皆様こんにちは、マネックス証券の益嶋です。「目指せ黒帯! 益嶋裕の日本株道場」第19回をお届けいたします。本コラムでは、「これから投資を始めたい」「投資を始めてみたけれどなかなかうまくいかない」といった方向けに、投資家としてレベルアップするためのいろいろな知識をお伝えしていきます。今月もまずは最近のマーケット動向を簡単にご紹介します。
くすぶる景気停滞懸念で株価は上昇せず
前回のコラムが掲載された2月26日時点で日経平均は2万1,449円でした。その後、日経平均は一時2万1,800円台まで上昇しましたがなかなか上値は重く、3月25日に650円安と大きく下落してしまいました。
下落の要因としては、米国で近いうちに景気後退が起きるのではとの懸念が高まったことや、ドイツの経済指標が大きく悪化したことで米中の貿易摩擦が他地域にまで波及したのではとの懸念が高まったことが挙げられます。
コラムを書いている3月26日時点では、日経平均は2万1,428円で結果的に1カ月前とほとんど変わっていません。米中の貿易交渉が妥結するなどの進展が見られない限り、なかなか日本株が上値を追うのは難しいのかもしれません。
就職先選びと投資先選びの共通点とは?
さて、今月も本題に入っていきましょう。先日、就職活動中の大学生の方に「アナリストの視点で就職先選びを考える」というテーマでお話をさせていただく機会がありました。今まさに大学生の皆さんは、就職活動中の方が多いと思います。そこで今回は、「投資先選びで活用する視点が就職先選びにもある程度応用できるのでは」と私なりに考えたことを紹介させていただきます。
まず、学生の皆さんにお伝えしたのが、これからの長い人生を考えた時に「自分のマーケットバリューを高める」といった視点で企業を選ぶということです(もちろん筆者もまだまだ若輩者であり、もっと自身を成長させなければいけないので、本来こんなことを言える立場ではないのですが、前途ある若者のお役に立てればと恥を忍んでお話しました)。
筆者は、労働市場におけるマーケットバリューとは「自分にしかできないこと×世の中のニーズの大きさ」ではないかと思います。今後は人手不足や機械化の動きが手伝って、他の人でもできる仕事はどんどんコモディティ化していき、仕事が奪われていくでしょう。しかし「自分にしかできない仕事」は他の人にはやろうと思ってもできない仕事ですから、代替されるリスクが低くなります。
また、「世の中のニーズの大きさ」という視点も大切です。例えば「字がとてもキレイ」というのはとても素晴らしい特技ですが、パソコンやスマートフォンが普及した今の時代においては、労働市場での価値はあまり期待できないと言えるでしょう。
このマーケットバリューを高めるためにはどうすれば良いのかを考えてみると、仕事で「チャレンジ」する機会を増やすということが必要になるのではないかと筆者は思います。どんなに本をたくさん読み、頭の中では理解しているつもりでも、実際の仕事に活かせなければそれは机上の空論です。
やはり実際の仕事で悪戦苦闘しながらチャレンジしたことのみが自身の経験として積み上がっていくのだと思います。そして、チャレンジする機会を増やすには、当然ながらチャレンジする機会を多く与えてくれる企業に就職することが大切です。
チャレンジする機会を多く与えてくれる企業はどのように選べば良いのでしょうか。企業風土や会社の規模、業種などさまざまな要因があり、当然一概に言うことはできませんが、大きなファクターとして「成長している市場でビジネスを行っている」「業績を伸ばしている企業である」ということが非常に大切ではないかと思います。
やっとアナリスト的な視点が出てきました(笑)。成長している市場でビジネスを行っている企業であれば、衰退市場で事業を行っている企業よりも事業が伸びていく可能性が高いと言えます。また、必ずしも成長市場でなくとも技術革新などにより業績を伸ばす企業もあります。事業がうまくいき売上が伸びていけば会社の仕事はどんどん増えていきます。そういう場合、若い方に仕事が回ってくる機会も増えるので、「チャレンジ」する機会が増えることになります。
では、企業の業績のどういった部分を見るのが良いのでしょうか。やはり投資先選びと同様で、とても大切なのは「売上高」と「営業利益」がしっかりと伸びているか、ということでしょう。さらに、営業利益が売上高に占める割合を示す「営業利益率」も大切です。営業利益率が高いということは、付加価値の高い製品やサービスを世の中に提供できている場合が多く、競合他社に対する競争優位性を持っているケースが非常に多いからです。
これらはその企業における本業の伸びや競争力の高さを示すわかりやすい指標だと言えますし、アナリストが銘柄を分析する際にも非常に重要視されます。学生の皆さんには、もちろん業績が良いからといって必ずしもその企業が働きやすいということではなく、その企業の経営者の方針を調べたり、現場で働いている方と会って話を聞いたりすることがとても大切だとお伝えしました。ぜひ多くの前途有望な皆さんには、ご自身の力を発揮できる素晴らしい企業で働いていただければと思います!
今月も最後までお読みいただきありがとうございました。それではまた次回!
執筆者プロフィール : 益嶋 裕
マネックス証券 マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー
早稲田大学政治経済学部政治学科卒。2008年4月にマネックス証券に入社。2013年からアナリスト業務に従事。2017年8月より現職。現在は「日本株銘柄フォーカス」レポートや日々の国内市況の執筆、各種ウェブコンテンツの作成に携わりながら、オンラインセミナーにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員。
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