで効率的な節約ができることを、本書は教えてくれるのです。

ちなみにキーワードは「潜在貯蓄」。

この「潜在貯蓄」という言葉は私の造語です。簡単に説明しますと、今までの無駄に払っていた出費を減らす(節約する)事によって生まれる貯蓄の事です。経験から多くの家庭では、年100万円から200万円位は眠っているものです。(161ページより)

もちろん「潜在貯蓄」を掘り起こすためには、多少の勉強は必要かもしれません。しかし確実に出費が減らせるのだとしたら、それは決して苦しいことではないはず。

それどころかコツさえつかめれば、どんどん貯蓄が楽しくなってくることでしょう。そこでぜひとも、本書を参考にして「潜在貯蓄」を掘り起こしたいところです。

目的と目標をもって楽しく行う

昨今、わが国の金融や経済をめぐる状況は混迷をきわめるばかりだ。なんてエラソーな単語をならべるまでもなく、私たちの生活はタイヘンなことになっているし、明るい未来など期待できそうにない。給料はいっこうに上がらない、金利はあいかわらず、頼みの綱の年金はしっちゃかめっちゃか。にもかかわらず政府は「景気は回復している」なんてほざいている。これはもう、「誰か」とか「何か」を頼っていてはダメっぽいぞ。(「はじめに」より)

『一生お金に困らない「貯金生活」ができる本』(池田武史+貯金生活研究会 著、王様文庫)の冒頭にはこう書かれていますが、見逃すべきでないのは、これが2002年に書かれた文章であること。

  • 『一生お金に困らない「貯金生活」ができる本』(池田武史+貯金生活研究会 著、王様文庫)

つまり、それから17年を経たいま、事態はより深刻になっているわけです。ただし本書を改めて読んでみると、時代が変わろうとも、有効な貯金方法それ自体は変わっていないことがわかります。

それどころか、いつの間にか忘れかけていたことを再認識できるかもしれません。そのいい例が、「まずは目的と目標を持つことから貯金ライフは始まる」という考え方。

まずは貯金をする目的を見つけることにしよう。これはきわめてカンタンなことだ。欲しいと思うものを羅列するだけでいいのだから。洋服、クルマ、デジカメ、マンション、乗馬マシン……。あったらいいなと思うものを、とにかく片っ端から書き出してみよう。(中略)どうしても欲しいものが見つからない人は、こうしよう。いま自分の目の前に100万円があると考えてごらん。キミのものだ。自由に使っていいよ。さあ、何を買おうか。欲しいものがないから貯金をする? それでいいんだって。欲しいものがない人は、とりあえず100万円をめざして貯金を始めるのだ。貯めてどうするのかなんて考える必要はない。いつのまにか「貯める喜び」を覚えればしめたものだ。(41ページより)

「欲しいもの」の例としてデジカメや乗馬マシンが出てくるところがいかにも時代ですが、それでも、著者がいわんとすることは理解できるはず。少なくともこうして考えれば、間違いなく貯金は楽しいものになることでしょう。


今回、これら3冊を読み返してみて感じたのは、節約や貯金を楽しむことの重要性です。義務のように感じてしまうから苦しく感じてしまうのであって、楽しんでしまえばいいということ。

そうすれば、いつの間にか節約や貯金の習慣が身につくはずです。

著者プロフィール : 印南敦史(いんなみ・あつし)

作家、書評家、フリーランスライター、編集者。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家としても月間50本以上の書評を執筆中。『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)ほか著書多数。